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部下弐のまかない

第3話『サクッとホロホロ、スノーボールクッキー』①

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 俺達が首を傾げていると、イツキさんは笑顔で丸めていたものを見せてくれた。

 ぱっと見は……いびつな豆にしか見えないけど?


「……これがクッキー??」

「仕上がり次第で、サクッとほろっと口の中でも溶ける美味しいクッキーになりますよ?」

「へー!」

「……これ焼いただけで??」

「やってみます??」

「もち!」

「僕もやってみていいですか!?」

「はい」


 大きさは指の先程。

 天板の上に、蝋を塗った特殊な紙を敷き……だいたい等間隔で丸めたクッキー生地を載せていく。

 仕上がりは、薬の粒にも似た焼き具合になるんだって?

 窯でしっかり焼いた後は……ちょっと冷却の生活魔法を俺がかけてから、スノーシュガーとも呼ばれている粒がほとんど粉状の砂糖の中に入れて……砂糖をまぶしていく。


「可愛い……!」


 出来上がりを見て、ミュラーがそう言うくらい……出来上がったクッキーは可愛く見えたんだ。底はあるけど、全体的に丸っこくて……たっぷりのスノーシュガーをまとった出来栄え。

 たとえて言うなら、そう……これは。


「これはスノーボールクッキーと言います」

「「スノーボールクッキー??」」

「雪の粒に似せたクッキーなんですよ」


 俺も思ったことを、イツキさんが口にしてくれた。

 大粒ではあるけれど、たしかに雪のように儚くて壊れやすそうなクッキー。

 手で持ち上げると、本当に繊細な手触りだった。


「食べていい?」

「もちろん、どうぞ」

「「わーい!!」」


 ミュラーと一緒に食べれば……サクッと言う食感だったのに、すぐにほろっと溶けて……なのに、しっかりした甘さが口いっぱいに広がった!!

 最後に香ばしさも感じ取れて……小さいクッキーなのに、たくさんの食感と味が楽しい!! 一個口にすると……次、次と俺やミュラーは口に放り込んでしまう。

 小腹が空いていたから、余計に。

 ただ、残りがあまり少ない時に俺達は手を止めた。


「ご、ごめん!!」

「た、たくさん食べてしまって……!!」


 絶対イツキさんに怒られる……!? と思ったけど、いつまで経っても声を荒げることなく、イツキさんはニコニコしているだけだった。


「大丈夫です。試食用ですし、これからまたたくさん作るので」


 と言って、冷蔵庫からイツキさんは肉の塊とも言えるクッキーの生地を取り出したのだった。


「そ、それ全部!?」

「今日のまかないの仕込みは終わってますし……結構これ作るの楽しいんですよね?」

「て、手伝うよ!!」

「え? いいですよ? エリオさん、今日は魔鹿のステーキ担当だったんじゃ?」

「……あー……」


 たしかにその通りだったが。

 とりあえず、ミュラーも訓練に戻るからと……イツキさんに礼を改めて言ってから帰って行った。
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