【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第四章 式典祭に乗じて

118.式典祭1日目ーキウイムースも導入ー(途中別視点有り)

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 怖過ぎて、僕もだけどクラウやイシャールさんまで体をぷるぷると震わせてしまう。
 シャルロッタさんは一向にその形相を引っ込める気はなくて、床に座り込んでる僕らを見下ろしながら仁王立ちしていた。

「ここで何をしていたんですか……?」

 女性でも低い声が出るって言うけど、ちょー怖いです!
 一瞬セヴィルさんを思い出しかけるくらいの悪寒が走ったよ。思わずクラウとお互いぎゅっと抱き合って安心を求めちゃうくらい。

「おや、何か作ってたみたいだね?」

 そんなシャルロッタさんの後ろから、ラディンさんはのほほんとした感じで僕らを覗き込んでいた。

「それは一目瞭然でしょう?   で、どちらが言い出したんですか?」
「……お、俺です」
「な、内容を提案したのは僕です」
「ふゅぅ」

 大人しく素直に言うしかありません。
 泣き出す直前に自己申告すれば、シャルロッタさんはやっと形相をしまい込んで大袈裟なくらいのため息を吐いた。
 が、

「休憩時間中に何してんですか二人共⁉︎」
「ぴっ⁉︎」
「うっ」

 まあ、こう怒られちゃうよね!
 なもんで、僕は反射で正座しちゃいました。日本人はこうなっちゃいます……。

「まあまあ、大方カティアちゃんがこの部屋を気になってたとこにイシャールが開けてあげたんでしょう?   そうなると作りたくなるのが僕達料理人のさがじゃないかな?」
「……否定出来ないのがしょうがないわよね。とは言え、休憩しないのはダメよカティアちゃん。八つ時にも押しかけて来そうなんだから、頑張ってもらう予定でいたのに」
「すみません……」
「けどまあ、暇潰しも用意してなかったから好奇心に勝てなかったんでしょう?   出来上がってるのも、結構綺麗だし……何を作ったの?」
「ラディンは驚くと思うぜ?   アルグタを大量に使ったムースにシトロムのゼリーだ」
「イシャール料理長がドヤ顔してどーすんですか!」
「いって⁉︎」

 イシャールさんが得意げな顔をするとすかさずシャルロッタさんからの拳骨がひとつ。実にいい音でした、マル。

「え?   アルグタでムース?  見た目ほとんど白っぽいけど」
「アルグタをピューレにしたのを生クリームと牛乳に混ぜ込んだからです」
「へぇ?」
「あら、これって以前一度だけマリウス料理長から教えていただいたのじゃないかしら?」
「……考案者はカティアだそうだ」
「「え?」」

 正確には、元いた世界でも料理好きの人がサイトに投稿してたデザートだけどね?
 それを言ったって信じてもらえないだろうし、言う事は出来ないから黙っておきます。

「あの大量に消費出来たアルグタのデザートを?」
「どう言うことだい?」

 詳細説明はシャルロッタさんからお伝えしてくれました。すべて聞き終えると、ラディンさんはまたキラキラ笑顔を僕に向けてきた。

「君の知識は本当に興味深いよっ。一体どこの出身なんだい?」
「あ、あははは……」

 異世界なんて言えません!
 他のお二人に詰め寄られても断固として口を割らない態勢にしました。

「そ、そそそそれより、このデザートを休憩室に運びましょう!」
「……まあ、あんま時間もねぇしな。お前らも食おうぜ?」
「そうですね」

 話題を逸らして全員で休憩室にムース達を運びました。その卓には、シャルロッタさんがメモで簡易的に『一人一個まで』と書いて置いてくれました。

「はい、あーん」
「ふゅふゅぅ!」

 まずはクラウに食べさせてあげました。これ前に作った時はこの子がいなかったからね。初めてだけど、好き嫌いのないクラウは美味しそうにどんどん食べていく。

「うん。シトロムのゼリーは予想通りだけど、ムースはアルグタと言うよりかは生クリームの味が強いね。けど、さっぱりしてて美味しい!」
「言われなければ、アルグタってわからないわよね……」
「やっぱうまいな、これも」

 僕も食べれば、酸味が程よくあるグレープフルーツゼリーに滑らか且つほんのりとキウイ風味の生クリームのムースが舌鼓を打っちゃう。
 あっという間にこれも全員完食。

「……なぁ」
「ええ、料理長」

 スプーンを置いた途端、イシャールさんとシャルロッタさんは目を合わせました。

「これも表に出すか?」

 ああ、ほとんど予想してたことがやっぱり当たりましたよ。僕としては嬉しいけどね!









 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(シェイリティーヌ視点)









「またなんか新作が出たらしいぞ!」

 配置場所にも聞こえてきた大声に、うちは小さく肩を震わせながら聞き耳を立てた。

「今度は二層仕立てのだけど、上は赤いシトロムのゼリーで下はクリームのムースなのにまろやかで美味いそうだ!」
「何か混ぜ込んであるの?」
「一個運良く食えたが、なんか食べたことある気がしたんだが思い出せねぇ。あとなんかぷちぷちしたのが入ってたんだよな?」
「「「「ぷちぷち?」」」」

 ほうほう、実に興味深いな?
 おそらく、騒いでるのは一般民やろうな。何度も出入り自由やからってよく何度も行く強者がおること。
 うちは警護任務の交代がまだやから食堂に行けれん!

「ティラミスに匹敵するくらいまたなだれ込んでるらしいぜ!」
「そんなに美味しいならもう一回行く!」
「宝物展よりそっちだな!」

 騒いでた連中は一致団結してそそくさと行ってしまった。
 周囲でそれを聞いていた者達も、同じように決めたのかどんどんいなくなっていく。

「あー……暇になるな?」

 あたしと同じ警護任務についている同僚のライアがあっけに取られていた。
 式典最中のあたし達近衛の一部は、中層にて一部展示されている宝物達の警護だ。ほとんど立ってて盗っ人が出んように見張っとくだけやけど。これが暇で暇でしゃーない。
 それを肝心の観客らがいなくなれば余計に暇になるっちゅーことや。

「あたしも食べに行きたいー」
「ダメだろ。まだ交代まで四半刻以上あんだから」
「うぅ……カティアちゃんのティラミスぅー」

 おまけにさっき聞こえた新作デザート。
 あれも絶対あの子が考案したに決まっとる!

「あー、さっきの一般民も言ってたよなぁ?   相当の売れ行きらしいから、行ったとこで俺らでも食えるかわかんねぇし」
「それは気合いでなんとかするんや!」
「一刻以上待つことになってもか?」
「うっ」

 たしかに、こっちの方に出入りする観客らが残してった情報からだと相当な待ち時間言うのは何度も聞こえてきた。
 いくら顔見知りになったからって、あの子が贔屓にしてくれるとは限らんしなぁ……。

「けど、ライアも食べたいと思わん?」
「言うな。あえて考えねぇようにしてんだぜ?」

 ライアもあたしに負けず劣らずな甘党さんやからね。
 抜け出そうにここで警護を抜けたら、貴重な宝物を狙う輩に隙を作ることになるんで出来ん。大人しく、交代が来るまで周囲を警戒しつつもライアと駄弁るしかなかった。
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