【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第四章 式典祭に乗じて

143.式典祭最終日ーラディンの正体ー

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 ◆◇◆






 それから式典最終日までエディオスさんはきちんと式典に出席されて、僕は普通の休みを挟みながらも、中層や下層でティラミスやキウイムースを作り続ける日々を送っていた。

(言いたいけど、言えない歯痒さってどうにもならない……っ)

 それは例のセリカさんについてだ。
 エディオスさんはああ言っていたが、実物を目にされているんだからほぼ確定に等しいだろう。
 だからって、すぐに迎えに行けないのは立場と言う大人の事情。それはお兄さんのイシャールさんだってそれに当てはまるから、今すぐには伝えられない。
 けども、式典中はほぼ毎日顔を合わせる相手なのだ。
 うっかり口滑らせたらあとがどうなるか怖いで済まないので、業務連絡的なのと挨拶を除くとほとんど話していない、ようにしてます。
 僕自覚はあるけど、うっかりが多くて口滑らせる可能性が高いもの。基本的に口は堅いんだけど!

「難しい顔してるね?」
「ほえ?」

 ティラミスの盛り付けをしていたら、今日も一緒に作業しているラディンさんに声をかけられた。

「難しい顔、ですか?」
「うん。ここに物すっごく皺寄っちゃってるからどうしたのかなと思ってさ。仕事はきちんとこなしてるからしばらく様子見してたんだけど」

 と言う事は、結構前から悩んでるのが顔に出てたようだ。
 それは恥ずかしいやと首をぷるぷる振った。

「話せる範囲で良かったら僕が聞こうか?」
「え、えーと……」

 どう話していいものか。
 誰かに聞いてもらいたいなぁとは思ってても、今は仕事中。
 それと、シャルロッタさんは別で作業してるし、イシャールさんとも距離はそこまで離れ過ぎていない。
 あと、ラディンさんはセリカさんに会ったことがない人だからと言うのもあります。

「言い難い?」
「……そう、ですね」
「まあ、悩みは人に伝えることで重さが軽くなると言うけど……よっぽどのことは難しいからね。でも、抱え込み過ぎて泡細工のように壊れちゃ意味ないから、話せる人にはきちんと伝えた方がいいよ?   自覚してないところでどんどん気分が落ち込んだり元気がなくなっていくのはいいことじゃない」
「話せる、人?」

 一瞬、何故かセヴィルさんが浮かんだけれど、セヴィルさんにはまだセリカさんのことは一切伝えてないからダメだと追いやった。
 あとは、エディオスさん、サイノスさん、フィーさんだけど……消去法でフィーさんかな?

(今日の夕飯の時にでも、聞いてもらおうかな?)

 当事者の一人でもあるから、きっと色々聞けるだろう。

「ありがとうございます。聞いてもらえるかはわからないですが、一応話してみます」
「うんうん。少しすっきりしたようだね?   じゃ、アルグタムースの追加もう少し頑張ろうか?」
「はい!」
「おい、ラディン。カティア」
「うぇい⁉︎」

 急にイシャールさんに呼ばれて変な声を出しちゃった。
 ぎぎっと音がするように首を動かせば、少し不機嫌なイシャールさんが腕を組んで立っていた。

「ラディン、式典も今日で終いだ。話すかどうかは決めたのか?」
「あー、そうだった。つい楽しくて忘れてたけど……今日の夕餉くらいに話そうか?」
「え」

 せっかくフィーさんに聞こうとしていたのに、先約を入れられてしまった。

(……でも、焦ってもしょうがないか?)

 明日にでもエディオスさん達がセリカさんを迎えに行かれるかわからないし、僕が憶測でフィーさんとあーだこーだ言ってても仕方ないかも。
 悩んでた割にあっさりと納得出来ちゃうのは、聞いて貰える人がちゃんといるってわかったからかな?
 体のことも時々不便ではあるけど、慣れちゃったら気にし過ぎてもいない。……問題点はあるけど、そこは今悩んだらきりがないから考えないようにしてるだけだ。

「よし、今日は最終日だから僕とイシャールの分も作ってお邪魔しようかな?」
「わかりました」

 それからは頭を切り替えて仕事に打ち込みました。







 ◆◇◆







 今日の夕飯も豪華過ぎました。

(ハンバーグでもチーズ入り!)

 付け合わせ野菜もスープもご飯も美味しくいただきましたました。
 僕がチーズ好きだとわかったラディンさんは、ほぼ毎回僕らのご飯にチーズを使ってくれてます。
 ピッツァ好きだから必然的にチーズも大好きなんで、味の濃い食事も多いけど薄味も好きですよ?   たまたま濃い食事が多いからと言い訳しても全部完食してる時点で意味がないかも。

「ごちそうさまでした!」
「ふゅゆ!」
「ありがとう」

 最後のひとかけらやソースも出来るだけ綺麗に拭ってからごちそうさまをして、ソースで汚れてベタベタなクラウのお口やお腹を手拭いで拭いてあげました。

「ごちそうさまー。で、ほんとにカティアに話しちゃうの?」
「この子は口は堅いだろうからね?」

 信用してくださるのは嬉しいんだけど、一体何を話してくれるのか。
 きっと驚くだけで済まないことかもしれないから、ちょっとずつ緊張のパラメーターが上がってってぷるぷるしてきちゃう!

