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騎士のまかない㉔
第3話 超絶ヘタレ
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結局は、だが。
予約していた宿屋に向かうことになった。
出逢い……などの高級宿ではなく、俺のような貴族が利用する少し高めの宿だ。
ふたりで泊まると言うこともあり、同室であるのは当然だが。
そこそこに大きな二人用のベッドを見ると、イツキはこちらがおかしくなるくらい……体を固まらせていた。
「……イツキ。今日はここで一泊するんだが」
「は、は、は……い……」
やはり、意識してくれている。
男女……しかも、お互い愛し合っているのなら、ただ共寝をするだけで済まないと言うことを。
殿下や妃殿下からの助言もあるだろうが、イツキはそれを知った上でなお……俺と今日を過ごしてくれるのを選んでくれたのだ。
イツキの手を掴むと、俺はゆっくり……手の甲に口づけを贈った。
「……イツキ。まずは、風呂に入ってくるといい」
「へ?」
「色々歩き疲れているだろう? リラックスするなら、風呂が一番だ」
「ア、アーネストさんも」
「ん? 共に入るのか?」
「い、い、いえ!!」
少し冗談半分、本気の願望を告げたが……イツキは首を強く横に振ってから、備え付けの寝巻きとタオルを持って奥の浴室に行ってしまった。
その間に、俺は亜空間収納に入れておいた、彼女の荷物の鞄などをベッドの脇に置くことにした。
(……ここまで来ると、浮かれてしまうな)
出会って、約二年。浮かれてしまうのも無理はない。禁欲したわけではないが、交際を始めて……婚約もしているのに、一年もキス……口づけをする以外何も手を出していないのだ。
隊長のように、あり得ないほどの年の差どころか……同い年であるのに、イツキとそういう関係になるのをどこかで避けていた。異世界からの渡航者と言うこともあり、神聖な存在でもある。だから……俺なんかが触れていいものか、無意識に手を伸ばさなかったのだろう。
しかし、既にキスをしている時点で、それは矛盾を帯びている。
「……今夜、ここで」
踏み込まなかった一線を越えるだろうか?
イツキが無理なら、共寝をするだけでもいい。
しかし……ここまで来たからには、計画していた情事をしてみたいものもある。
悶々と悩んでいると、奥から扉の開く音がした。
もう風呂から上がったのか、と振り返れば。
「お湯、お先に……いただきました」
まばゆいくらいに、扇状的な格好のイツキが……湯上がり用のローブを身につけて、髪を拭いていた。髪を下ろすところを見るのは、これが初めてかもしれない。
「あ、ああ……温まれたか?」
「は、はい。お花のお風呂で……ゆっくり温まれました」
花風呂。
イツキが喜ぶかもしれないと、予約の時に追加で頼んだのをすっかり忘れていた。喜んでもらえて何よりだ。
とりあえず、俺も……と、半ば逃げるように風呂に向かって衣服をすべて脱いで浴室に入ると。
イツキが先に入ったと言うこともあり、花以外の甘い香りがして……鼻血を噴きそうになった。
予約していた宿屋に向かうことになった。
出逢い……などの高級宿ではなく、俺のような貴族が利用する少し高めの宿だ。
ふたりで泊まると言うこともあり、同室であるのは当然だが。
そこそこに大きな二人用のベッドを見ると、イツキはこちらがおかしくなるくらい……体を固まらせていた。
「……イツキ。今日はここで一泊するんだが」
「は、は、は……い……」
やはり、意識してくれている。
男女……しかも、お互い愛し合っているのなら、ただ共寝をするだけで済まないと言うことを。
殿下や妃殿下からの助言もあるだろうが、イツキはそれを知った上でなお……俺と今日を過ごしてくれるのを選んでくれたのだ。
イツキの手を掴むと、俺はゆっくり……手の甲に口づけを贈った。
「……イツキ。まずは、風呂に入ってくるといい」
「へ?」
「色々歩き疲れているだろう? リラックスするなら、風呂が一番だ」
「ア、アーネストさんも」
「ん? 共に入るのか?」
「い、い、いえ!!」
少し冗談半分、本気の願望を告げたが……イツキは首を強く横に振ってから、備え付けの寝巻きとタオルを持って奥の浴室に行ってしまった。
その間に、俺は亜空間収納に入れておいた、彼女の荷物の鞄などをベッドの脇に置くことにした。
(……ここまで来ると、浮かれてしまうな)
出会って、約二年。浮かれてしまうのも無理はない。禁欲したわけではないが、交際を始めて……婚約もしているのに、一年もキス……口づけをする以外何も手を出していないのだ。
隊長のように、あり得ないほどの年の差どころか……同い年であるのに、イツキとそういう関係になるのをどこかで避けていた。異世界からの渡航者と言うこともあり、神聖な存在でもある。だから……俺なんかが触れていいものか、無意識に手を伸ばさなかったのだろう。
しかし、既にキスをしている時点で、それは矛盾を帯びている。
「……今夜、ここで」
踏み込まなかった一線を越えるだろうか?
イツキが無理なら、共寝をするだけでもいい。
しかし……ここまで来たからには、計画していた情事をしてみたいものもある。
悶々と悩んでいると、奥から扉の開く音がした。
もう風呂から上がったのか、と振り返れば。
「お湯、お先に……いただきました」
まばゆいくらいに、扇状的な格好のイツキが……湯上がり用のローブを身につけて、髪を拭いていた。髪を下ろすところを見るのは、これが初めてかもしれない。
「あ、ああ……温まれたか?」
「は、はい。お花のお風呂で……ゆっくり温まれました」
花風呂。
イツキが喜ぶかもしれないと、予約の時に追加で頼んだのをすっかり忘れていた。喜んでもらえて何よりだ。
とりあえず、俺も……と、半ば逃げるように風呂に向かって衣服をすべて脱いで浴室に入ると。
イツキが先に入ったと言うこともあり、花以外の甘い香りがして……鼻血を噴きそうになった。
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