上 下
188 / 738
王女のまかない⑦

第4話『ほっこり米麹の甘酒』

しおりを挟む
 くぴ、くぴっと火傷しないように飲んでいくのが、とっても快感。

 ネルやアーネストも、ゆっくりだけどちゃんと飲んでくれたわ。


「これは……」

「酒と言う括りではあるようですが、酒精の味はしないですね? とても飲みやすいですし、甘さに砂糖でも??」

「酒粕で作ったわけではないので、一切入っていないんですよ。ネルヴィスさん」

「ほう??」


 いくらイツキでも、『リュシアーノ今の私』が飲めないものは用意しないもの。

 けど、本音を言うと……カクテルでもいいから、お酒飲みたい。ノンアルだとジュースだし……炭酸水はあるから、出来なくはないだろうけど。


(……まだまだ我慢ね??)


 聞き分けが良い王女を演じていかなくちゃだから、そこは頑張らなくちゃだわ。


「しかし……室内とは言え、お花がたくさんありますし。これは簡易的なお花見ですね??」

「そうね? この世界だとピクニックはあっても、お花見ってないし」


 日本のお花見イコール飲み食いって感じだから、ほとんどピクニックと変わりないでしょうけど。


「わざわざ花を見に??」

「殿下であれば、離宮の花がありますよね??」

「んもぉ、そうかもだけど……たまには、別の場所もいいでしょ? ふたりとも」

「野山のお花を見つつ、お弁当を広げるのも楽しいですしね??」

「桜があれば言うことなし!!」

「「サクラ??」」


 あ。アーネストが加わっても、ネルの前でも桜の話題をしたことがなかったわ……。


「ここにある桃の花みたいな、ピンクや白……地域によっては赤に近いのもあるらしいし。緑もあるそうよ? って、全部私とイツキのいた日本がほとんどの花の樹だけど」

「似た花だとアーモンドの樹だって聞きましたね??」

「……へー?」


 イツキは本当に色々知っているのね??

 ただのOLだったとは思えないわ。アレルギーの知識だけだと、今の私でも簡単なことならわかるわ。

 お母様の……産後の女性が食べちゃいけない食材についても、ざっくりとした知識しか知らないもの。


「春になったら……皆さんでお花見に行けたら、最高ですね?」


 イツキが、しみじみとそんなことを言い出した。

 これは……とネルやアーネストに目配せした後に頷く。


「行きましょう、イツキ! お花見に!!」

「……え?」

「料理はお任せしてしまいますが、僕やアーネストとかで……そのサクラの樹に似た花は探しておきます」

「だから、もう少し特徴を教えてほしい」

「まだ一ヶ月先だけど、雪ももうないし……ちょっとだけならお母様達も一緒に行けると思うわ!!」


 ね? とウィンクしてみれば……イツキのほっぺが赤くなり、強く頷いてくれたわ。

 絶対、絶対! イージアスでの最初のお花見は成功しなくちゃだわ!!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

なんで元婚約者が私に執着してくるの?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:10,935pt お気に入り:1,876

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:13,917pt お気に入り:7,589

偽りの恋人達

恋愛 / 完結 24h.ポイント:830pt お気に入り:39

思い付き短編集

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:369pt お気に入り:121

街角のパン屋さん

SF / 完結 24h.ポイント:2,534pt お気に入り:2

ある国の王の後悔

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,754pt お気に入り:102

今度こそ穏やかに暮らしたいのに!どうして執着してくるのですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:29,963pt お気に入り:3,441

悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:13,475pt お気に入り:5,993

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。