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第四章 式典祭に乗じて

140.式典祭3日目ーセリカとの思い出-①ー(途中別視点有り)

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「ふゅゆぅ!」
「あ、ごめんクラウ」

 驚いて離してしまったが、クラウはすぐに翼を広げて宙に浮いたから怪我はしてなかった。
 けど、悪いのは僕だから目の前にやってきてから謝罪して頭を撫でてあげた。

「けど、イシャールさんの妹さん……」

 失礼だが、かけらも似ていないし随分歳が離れている気がする。
 だけど、超ご長寿な人間が普通だから、それくらいあっても不思議じゃないかも。

「まあ、外見だけじゃ信じられないだろうな?   他にもイシャールには兄弟はいるが男兄弟しか似てねぇ」
「たしか、次男さんって聞きました」
「ああ。んで、俺と奴の家はエディ達よか近い縁戚でな?   っつっても、従兄弟じゃなくてはとこだが」

 なるほど、だからイシャールさんとサイノスさんは仲が良いんだ。

「ねぇ、カティアにセリカがいなくなる前のこと話す?」
「ここまで事情聞いてちゃ話す方がいいな。っても、少し長くなるがいいか?」
「はい」

 なので、立ちながらもなんだとフィーさんが人数分の椅子を魔法で作ってくれてから腰掛けた。

「まずイシャール達の家だが、ゼルの家の公爵家より少し家格の低い、侯爵家でも『六大侯爵』に当てはまる家柄だ。サイノスのとこもそれに含まれてる。家格とかはとりあえずそう言うのがあればいいって思っててくれ」
「は、はい」

 貴族階級に関してはうろ覚えだし、聞いてもよくわからないからお言葉に甘えて認識するだけにしておいた。

「……で、セリカがいなくなったきっかけは180年くらい前。外見だと今のカティアより少しでかいくらいだったな……」

 その前置きをしてから、エディオスさんは少し目を伏せて語り出した。






 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(エディオス視点)







 180年前。
 学園の寮から一時帰宅してきた俺やゼルは、城で久しぶりに姉妹きょうだいや幼馴染み達に出会えた。

「エディお兄様ー、ゼルお兄様ーっ!」
「おう、アナ」

 集まってる部屋に入れば、130歳になったばかりのアナが勢いよく走ってきた。ドレスなのに器用だと思ったが、お転婆でいられるのは今のうちだろうな。
 俺に駆け寄ってきた勢いのまま受け止めてから抱き上げてやった。30歳くらいしか差はねぇが、これだけでかいと持ち上げるのも少し大変になってきた。だもんですぐに下ろしたが。

「お帰り、エディにゼル」

 奥の方で優雅に茶を飲んでるのは姉のミラージュレインだった。俺とは120くらい離れてて学園はとうに卒業してるが、そろそろ御名手に輿入れする時期だ。

「姉貴もいたのか?」
「あら、いてはだめかしら?」
「いーや、別に」

 いつもは婚約者といることが多いから珍しいと思っただけだ。

「久しぶりだなエディにゼル」
「よっ!」
「え、エディ様、ゼル様、お、お久しぶりです」

 姉の反対側にいたのは幼馴染み達でもごく数人。
 六大侯爵家のアズラント家からサイノスと、リチェルカーレ家から次男のイシャールに末娘のセリカだった。セリカはアナよりもさらに幼いが、行儀はしっかり仕込まれてるのか恥ずかしそうに俺達へお辞儀するだけだった。

「アナ、お前セリカを見習えよ?」
「で、ですが、本当にお久しぶりでしたもの!」
「わーってるって。だからって、転けたら怪我するだろ?」
「うー……はい」
「え、えーっと」

 アナが沈むとセリカが慌て出した。
 いくら幼馴染みでも年上の王女が気落ちすれば、貴族の娘としては当然ああなるだろう。
 俺はアナをゼルに任せてセリカの前に着くとすぐにしゃがんだ。

「お前はなーんも悪くねぇって」
「そ、そうでしょうか……?」
「おう。つか、公的な場じゃねぇんだから敬語解いていいぜ?   俺ら幼馴染みだろ?」
「…………いいの?」
「先に兄貴達が外してるだろ?   いいって」

 な?、と安心させるために頭を撫でてやれば、セリカは年相応の笑顔を見せてくれた。

「うん、エディお兄様!」
「よし」

 それから全員で用意されてた茶と菓子をつまみ、休暇中の予定を組むことにした。

「ロイズとかは元気にやってっか?」
「ああ、兄貴も来たがってたが今日は家の用事でダメになってな。だからじゃねぇが、セリカ連れてきたんだ」
「セリカ、お茶はもっといる?」
「アナお姉様、大丈夫だよ」

 年も近く女同士である間柄、セリカはアナにとって可愛い妹分である幼馴染みだ。
 俺ももちろんそう思ってるし、口にはあまり出さないがゼルも同じはずだ。ひとり息子だもんで兄弟がいない分、幼馴染み達や縁戚の子供が兄弟代わりだしな?

「けど、この面子が揃えば明日とかに遠出して行楽でもしねぇか?   ちょうど、セリカやアナが好きなクロッカスの花も見頃らしいしよ」
「遠出か……」

 俺一人だけじゃ、親父や重臣あたりにこっぴどく叱られるですまないが、他に行く面子が揃えば話は別だ。
 それと、幼いアナとセリカを連れてけば二人の気分転換にもなる。俺やゼルは学園にいるから城下街に行き来したり出来るが、アナ達は幼等部に通っていても一人で出歩けれる年齢じゃないからな。ほとんど城にいるのと大して変わらない。

「まあ、遠出なんて羨ましいわ。でも……明日は私用事があるの」

 ミラ姉の落胆っぷりから、マジで参加出来なさそうだ。そこはしょーがねぇしな。

「お土産たっくさんお持ち帰りしますわ、ミラお姉様!」
「わ、私も!」

 まだ提案しただけなのに、もう行く気満々なようだ。
 なら、叶えるしかないかと兄貴と兄貴分全員で頷き合った。
 その翌日には支度をし終えてからそれぞれの騎獣に乗り、幼い二人の場合アナはサイノスと、セリカは何故か俺と一緒がいいと言い出した。

「竜種だから結構揺れんぞ?」
「で、でも、次いつ乗れるってわからないからっ!」

 珍しく強気に言い放つセリカの様子に少し驚いた。
 昨日久しぶりに会ったこともあるせいでか、構ってほしいのかと思ったが兄のイシャールを見れば苦笑いしていた。

「滅多に会えんくなったんだ。速度落としてやってくれ。殿しんがりは俺がやるわ。サイノスはアナ抱えてるしな?」
「わーった。つーわけで、兄貴の許可出たからいいぞ?」
「うん!」

 俺が告げれば、セリカはやったと言う風に両手を広げながら俺の足に抱きついてきた。
 こうやってガキらしい接し方してくれるのも今のうちだろうなと、好きにさせてやった。
 だが時間は限られてるのですぐに抱えてディシャスの背に飛び乗り、落とさないように脚の間に降ろした。

「イシャールの時と同じだ、無闇に動くと落ちるぞ?」
「絶対お兄様から離れない!」
「うっし!」

 返事を受け取ってからディを浮き島に乗せ、ゼルとサイノス達が先に飛び立ってから俺も手綱を捌いた。
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