6 / 616
第一章 異界渡り
06.LETS ピッツァ!-③
しおりを挟む「エディ……まーた人の家に勝手に上がりこんでっ」
「わーるいって。けど、腹減ってたし美味そうな匂いしてたからつい、な?」
「ついじゃなくてだねぇ……」
怒りをあらわに、フィーさん腰に手を当てております。せっかくのピッツァ食べられちゃったのか大分怒っていますね?
僕もちょっぴりショックだ。一番に食べてもらいたかったからちょっと一緒に怒りましょう。ぷぅっと頬を膨らませていると、エディさんと言う青年は手についてたソースをペロリと舐めていた。
…………なんか、エロいです。恥ずかしいから言わないでおこう。
「っかし、うめぇな? フィーが作ったように見えねぇし、そこのちみっこがか?」
「ちみっこって……」
まあ、今は小学校低学年サイズの体。ちみっちゃいっちゃそうだけど、なーんかムカつきます。
「僕が“ちみっこ”で悪かったですね」
「あれ、その声の感じ……お前、女か?」
「ほぇ?」
一発で分かった模様です。
幼少期じゃ体つきが男女わかりにくいので、声でわかってもらえたようだ。それと“僕”って言い続けてたからやっぱり女ってわかってもらえなかったかもね? フィーさんも目ぱちぱちしちゃってるし。
「女の子って……そー言えば記憶見たのに忘れてたね?」
「フィー、女にこんなうめぇもん作らせたのか?」
「とりあえず、居候になるからね。出来る事はしてもらわないと」
「ふーん」
と、すかさず二枚目を取ろうとしたエディさんにフィーさんがぱちんと手を払い除ける。音が綺麗に響きました。
「って」
「だーからって、呼んだのはこっちだけど、君がそれ食べまくろうとするのはいただけないね? この子が僕の為に作ってくれたんだから」
「だってうめぇしよ」
どーやらいたく気に入ってもらえた様子だ。
それはいいことだけど、たしかにこのマルゲリータはフィーさんのだ。もとい、味見用だしね。
とりあえず、二人の喧騒に巻き込まれないようにその皿を避けておこう。なんか言い合いが始まっちゃったから。
「この腕だったら、うちに連れてってもなんら遜色ねぇ」
「あのねー? 見つけたのは僕なんだし、ここに居ていいかって聞いてきたのあの子なんだからだーめ」
「なんだよ、ケチだなぁ?」
「気に入ったものは手放したくないタイプなのさ」
「お、とうとう嫁決めたのか?」
「それとは違うよ。妹みたいなものだね」
あれ、後半意気投合してないですか?
と言うか妹枠ですか僕は。
「って、せっかくの焼き立て食べ損なっちゃうから」
と言って僕のところにやってきて、マルゲリータを1ピース持ち上げた。そのまま口元に持っていきはむっと頰張る。
「──っ、美味しいっ‼」
「良かったです」
美少年のきらっきら笑顔いただきました。恐縮ですっ。
その横からエディさんが腕伸ばしてきたけど、見えてたのかまたペシって叩かれてた。食いっぱじ強いねぇ、このお兄さん。
「フィーのケチぃ……」
「この後も食べれるからいいでしょーが。とにかく、これは僕の。美味しいね、ピッツァって」
「へぇ、変わった名前だなぁ。ところで、お前なんっつーの?」
「うっ」
どうしよう……挨拶はした方がいいのはわかってるんだけど、いかんせん自分の名前が現状わからないままだ。それと異世界人と言って信じてもらえるだろうか?
「エディ。自分が先でしょ? この子の料理に先に手出したわけだし」
フィーさんが割り込んでくれました。
ちょっと感謝ですっ。
「まー、それもそうか?……俺はエディオス=マルスト=セイグラム。エディでも好きに呼びな?」
「じゃあ、エディオスさんで……」
気軽に愛称は呼べませんよ。フィーさんは別です、呼びにくいのもあったもので。
さて、もう言い逃れは出来ないので唾を飲み込んでから口を開けた。
「あの、初めまして。名前が、その……フィーさん曰く、封じられててわかんない状態です」
「封印、だと?」
ふざけた表情が一変して、険しい表情に。
ちょっ、怖っ!
それと今気づいたけど、彼の緑色の短い髪が乱雑に逆立ってます。思わずフィーさんの後ろに回ってマントの裾掴んじゃったよ!
「おやおや、大丈夫?」
フィーさんは呑気にマルゲリータを頬張っていました。
そんなに美味しかったのかな?
じゃなくって、目の前っ! 目の前に気づいて⁉
「フィー、お前が解けねぇ封印って厄介じゃねぇのか?」
まだ若干髪が逆立ってるエディオスさん。
呑気にピッツァ食べてるフィーさんに近寄り、ずずいっと顔を覗き込んできた。フィーさんはと言うと、最後の一切れを頬張ってから皿を卓に置いた。
「うん。蒼の兄様んとこの世界から来たってのは辿れたけど、そーいったのはてんでわかんなくてね?」
「は? こいつ異邦人?」
「そ。まあ、今はこちらの住人にもなってもいるけど」
「神のお前の領域にどーやって……」
経緯を話そうにも、僕もフィーさんもわかってないからどーしたもんだか。
「それも封印されてて全然わかんないんだ。だから僕のとこに居候させようと思ってね?」
「記憶読んでもか?」
「うん、全然」
これだけはフィーさんもふざけた態度は取ってない。僕の見える範囲からでも表情は真剣でした。
エディオスさんはそれ以上聞くことはせずに小さく息を吐いた。
「……まさかお前の用事ってこれか?」
「ううん、違うよ」
「んじゃなんだよ?」
「それは後で言うから。とりあえず、お昼にしようよ。さっき食べたピッツァをこの子がまたいっぱい作ってくれるから」
「マジかっ!」
フィーさんの提案に空気が一変して、エディオスさんも表情がパッと明るくなっていった。よっぽど気に入ってくれたみたいです。
よし、それでは気合入れて作りますよ!
