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第四章 式典祭に乗じて
119.式典祭1日目ーラディンコックの手料理ー
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「ぜはーぜはー、はーっ……はぁーー」
息切れてます。
走ったとか運動じゃあないです。
あれから途中休憩をこまめに挟みはしたものの、ティラミスとキウイムースを大量に作ったのでさすがに体力が限界に来たんです!
「ふゅゆぅ?」
「だ……大丈夫だよ、クラウ」
実際はあんまり大丈夫じゃないけど。
シャルロッタさんやラディンさんに大分お手伝いしていただいても、何回転生産したか覚えてないや。大人の体だったら余裕なのに、お子ちゃまの体への負担を舐めてました……。
「はい、お疲れ様。何か飲む?」
「お、オルジェ(オレンジ)のジュースいいですか……?」
「オルジェね? ちょっと待っててちょうだい」
僕の勤務時間はこれにて終わりだから、今日最後のドリンクなんで好きなのを頼みました。紙パックじゃなしに瓶詰め手作りジュースだもんで、果汁100%だから果糖や香料もナッシング。糖度も高いから何度飲んでも飽きない美味しさなんだよね。
クラウの分も注いでいただいてから、お互い一気飲みしてくよ!
「ぷはーっ」
「ぶゅぅー」
お風呂上がりのコーヒー牛乳みたいなお約束事しちゃったけど、なんかそんな気分だった。この世界に来て初めての労働だったからね? 賃金? お城に住み込みで好きな事をやらせていただいてるのですから受け取りませんよ? と言うか、お金持ってても使い方わからないし使い道が今のところないから。
「じゃあ、僕も終わる前にカティアちゃん達の夕餉作らせてもらうよ。何かご希望はあるかな?」
「え、えーと……」
ラディンさんのご飯。
とってもとっても魅力的なんだけど、リクエストしように何がいいんだろうか。
料理名はわりかし大きな誤差はないものの、基本は欧風や洋風に近いものとかで和食とかは一切ない。
何が言いたいかと言うと、この世界に来てから和食に飢えてるんです! お米を食べたいのであります!
けど、ファルミアさんにまだ確認取れてないからお米があるのかわからいのだ。
米粉や餅粉とかがあるのは確認してるけど、原材料の穀物が見当たらないしメニューにも一度とてなかった。
(うーん、悩むなぁ……)
お米は食べたいが贅沢は言えないので、無難なものにしてみよう。ラディンさんの腕前は一緒にデザート作ってるの見ててとっても素早く且つ丁寧に作業されていたから、ご飯も絶対美味しいと思うんだよね。
「それか僕のおまかせで作るって言うのもありだけど?」
「それでお願いします!」
だったら是非とも食べてみたい!
挙手する勢いで頷けば、ラディンさんはキラキラスマイルで頷き返してくれました。
「フィーにもだから、多めに作らないとね」
上層にはシャルロッタさんが識札で伝達済みなので大丈夫。
材料が集まってから僕は調理台を覗き込んだけど……。
「え?」
「何か気になるものでもあったかい?」
「え、えーと……これ」
「ああ、ウルス米かな? この国じゃ粉くらいでしか需要が少ないけど、極地とかじゃ主食として食べられるんだよ」
何故なんだろうか。
あれだけ求めてたのが、どうして目の前に。
なんでか白米がデーンっとボウルの中にあったんですよ!
でも、極地ってことは北と南の最果てってことだよね? 日本じゃ今は全国的だけど、なんでそんな極端な場所なんだろ?
それよりも、他に置いてある材料をサーっと見ていく。
まず目につくのが卵10個。
玉ねぎ、鶏?肉にピーマンやトウモロコシ(粒状)。
極め付けにコンソメとバターに大量のケチャップが瓶詰めでドカンと。
これってもしかしなくても、日本でお馴染みな洋食のあれなのでは?
