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番外編

第42話『スミレのアイシングクッキー』①

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「ありがとうございます」


 イツキ様と殿下は、わたくし達を離宮の厨房に案内してくださいました。離宮にもこのような場所があるのですね。屋敷の厨房より断然広いことはもちろんですが……どのようなお菓子をここで作ることができるのでしょう。

 わくわくしますわ!!

 イツキ様は、殿下の第一メイドのサフィア殿に礼を告げますと、わたくしとエイミーの方に振り返ってくださいましたわ。


「では、はじめましょうか」

「「は、はい」」

「イツキ。何のお菓子を作るの?」

「砂糖漬けにしなくても作れるお花のクッキーですよ、リュシアーノ様」

「「「え?」」」


 花をそのまま焼いてしまったら、形が残らないのでは?

 ですが、イツキ様はわたくし達の反応を見てもにこにこ笑っていらっしゃるだけです。


「大丈夫ですよ。そのまま焼くのではなく、クッキー生地に埋めこんだり。アイシングというものに乗せて焼くと、色合いや形がほぼそのまま残ります。失敗しない花はスミレですね」

「「スミレ??」」


 エイミーも不思議に思ったのでしょう。

 刺繍の授業などで、題材にしやすいイメージでしかないあの花が……食べられるのでしょうか? いいえ、イツキ様のご提案ですもの。きっと食べられますわ。


「砂糖漬けにしてもいいですが、あれは魔法を使わないと時間がかかりますし。クッキーでしたら、お二人も作られたことがあるかなと」

「「はい」」


 ただ、『アイシング』と言うのは何なのでしょう? はじめて聞く言葉ですわ。それもこれから教えていただけるのでしたら、わたくし頑張りますわよ!!

 ただクッキー生地は、基本のプレーンでよろしいらしく。わたくしとエイミーはそれぞれ自分なりに作り上げてから、イツキ様が冷蔵庫に入れてくださいましたの。


「では、次にアイシングですが」


 アイシングの作り方ですが……粉のお砂糖に、卵の白身を混ぜ込むだけのようですけれど。これが物凄く固く、殿下もご一緒に作りましたが……白くドロドロしたものになりましたの!

 こちらを……焼くと美味しくなるのでしょうか? 不思議ですわ!! 混ざったあとに、一旦休憩を取るのに飲み物をいただいたのですが、お茶ではなく果実の飲み物でしたの。

 甘酸っぱくて、その……お行儀が悪かったのですが、美味し過ぎてつい、ごくごくと飲んでしまいましたわ!


「いい飲みっぷりですね?」


 はしたない飲み方をしてしまいましたのに、イツキ様は相変わらず笑顔ですの。行儀見習いの先生ではありませんから……怒らないのでしょうか? エイミーも同じように思ったのか、口をぽかんと開けていましたわ。
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