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王妃のまかない⑨
第3話 はじめての料理
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離宮の、簡易的に設置してある厨房。
メイドらが主に扱うことの多い場所だと認識していたけれど……娘のリュシアーノがよく使うようになったためか、いくらじゃ様変わりしているようだ。
数える程しか訪れていないが、ワルシュ先輩が普段いらっしゃる厨房のような……あそこまでは本格的ではないけれど。
「ふふ。ちょっとずつ改装されているんですよ」
私が疑問に思っていると、イツキが厨房から戻ってきた。私が初めて料理をするのもだが、ピザの残りの材料を取りに行っていたのだとか。
「それは……リュシアーノが?」
「はい。あとたまに陛下も」
「ふふ。あのオモユだったかしら? ジェラルドも喜んだ時の顔が忘れられないわ」
「今はパン粥でしたね?」
「ええ。もうそれはたっぷりと食べるわ」
すくすくと育っていくのは、とても嬉しい。
将来の王太子、国王となるのは当分先のことでも。元気に育って欲しいことに変わりはない。だから……その片方でもあるリュシアーノにも、何か作ってあげたい。いつも、あの子が私や陛下のために作ってくれるのだから。
「ジェラルド様には……まだピザは難しいですが。とりあえず、お料理初心者のヘルミーナ様にも作りやすい状態を整えてきました」
黒い金属の板の上に……紙。丸い……先程私が食べたものより、大きなピザの土台?
何も載せていなくて、少し焦げ目をつけたようなパンにも見えた。
「これに……何を?」
「ソースや具を載せていただきます。いきなり生地作りは、ヘルミーナ様には難しいですし。時間もかかるんです。それは土台の生地を軽く素焼きしてきました」
「そう。わかったわ」
たしかに……いきなり、全部作って失敗もあり得る。それでも、出来ることをイツキは探してくれたのだろう。であれば、私もそれを受け入れることにした。
「いくつか、ソースも用意してきましたが。ひとつの生地に、ふたつまでは塗ることは可能です」
イツキが用意してくれたソースは。
トマトのソース。
白いのはおそらくマヨネーズ。
緑色……が、イツキには説明を受けたけど……たしか、ハーブをすり潰したソース。
あとは茶色と白を混ぜたような。
その最後のソースを舐めさせてもらうと……少しだけ酸っぱく、しかし甘さも感じるソースだった。しかし、砂糖の甘さではない。
具材は、生のハーブ以外にも切った野菜から火を通した肉まで色々と。
この組み合わせを変えるだけで……幾通りものピザが出来るとイツキが言っていたが。
正直……先程のピザしか知らない私には、何が何だかさっぱりだ。
「……イツキ。リュシア達が喜ぶような組み合わせは……どんなのかしら?」
「そうですね? 二種類を作るのでしたら、片方は先程のマルゲリータを主体にして少しお野菜を加えたもの。もう片方は、テリヤキチキン風にしましょうか?」
「……テリヤキ?」
「先程、軽く舐めていただいたソースがそれです。別にテリヤキソースもあるので、お肉を浸したり仕上げにかけちゃいましょうか?」
「指導、頼むわ」
「はい」
素手で、材料をつかむ感触が最初は慣れなかったが。
いつも、私を喜ばせてくれる娘や夫のため……と、私は意欲的に取り掛かることにした。
メイドらが主に扱うことの多い場所だと認識していたけれど……娘のリュシアーノがよく使うようになったためか、いくらじゃ様変わりしているようだ。
数える程しか訪れていないが、ワルシュ先輩が普段いらっしゃる厨房のような……あそこまでは本格的ではないけれど。
「ふふ。ちょっとずつ改装されているんですよ」
私が疑問に思っていると、イツキが厨房から戻ってきた。私が初めて料理をするのもだが、ピザの残りの材料を取りに行っていたのだとか。
「それは……リュシアーノが?」
「はい。あとたまに陛下も」
「ふふ。あのオモユだったかしら? ジェラルドも喜んだ時の顔が忘れられないわ」
「今はパン粥でしたね?」
「ええ。もうそれはたっぷりと食べるわ」
すくすくと育っていくのは、とても嬉しい。
将来の王太子、国王となるのは当分先のことでも。元気に育って欲しいことに変わりはない。だから……その片方でもあるリュシアーノにも、何か作ってあげたい。いつも、あの子が私や陛下のために作ってくれるのだから。
「ジェラルド様には……まだピザは難しいですが。とりあえず、お料理初心者のヘルミーナ様にも作りやすい状態を整えてきました」
黒い金属の板の上に……紙。丸い……先程私が食べたものより、大きなピザの土台?
何も載せていなくて、少し焦げ目をつけたようなパンにも見えた。
「これに……何を?」
「ソースや具を載せていただきます。いきなり生地作りは、ヘルミーナ様には難しいですし。時間もかかるんです。それは土台の生地を軽く素焼きしてきました」
「そう。わかったわ」
たしかに……いきなり、全部作って失敗もあり得る。それでも、出来ることをイツキは探してくれたのだろう。であれば、私もそれを受け入れることにした。
「いくつか、ソースも用意してきましたが。ひとつの生地に、ふたつまでは塗ることは可能です」
イツキが用意してくれたソースは。
トマトのソース。
白いのはおそらくマヨネーズ。
緑色……が、イツキには説明を受けたけど……たしか、ハーブをすり潰したソース。
あとは茶色と白を混ぜたような。
その最後のソースを舐めさせてもらうと……少しだけ酸っぱく、しかし甘さも感じるソースだった。しかし、砂糖の甘さではない。
具材は、生のハーブ以外にも切った野菜から火を通した肉まで色々と。
この組み合わせを変えるだけで……幾通りものピザが出来るとイツキが言っていたが。
正直……先程のピザしか知らない私には、何が何だかさっぱりだ。
「……イツキ。リュシア達が喜ぶような組み合わせは……どんなのかしら?」
「そうですね? 二種類を作るのでしたら、片方は先程のマルゲリータを主体にして少しお野菜を加えたもの。もう片方は、テリヤキチキン風にしましょうか?」
「……テリヤキ?」
「先程、軽く舐めていただいたソースがそれです。別にテリヤキソースもあるので、お肉を浸したり仕上げにかけちゃいましょうか?」
「指導、頼むわ」
「はい」
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