とりあえず、調理工程を見ようとしてたらラディンさんは慣れた手つきでお米を研いでいた。
「本当は水につけておくといいんだけど、今回は時短させるね」
そこからはとてつもなく早かったです。
お米を鍋で炊き出したと思ったらもう野菜をみじん切りしていたし、終われば炒める前にサラダやクリームスープ的なのをどんどん作られていく。
目で追っていても、手元の動きがやっと追えるくらいでなかなか頭にメモできない。僕の勤めてたレストランの師匠達でもここまで早く丁寧には出来なかったのに、この王子様風コックさんは一体どれだけの修行をしてきたのだろうか。いや、蒼の世界の何百倍以上の年月を過ごせれるんだから逆に納得出来ちゃう。
「あ、忘れてた。シャル、カッツ削ったのもらえる?」
「いいわよ。どれくらい?」
「三人分だから、小さめのボウルに山盛りかな」
「わかったわ」
と言うことは、チーズインなのですか!
いかんと思っててもヨダレ出そうになっちゃう……我慢して口の中に溜まったのはごくんと飲み込みました。
「さて、ウルス米が炊けたけど……軽く冷却」
あったかいご飯はもちろんだけど、水分が多いから蒸らす時間の短縮かな?
鍋を覗かせてもらえば、ツヤツヤのご飯が炊き上がっていたよ。米一粒一粒立っていて、このまま食べちゃいたい……卵かけごはんとかで!
「……味見したい?」
「あ」
どうやら凝視してたみたい。
恥ずかしくなって縮こまっていれば、とんとんと肩を叩かれた。
「はい、あーん」
「………………」
顔を上げれば、目の前にはミニスプーンに乗った少量のごはんとキラキラ王子様笑顔。
このコラボはまぶし過ぎまふと目をつむりたい気持ちに駆られるが、ごはんは食べたいと言う欲望に抗えず黙って口を開けた。
「ふぉ!」
熱々じゃないけど、程よい温もりを感じる美味しいごはんが口いっぱいに!
芯も程よく残っていて、噛めば噛むほど甘味が強くなっていく。これは、高級コシヒカリ張りの美味しさ!
「ふゅ、ふゅぅ!」
「はい、クラウちゃんも」
「ふぁー」
クラウも人生初のお米を食べさせてもらえば、水色オパールのお目々をキラキラ輝かせて翼を激しく動かした。
そして、フライパンにバターで炒めた野菜とお肉にケチャップとコンソメを適量入れたソースを作ればごはんと合わせ。
それを別のフライパンでたっぷり卵を焼いてその中にチーズをこれまたたっぷり入れて軽く溶けてから、ケチャップライスを入れて半熟状態で巻く。
もうおわかりだろうが、まさに『オムライス』の完成!
「はい、出来上がり」
三人分をあっという間に巻いていって、他の料理も合わせて台車に乗せられた。
クラウが飛びかからんばかりに行こうとしたのをすかさず抱っこで止めるくらい魅力的な料理達でした。
「ホロロ鳥とウルス米のオムレツ包みってとこかな?」
オムライスって言わないんだ? いや、あれは和製英語だし違うよね。オムウルスとかだとなんか響きが微妙に聞こえるし。
「じゃあ、これを部屋まで運んであげるよ」
「けど、ここからじゃ遠いですし途中階段が」
「あ、そこは札で転移するから大丈夫だよ?」
魔法大活用なんですね、なるほど。
「おい、ラディン。話すのはまだにしとけよ?」
とここでイシャールさんがやって来られた。
お話って言うと、ラディンさんが来てすぐに言ってた僕に言うこと?だよね。すっかり忘れてたけどなんなのかな?
「まあ、この後は用事もあるからやめておくよ」
「また明日もくんじゃねぇだろうな?」
「カティアちゃん次第かな?」
「カティアは明日は下層だ。そん次は休暇にしてあるようだが」
「じゃあ、僕も下層に行こうかなー? ミュラドにもしばらく会ってないし」
「まだ盗む気か?」
「それもあるけど、他にもね?」
「そーかよ」
僕の調理法を盗むって、ピッツァは披露してないし大したことない気がするんだけどなぁ?
ファルミアさんの方が断然お上手だもの。これからしばらく朝ご飯以外会えないから、ちょっと寂しいなぁ。
とりま、中層の皆さんにはお先に上がることを告げて、ラディンさんの転移魔法の札で僕の部屋まで瞬間移動しました。
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