◆◇◆
「なんだぁ、この緑ぃのは?」
ジェノベーゼの瓶を出した途端、エディオスさん顰めっ面になりました。
まあ、普通ないもんね。こんな色のソースって。彼の髪色よりも、ちょっと濃い目です。
「ヘルネを使ったソースですよ」
「ヘルネって、野草だろ? 食えんのか?」
「失礼だね、僕が育ててるのに」
ご自分で適当に育ててるって言ってたけど、やっぱり愛着あるんだね。でなきゃあんなに綺麗な庭園出来ないもの。
とにかく、生地をもう一個伸ばして台に置く。
フィーさん同様に、エディオスさんも拍手してくれました。
「ちみっこいのにやるなぁ?」
「元はこの年齢じゃないと思うけどね。ねぇ、いくつ?」
「あ、ちょうど20歳です」
「「はたち?」」
あ、そっか。呼び方違うのかもしれない。
「えっと……にじゅっさいです。一応向こうじゃ成人していますが」
「たった20年で成人⁉」
んなアホなとエディオスさんはまた顰めっ面。
あれ、こっちは違うのかな?
フィーさんは何故かぴゅぃっと口笛を吹いていた。
「兄様、時間操作早めにしたんだね。こっちじゃ、成人って200年以上経たないと出来ないようにしてるんだけど」
「にひゃっ」
なにその馬鹿長寿な年齢は⁉
ってことは、エディオスさん見た感じ元の僕より少し歳上に見えるけど……超歳上なの?
思わずじっと見つめれば、彼はぽりっと頬をかいた。
「あー……フィーの言う通り、俺は345だ。そっちじゃどんくれぇだろうな?」
「あんま変わんないんじゃない? 多分、3つか4つくらい君のが上だろうけど」
と言うことは24歳くらい……わかっ、もうちょっと上かと思ったけど。図体でかいし、ガタイいいもの。顔も欧米風で整ってるイケメンさんだからね。
おっと、生地がベンチタイム入っちゃってるから、急がないと。
「ソースを塗ってっと」
瓶の蓋を開けて、スプーンで適量すくって生地の上に伸ばす。具材は本当は魚貝類があったほうがいいけど、カッツもといチーズがあるからいいでしょ。
パプリカもとい、こちらトウチリンのスライスと新タマでなく新アリミンのスライス乗せて、小さいマトゥラーのカットとカッツも降っておく。
ちょっと具材多めだからピールに乗せる時慎重にしないとね?
「ほぉ。野菜ばっかだな?」
「僕ん家でなかなか肉食べれないのわかってるくせに」
「まーな。けど、あれは肉も合うと思うぜ?」
「乗せたりしますよー?」
ベーコンやブルスト、ソーセージやハムなんかの燻製ですね。
たまーに家で照り焼きチキン乗せてマヨもかけたりするけど。
あ。
「フィーさん、卵ってありますか?」
「卵? それも具に使えるの?」
「今回のじゃ合いにくいですが、あるんですよ」
それはまた次回だね。
カッツを乗せ終わったら、いざピール登場。
二人には離れてもらって、ピッツァを窯に投入。
「パンみてぇだなぁ?」
「エディ。君、僕が食べようとしてた時に入って来たの?」
「おぅ。美味そうな匂いしてきたからよ」
「胸張って言う事じゃないでしょーが」
そう言えば、フィーさん神様って言うからもっと歳上だろうな? 失礼だから聞かないでおこうっと。
そうこうしているうちにピッツァ焼き上がりました。
ピールをえいっと。
「熱いんで、少し離れててください」
「ん」
「おぅ」
くるっと中で回転させてからヘラの部分に乗せ、勢いよく取り出す。
うん、いい焼き色です。台に置いて包丁で分等し、さっき使ったお皿に移します。
「ジェノベーゼピッツァですっ!」
「お、焼くとちぃっとばっか色が薄くなんな?」
「へぇ。香草の良い香りがするね?」
まだかまだかと言う感じですが、忘れてますがここ厨房。食べるなら、さっきの広いリビングに行きましょうよ。
僕がそう提案すると、フィーさんがそうだねと言ってくれて行くことになった。
あ、生地には新しく濡れ布巾被せたんで大丈夫。
多分、エディオスさんもいるから全部食べることになるだろうしね。
普通は、使わない生地は冷蔵庫に保存しておくものだけど。
そして、取り分けのお皿を僕が。フィーさんがピッツァの皿を死守。でないとすぐにエディオスさんに平らげられそうだから。
「フィー……」
「お客と言えども、マナーを守らない子にはあげないよ」
「へーへー」
あれですね、フィーお母さんとエディ坊や。
絶対言わないけど、そんな構図が出来てるよこれって!
76
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-
いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、
見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。
そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。
泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。
やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。
臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。
ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。
彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。
けれど正人は誓う。
――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。
――ここは、家族の居場所だ。
癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、
命を守り、日々を紡ぎ、
“人と魔物が共に生きる未来”を探していく。
◇
🐉 癒やしと涙と、もふもふと。
――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。
――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる