【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第一章 異界渡り

029.ピッツァへLETS GO!-④

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 そろっと手拭いを外すとまだ3分の2くらいの膨らみ具合だった。
 フライパンの方に戻ってこちらも蒸し具合を確認。
 だいたい、2、3分ってとこだろうか。

「作り方違うねー?」
「人それぞれですし、この方が旨味を逃さず中まで火が通るんですよ」

 下町の食堂で運良くカウンター席から見えた時、これだ!と僕は脳内にメモって帰ってから夕飯で実践。以来、照り焼きチキンを作る時はこの方法で作るようになったんだ。照りを出すのは毎回緊張するけど、火の通り具合は僕はこの方が好き。柔らかくてホロってほぐれるんだよね。
 ここで蓋を開けてフライ返し用のターナーでひっくり返して少し焼き目を付ける。その間にまな板を横に持ってきて調味液もスタンバイ。焼き目を確認したらもう一度ひっくり返してここで調味液を投入。さっきの要領で火を強めて沸騰させる。
 これでとろみがつくまで軽く煮立たせる。

「あー、これこれ。あの子のも久々に食べたいなぁって思ってたんだよね」
「お隣の国って、しょ……サイソースみたいな調味料が豊富なんですか?」
「うん。文化圏が色々違うんだよね。服装も食べ物もこっちとは間逆って言っていいかも。文字や言葉は通じるけどさ」

 多分だけど、言語に関してはフィーさんが面倒だから統一させたんだと思うの。あるとしても、方言みたいにイントネーションや語彙が違うくらいとか。
 この神様、面白いとこはとことん追求するだろうけど面倒なことはぱぱっと解決したがりな傾向がみえる。
 特に食への欲求が半端ないもの。

「……よし。とろみが出てきたからひっくり返して全体に絡めてっと」

 これで完成。
 すぐ切ろうかと思ったけど、やっぱり冷めてからのがいいかなと考え直してフィーさんにお皿を出してもらい、そこに移した。
 とここでソースをお忘れなく。銀製のポットをお借りして入れておきます。今日はマヨネーズソース使うから上からかけるだけだけど、生地に塗る方もおススメ。

「お、なんだぁ?」
「すっごいいい匂いがするよね?」
「うん」
「香ばしいけど、これなんの匂いだろうなぁ?」

 奥にいるコックさん達にも匂いが届いていったみたい。
 僕は洗い物をしながら小さく笑った。
 それから生地も出来て仕分けも終わり、ここからが本番。
 先にまかない用を焼くことに決まりました。

「じゃあ、今から生地を伸ばしますね」
「ですがカティアさん。麺棒はいらないのですか?」
「ふふ、見ててください」

 マリウスさんやライガーさんは首を傾げるが、まあそれは仕方ないよね。パンやパイの生地を伸ばすのには普通麺棒みたいな道具が必要になる。
 だが、僕は違う。
 手で伸ばす方法もあると目の前でご覧にいれましょう!

「まずはこうしてならしていきます」

 丸めた生地を潰して少し分厚く広げる。それを右手に持ち周囲の視線が集まる中、ぽんっと宙に浮かせた。

「「え」」

 驚く声が聞こえたけど、今は集中しなくてはならない。落ちるタイミングを見計らって、両手を上に向かって中央に滑り込ませる。
 そうしてくるくる回しながら薄く均等に伸ばしていく。いい具合の薄さになったら調理台の上に戻す。

