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騎士のまかない㉒

第1話 イツキ効果

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 華茶はなちゃとケーキで軽く腹を満たしたが……イツキもだが、俺も余計に小腹が空いてしまった。

 なら、食べ歩きでもするか? と提案するとイツキは『はい!』と顔を輝かせたのだった。


(……あの、サバズシを提案した店もだが。イツキがギルドに納めたレシピで、どれだけ栄えたか)


 以前、ギルマスからもう少し詳細なレシピを提出してほしいこともあり、イツキはさらに細かなコツなどを記入したものを提出したそうだ。それから半年くらい経っているが……視察などにもあまり来ていないのでよく知らない。


「……アーネストさん。あっち、すごく賑やかそうですね?」


 イツキが指を向けた場所では、何か催し物をしているのか……たしかに賑やかそうであった。


「さあ! ホットドッグ早食い選手権!! 二十個のホットドックを食べた選手には、優勝賞品として……かの有名な特級料理人、イツキ=エイペック様が生産ギルドに納めて下さったレシピをひとつ無料で提供します!!」

「「「「「おおおおおおお!!」」」」」


 どうやら……イツキのレシピで町おこしのようなものが増えたのか、皆思い思いに騒いでいた。イツキはと言えば、ぽかんと口を開けていたが。


「……私のレシピで??」

「そのようだな? だが、見たところ生産ギルドの職員が多い。ギルド主催かもしれないな?」

「……そうですね」


 しかし、『ホットドッグ』と言うのはなんだ?

 イツキの料理を多く食す俺でも、まだ食べたことがない。街にとっては馴染みやすいものなら……イツキが異世界の知識を使って、それをギルドに提出したのだろうが。


「イツキ、ホットドッグと言うのは?」

「パンの一種です。長めのソーセージを、同じくらい長いパンを割って挟んだところに入れて食べます。具材はアレンジが色々出来ますよ? ソーセージ以外にもほぼ何でもありです」

「……そうか」


 となると、俺でも食べたくなってしまう。それが顔に出ていたのか、イツキから『また作りますね?』と言ってくれた。本当に……気立ての良い女性だ。

 とりあえず、その会場からは離れることになったが……市場などへ行くと、賑やかさが以前の倍以上になっているのに驚きを隠せなかった。


「らっしゃい!! 握り飯ならうちが一番!!」

「大食いんとこでやってるホットドッグはうちもあるよ!!」

「出来立てクレープはいかが?」

「唐揚げも揚げたてだ!!」


 などと、イツキのレシピが……これでもかと広まっていたのだった。


「…………凄いですね」

「……ああ」


 まさか、ここまで広まっているとは予想が過ぎたが。

 イツキの評判は、イージアスでならワルシュ料理長の養女と言うこと以外でも広がっている。

 となれば……と、行き先を変え、俺達は生産ギルドへ行くことにした。
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