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第122話 元聖女のプロポーズ

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 お弁当を食べて、少しのんびりしていた後。

 珀瑛ハクエイ様から……龍羽リュウハ様と念話で話された内容を教えてくださった。


「けっ……こんしき?」

「おん! 俺とミラのや!!」

「……私達の?」


 大精霊として覚醒した今では。

 以前の、学のない人間だった時とは違う。

 たくさんたくさん……様々な知識を得た。

 だから、その『結婚式』と言うのもよくわかる。

 つまり、私と珀瑛様が。


「ミラには、俺の嫁さんになって欲しいんや!」


 珀瑛様に手を取られ、軽く口付けられた。

 その何気ない仕草に、ときめかないわけがない。


「お……およめ?」

「せやで? ミラ以外考えられん」


 そして、握ったままの手を引き……ご自分の懐に私を受け入れてくださった。心臓の辺りに来ると、珀瑛様の鼓動が早いのがわかった。飄々としていて、珀瑛様も緊張されているのだろう。

 そのことに、小さく笑ってしまう。

 私の緊張が少し、ほぐれてきた。


「……はい」


 だから、私も正直に応えた。


「ミラ!」

「……私も、ハク様以外……考えられません」

「おん! 一緒に幸せになろうや!!」

「……はい」


 出来れば、天に召された両親にも知らせたいが……それは叶わない。

 だから……今目の前にいる方に応えたかった。

 私の愛しい方。

 私の唯一の御人。

 私には……貴方様しかいません。

 渡せるものは、私しかありません。

 だから……どうかどうか。

 末永く、私を貴方のお側に。

 その想いを込めて。

 私は珀瑛様に口付けたのだった。


「み、ミラ!?」


 唇を離した後に……いつもなら余裕のある珀瑛様の照れた御顔が、とてもおかしくて。

 私はつい、笑いを堪え切れずに……くすくすと笑ってしまった。
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