「これで生地は完成ですよ………え?」

 振り返ったら、マリウスさん達は当然だけどいつの間にかコックさん達全員が僕をガン見していた。

「何回見ててもすごいねぇー」

 フィーさんは相変わらず呑気です。
 いや、褒められるのは嬉しいんだけども。

「はっ……いやはや、これはたまげましたなっ!」

 はっと我に返られたマリウスさんが声を上げた。
 すると他の面々も同様に我に返り、何故か拍手してくだすった。

「いやぁ、すごい!」
「パン生地をあんな風に伸ばすなんて考えつかないよ⁉︎」
「俺も出来るかなぁ、あれ」
「あんなちんまい身体でよく出来るよなぁ……」

 最後のはともかくどうやら物珍しさに見に来て驚いてくださったようです。

「こらお前達、見学はいいが作業を止めるのはいかんな?」
「「あ」」
「「す、すみませんっ!」」
「作業戻るぞ!」

 マリウスさんの指摘に、ぱたぱた慌てて皆様作業に戻られていった。

「すみません。いつもはああではないですが」
「いいえ、大丈夫ですよ」

 まあ、気になるのは仕方ない。僕もこの伸ばし方初めて見た時は釘付けだったもの。あれはたしかこの身体と同じくらいの小学生だったかな?

「じゃあ、すみませんが続きをお願いします」
「はい。あ、フィーさん。昨日のピールって出せます?」
「うん、いいよー」
「ピール……?   って、わぁっ⁉︎」

 フィーさんが魔法で出現させると、ちょうど横にいたライガーさんにぶつかりそうになった。

「ほう。大きなヘラですね。これに生地を乗せて石窯に?」
「はい。じゃあ、まずはマルゲリータからいきますね」

 マトゥラーソースをスプーンで塗り、フレッシュヘルネ(バジルリーフ)と削ったカッツを乗せてピールでさっと乗せます。
 ただ問題なのは、石窯に高さがあるので窯の口の下に箱を置いてもらいました。その箱の上に乗り、これもさっと引いて炎の手前でピッツァを置く。
 この火力だと3分くらいかかるかな?
 考えながらも目を離さず、ぐつぐつと焼けてきたらピールを使ってくるんと回しながら端に軽く焦げ目をつけさせる。そして、チーズにも焦げ目がついてきたところで引き出す。
 が、ここで忘れてたことが。

「フィーさん、お皿すみませんっ!」
「はいはーい。すぐ出してあげるよー」

 このままどこ置くんだ状態になるのに気付き、フィーさんに頼むと昨日と同じくらいの大きさのお皿を出してもらえた。
 その間ライガーさんに包丁を持ってきてもらい、ピールを調理台の上に置くとピッツァを8等分にカット。そしてお皿に移します。

「出来ましたー‼︎」
「ほう……」
「カッツをこんな風に焼くなんて、初めて見たなぁ?」
「熱いですけど、出来立てが美味しいのでどうぞ」
「それなら、いただかせていただきますね」
「いただきまーす」

 お二人は火傷に注意しながら1ピースずつ持ち上げ、チーズの伸び具合に目を丸くされた。

「こんなにも……」
「オムレツに入れる以上ですね」

 そしておそるおそる口に運ぶ。
 一口目はちょびっと。でも、すぐに二口三口目とパクパク口に入っていき、端まですっかり平らげられると、マリウスさんの方は何故かぷるぷる震え出した。

「す……素晴らしいですよ!  パンとカッツでこんな食べ方があるとは‼︎」
「ありがとうございます」

 ライガーさんはと言うと、まだ余韻に浸ってるのか黙ったまんまだった。

「これだけでも大変美味しいのに他にも種類があるとは……一体どれくらいあるのですか?」
「そーですね。組み合わせ次第で200は軽く越えるかと?」
「「そ、そんなにも⁉︎」」

 あ、ライガーさん復活。
 いや本当ですよ?    個人で開発するのはもちろんだけど、宅配ピザのチェーン店なんかトッピングの後乗せ追加とかあるからその組み合わせ入れるとかなりあるしね。
 って、フィーさんが黙ってるなぁと思って見ると、1ピース食べてたよ。後でいくらでも食べるのに今食べてどうするんですか。

「フィーさん、それだけですよ!   後でたっくさん食べるんですから」
「だってー、美味しい匂いを目の前に我慢できないじゃない?」
「はぁ……」
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