上 下
291 / 739
国王のまかない⑦

第3話 離乳食を作ろう②

しおりを挟む
 まずは、リーゾを洗う……と言うところから始めることになった。

 そのまま煮るのではなく、リーゾの汚れをある程度落とすためらしい……。単純に煮ればいいと思っていた俺だったが、そこまで必要なのだなと理解した。


「水を入れ替えたら……リーゾに対して十倍の水。だいたいこれくらいの水をお鍋にリーゾと一緒に入れまして」


 あとは火にかけて、時々様子を見たりする程度。


「これだけでいいのか?」

「はい。ですが、この後の変化を見ても……あまり慌てないようにしてください」

「……すごいのか?」

「はい、少し」


 そうして火にかけて少し待つと……たしかに、変化があった!?

 白い泡が出てきて……白く濁ってきた。沸いたら吹きこぼれると思ったが、その心配もなく。

 ただ、ずっと火にかけているとリーゾが鍋底にくっつくからと……イツキに木ベラで少しこそげ取るように丁寧に混ぜていく。

 そこからは、火をさらに弱めて……蓋をずらして被せ、しばし待つようだ。


「……あとは煮えるのを待つだけか? 塩は?」

「煮立ったら、ほんのひとつまみ程度入れるだけです。赤ちゃん用なので、ほとんど味付けはしません」

「ふむ」


 時間になると……たしかに、リーゾが膨らんで湯の中を泳いでいるようだった。ここに……ほんの少しの塩を加え、軽くかき混ぜたら……湯とリーゾを分けるためにザルとボウルを用意した。


「冷めると粘り気が出るので、温かいうちに。火傷だけ気をつけてください」

「わかった」


 ゆっくりと鍋を傾けて、ザルの中に入れれば……湯は火にかけた時以上に白く濁り、とろみがあるように見えた。

 ザルを避けてから、イツキと味見をしたが……以前の花見以来口にしていなかった、『アマザケ』の味がしない感じと似ていた。


「これで完成です。ジェラルド様のところに持っていきましょう」

「……食べてくれるだろうか」

「…………まだ離乳が始まったばかりですし、ちょっと嫌がるかもしれませんが」


 やらないよりは挑戦してみる方が良い。

 イツキと厨房の片付けをしてから……オモユを手に、ヘルミーナ達の部屋へ行くことにした。


「あら、陛下に……イツキ?」


 ヘルミーナは俺達を出迎えてくれたが、中ではジェラルドが赤児用の簡易テーブルをつけた椅子に座らされていた。


「こんにちは、ヘルミーナ様」

「いらっしゃい。どうして陛下と一緒に??」

「ジェラルド様へのご飯作りを指導させていただきました」

「ジェラルドのご飯??」

「……離乳のために、オモユと言う料理を教わったんだ」

「まあ!」

「あぶぅうううう!!」


 本当に食べてくれるかはわからないが……ジェラルドは俺達の会話に興味を持ったのか、腕をこちらに伸ばしていたのだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

メゾン漆黒〜この町の鐘が鳴る時、誰かが死ぬ。

ホラー / 連載中 24h.ポイント:285pt お気に入り:3

兄のマネージャー(9歳年上)と恋愛する話

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:5

罰ゲームで告白した子を本気で好きになってしまった。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:404pt お気に入り:104

不完全防水

BL / 完結 24h.ポイント:504pt お気に入り:1

【R18】女囚体験

ホラー / 連載中 24h.ポイント:1,150pt お気に入り:218

9歳の彼を9年後に私の夫にするために私がするべきこと

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,054pt お気に入り:104

錬金術師の性奴隷 ──不老不死なのでハーレムを作って暇つぶしします──

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:333pt お気に入り:1,372

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。