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メイドのまかない②
第1話 待ち合わせ
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私はその日、いつものメイド服とは違う格好をしていた。
(…………似合うかな?)
何故、違う格好をしているのか。
何故、離宮の前で誰かを待っているのか。
それは、もちろんひとつしか理由はない。
最近、私には恋人が出来た。
近衛騎士団第一部隊隊長でいらっしゃる、レクサス=バーミィ殿。私よりも十近く年上の方。
彼から告白され、少なからず想いを抱いていた私は……告げられた後に気を失ってしまったが無事に彼と交際を始めることになった。
しかし、私は王女殿下のメイド。レクサス殿は近衛騎士団の一員。
普段すれ違うことが少なく、私が王宮に行くことがほとんどない。逆ももちろん。
とは言え、お付き合いするようになってからは……私が城内で世話している猫の世話の時間を見計らって彼がやって来る。
猫は野良ではないが、飼い主である宮仕えの人間が自由気ままに育てているので、城のあちこちにいるしあちこちから可愛がられている。私もそのひとりで、時間が空いたらミルクを上げているだけだけど。レクサス殿はそんな時にやってきては、私と一緒に猫をあやしては話をしてくださる。
そして、数日前に。同じように過ごしていたら彼に告げられたのだ。
『デート……せぇへん?』
さりげなく、けど少し力強い言葉に……私は抱っこしていた猫を思わず強く抱きしめてしまった。
それぐらい意外で、けど嬉しくて……表情に出ているかわからなかったが、行きたいと返事をすればレクサス殿からは思いっきり頭を撫でられた。
恋人になる時に、嬢ちゃん呼びは無くなっても……私と彼の歳の差はそこそこ大きい。だから、自然と子供扱いが抜けないのも仕方がないかもしれない。王女殿下とラインシード様程ではないが。
なので、日取りを決めてから先輩のメイドに聞くと『じゃあ、おめかししなくちゃ!!』……と、今日は朝から他の先輩方も一緒になって、もみくちゃにされる勢いで着飾られたのである。
そして今、いつも猫をあやす場所でレクサス殿を待っていた。日当たりはいいが、人通りが少ないテラスのせいで猫以外私しかいない。
いつ来るだろうか……とそわそわしていると、レクサス殿の声が聞こえてきた。
「おはようさん。待たせて悪いなあ?」
相変わらず、少しだらけた雰囲気。
しかし、服装はいつもの少し着崩した騎士服ではない。ぴっちりと着込んで……何故か防御も身につけていた。街に出かけるのではないだろうか??
今日の行き先はレクサス殿に任せろと言われたので、私はその場所を知らない。
「おはようございます。……そこまで待っていません」
「さよか? 今日はちぃっと遠出するからな?」
「街……ではなく?」
「街やと色々面倒なんや。ほら、自分元冒険者やろ?? 知り合いとか多過ぎて質問攻めに合うのが嫌なんや。そこに可愛いサフィア晒すのが……いらん虫とか引き寄せそうでな?」
「まあ?」
たしかに、言われてみればその通りかもしれないが。
私に気遣ってくれる優しさが……嬉しい。
私が思わず、ぷっと笑ってしまうとレクサス殿も笑ってくださった。
「ほな、行こか? 弁当はイツキはんに頼んで色々作ってもらったんや」
「まあ」
それはすごく楽しみだ。
ひとまず、私達は馬を待たせている場所に行くために……並ぶだけでなく彼の空いている腕に抱きついて歩く事になった。
(…………似合うかな?)
何故、違う格好をしているのか。
何故、離宮の前で誰かを待っているのか。
それは、もちろんひとつしか理由はない。
最近、私には恋人が出来た。
近衛騎士団第一部隊隊長でいらっしゃる、レクサス=バーミィ殿。私よりも十近く年上の方。
彼から告白され、少なからず想いを抱いていた私は……告げられた後に気を失ってしまったが無事に彼と交際を始めることになった。
しかし、私は王女殿下のメイド。レクサス殿は近衛騎士団の一員。
普段すれ違うことが少なく、私が王宮に行くことがほとんどない。逆ももちろん。
とは言え、お付き合いするようになってからは……私が城内で世話している猫の世話の時間を見計らって彼がやって来る。
猫は野良ではないが、飼い主である宮仕えの人間が自由気ままに育てているので、城のあちこちにいるしあちこちから可愛がられている。私もそのひとりで、時間が空いたらミルクを上げているだけだけど。レクサス殿はそんな時にやってきては、私と一緒に猫をあやしては話をしてくださる。
そして、数日前に。同じように過ごしていたら彼に告げられたのだ。
『デート……せぇへん?』
さりげなく、けど少し力強い言葉に……私は抱っこしていた猫を思わず強く抱きしめてしまった。
それぐらい意外で、けど嬉しくて……表情に出ているかわからなかったが、行きたいと返事をすればレクサス殿からは思いっきり頭を撫でられた。
恋人になる時に、嬢ちゃん呼びは無くなっても……私と彼の歳の差はそこそこ大きい。だから、自然と子供扱いが抜けないのも仕方がないかもしれない。王女殿下とラインシード様程ではないが。
なので、日取りを決めてから先輩のメイドに聞くと『じゃあ、おめかししなくちゃ!!』……と、今日は朝から他の先輩方も一緒になって、もみくちゃにされる勢いで着飾られたのである。
そして今、いつも猫をあやす場所でレクサス殿を待っていた。日当たりはいいが、人通りが少ないテラスのせいで猫以外私しかいない。
いつ来るだろうか……とそわそわしていると、レクサス殿の声が聞こえてきた。
「おはようさん。待たせて悪いなあ?」
相変わらず、少しだらけた雰囲気。
しかし、服装はいつもの少し着崩した騎士服ではない。ぴっちりと着込んで……何故か防御も身につけていた。街に出かけるのではないだろうか??
今日の行き先はレクサス殿に任せろと言われたので、私はその場所を知らない。
「おはようございます。……そこまで待っていません」
「さよか? 今日はちぃっと遠出するからな?」
「街……ではなく?」
「街やと色々面倒なんや。ほら、自分元冒険者やろ?? 知り合いとか多過ぎて質問攻めに合うのが嫌なんや。そこに可愛いサフィア晒すのが……いらん虫とか引き寄せそうでな?」
「まあ?」
たしかに、言われてみればその通りかもしれないが。
私に気遣ってくれる優しさが……嬉しい。
私が思わず、ぷっと笑ってしまうとレクサス殿も笑ってくださった。
「ほな、行こか? 弁当はイツキはんに頼んで色々作ってもらったんや」
「まあ」
それはすごく楽しみだ。
ひとまず、私達は馬を待たせている場所に行くために……並ぶだけでなく彼の空いている腕に抱きついて歩く事になった。
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