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第九章 想う相手に向けて
277.新しい日課
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ゴシゴシ、ゴシゴシ
ゴシゴシ、ゴシゴシ
今日も今日とて、僕はセヴィルさんに渡す予定の誕生日プレゼントを製作中だ。
フィーさんに、基本となる『磨き』の工程を教わってから……長い時間をかけて、次の工程に向けて研磨用の布で結晶を丁寧に磨いているのだ。
魔術とか魔法に精通している人達なら、チョチョイのちょいで出来ちゃうみたいだけど……異世界出身だし、まだまだ魔法は習い立ての僕にはそんなことは出来ない。
だから、ほとんど手作業で頑張っていますとも。
(うまくいったら、エディオスさんやアナさん達にも作ろうと思ったけど……)
提案者のフィーさんから、『ダメ』と言われたんだよね??
『結晶を上げるのはいいけど、加工してプレゼントにするのはセヴィルだけでいいよ』
最初はどうして? と思ったけど……考えたら、無神経だったかと自分でも思った。
僕は、セヴィルさんに告白していただいたのに保留している状態だ。そして、僕自身も最近はセヴィルさんのことを少なからず思っているかも……と自覚し出した。
そんな僕が、好意的にとは言え、セヴィルさん以外の人達に手作りアクセサリーを贈るのも……完全にダメじゃないけど、特別感がなくなってしまう。
最初はセヴィルさんに、とバレンタインプレゼントも兼ねて贈ろうとしたんだから、その気持ちを大事にしよう。
それと、今日から新しい習慣が増えるんだ。
「改めて。カイツ=シューカインです」
以前収穫祭騒動の犯人であり、イシャールさんに徹底的にティラミス製作でこき使われたカイツさんが……僕の魔法の先生になってくださいました。
「改めて、よろしくお願いします」
「ふゅ!」
僕が挨拶をすると、クラウも真似っこしてペコリとお辞儀をしたのでした。
「よろしく。……ところで、この強い気はなんなんだい?!」
やっぱり、神力と言うのは僕はわからなくても魔法や魔術に特化した人にはわかっちゃうみたいです。とりあえず、これからセリカさんのように家庭教師になっていただくので……ごく一部だけお話することにした。
「あの、カイツさん。クラウは……普通の聖獣じゃなくて、神獣なんです」
「え」
「で、神力補給のために……フィーさん経由でちょっと特殊なご飯も食べてて」
「フィルザス神様が??」
「なので、ものは今ないんですけど……カイツさんみたいにわかっちゃう人にはわかるらしいので気にしないでください」
「…………わかった。そう思っておくよ」
理解が早い人で非常に助かります。
とりあえず、まずは出来る魔法をと言われたので……『斬切』や火の起こし方。ライト的な魔法も、あとは水を作り出すところを披露しました。
「こんな感じです!」
一通り披露すると、カイツさんは難しいお顔になられました。
「……生活魔術はまだ一部。なのに、斬切を教わった?? カティアちゃん、斬切ってたしか」
「えと。食材を細かくするのに、フィーさんが便利だからって」
「……………………なるほど。料理に特化したものだと言っていたしね?」
「はい。ほとんど無詠唱ですけど」
「…………とりあえず。得意な属性ははっきりしておこう」
と言って、ローブの中に手を入れて出してきたのは。黒い水晶のような結晶体だった。
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