「まず始めに聞いておきたいんだけど……カティアちゃんは変幻フォゼって魔法はわかるかな?」
「は、はい」

 他の魔法を含めてフィーさんから学ぶことがまだまだ多いけど、ここ最近ほぼ日常的に使う魔法なら理解はしている。

「そう。けど、多分部分的な色変えだけだろうね?   変幻フォゼの本来の使い方は外見を全て変えれることなんだ」

 そこまで言うとなれば、ラディンさんの今のお姿は魔法によるもの?
 何故、はとりあえず置いとくとして質問すれば正解と答えが返ってきた。

「理由が聞きたい?   僕が元に戻ってからでもいい?」
「う、うーーん」

 どっちかと言われると非常に悩むが、元の姿って言うのには非常に興味が湧いた。
 この美形王子様な外見に繕ってまで隠したかった本性ってどんなのだろうかって。

「じゃあ、元に戻られてからでいいです」
「わかったよ。あんまり声上げないでね?」
「はい?」

 普通そうなんじゃ?と首を傾げたら、ラディンさんは苦笑いしながら片手を頭上で軽く振った。

「ふぉ⁉︎」
「ふゅゆ!」

 たったそれだけの動作をしただけなのに、瞬く間に変化していくラディンさんに僕とクラウは声を上げてしまった。
 予想では、もっとタイプの違う美形さんをイメージしていた。いたんだけど……美形は美形でも、年齢がもっともっと上過ぎたんです!

(お、おじいちゃんになっちゃった⁉︎)

 どっちが本当のラディンさん?と目にしてすぐは飲み込めなかったが、説明を思い返せばこっちが正解かと納得出来た。

「この姿では、初めましてじゃの?」

 口調までおじいちゃんになってる。
 他に変わったのは髪の長さや色や服装。
 髪は少し長い銀髪で前髪は緩くオールバックにさせていて、服はコックスーツは消えてエディオスさんが普段着るような王様っぽい服装に薄緑の大きなマント。

「え、えーと……はじめまして?」

 疑問形になるのは仕方ないけど、この姿のラディンさん?は一体どう言う人なんだろう。

「ふむ。そこまで狼狽えないし、この儂を見たことがないと言うことは……フィー、やはりこの子は色々と特別なのじゃな?」
「いーまは黙秘ー」
「ゆ、有名な方なんですか?」
「あー、俺も色々お前に聞きてぇが……この爺さん知らない方が不思議だぞ?   いくらかなり前に王座から降りてたってエディやアナ達の爺さんだぜ?」
「お前もそう思ってええ言っとるのに」
「え」

 エディオスさん達のお祖父さん?
 耳入ってきた単語が右から左へすーっと突き抜けていく。
 けど、重要な箇所は頭にちゃんとインプットされた。
 作業完了するまで数秒足らずだったが、さっき以上の驚きが体を駆け巡って思わずクラウを離してしまった。

「えぇえええぇええ⁉︎」
「おや、本当に知らなかったようじゃな?」
「ごごごごご、ごめんなさいぃいいい‼︎」
「よいよい。知らずでおることは悪いことじゃない。しかし、これじゃとティナさんやディオ達も知らないかもしれんのぉ?」
「知らないのも無理ないよー」

 のほほんとしてるフィーさん達の会話に割り込めない。
 無理ないと言うのもたしかに合ってはいるけど、まさか前触れもなく会える日が来るなんて思うでしょうか?   誰も思わない、はず!

「ふゅ?」
「おお、クラウちゃんや。儂がわかるかの?」
「ふーゅゆ!」

 クラウはクラウで事の重要さがよくわかっていないから、姿が変わってもラディンさん?だからいつものように抱きついていく。

「あ」
「ん?   どうかしたかの?」
「え、えーと……ラディン?さんってお名前はあの姿の時に使うだけですか?」

 ずっと前に神王様だったとしても、王族の方の名前を無闇につけてはいけない慣習があるのはエディオスさんに聞いたから。

「おお、そうじゃったな。あれも若い頃の儂じゃが、少し姿を変えておるので偽名を名乗っておったのじゃよ。儂の正式な名はレストラーゼ=ヴィスバルト=ラターシャ=チェイン=フィアーク=セイグラムじゃ。長過ぎるからレストでええぞ?    おじいちゃんとつけてくれると嬉しいがのぉ」
「……レストラーゼさんにさせてください」

 おじいちゃんなんて気安く呼べませんよほんとに。

「何故じゃ!   姿は変えておっても数日共に仕事をした仲じゃろうに!」
「正体わかったら無茶あります!」

 結構お茶目なおじいちゃんのようだ。
 性格はエディオスさんに少し似てるけど、彼のお祖父さんだから孫のエディオスさんが似てるのかな?

「言っただろ?    カティアはこう言う奴だって」
「むむむ、諦めはせんぞ」

 是非とも諦めて欲しいところですが、そうすると延々言い合うで終わりそうなんで黙っておきます。

「ところで、どうして僕に正体を明かしたんですか?」

 聞きたいことは山程あるけど、まずはこれ。
 挙手しながらクラウをあやしてくれてるレストラーゼさんに聞けば、彼はクラウを抱っこし直してから僕に向いてくれた。

「うむ。ラディンのままで接していても良かったが……あれは一時的な姿じゃからな。いずれなんらかの形で離宮の儂らと会うなら先の方が良いと思うての?」
「どーせ、ティナ達より先に抜け駆けしたかったんでしょ?」
「これ、一応伏せておこうと思っておったのに!」

 つまりは、離宮ってところにいるエディオスさん達のご両親や彼の奥様より先に僕と会っておきたかったそうだ。

(けど、僕のことを一体どこから……?)

 シェイルさんとかが広めた噂は離宮にも伝わってしまったのか?
 あとは……と、思い当たったことを口にすることにした。

「フィーさん」
「なーに?」
「……レストラーゼさんに僕のこと少し話されたんですか?」
「ちょこーっとだけね?」

 元凶がここにいましたか。
 フィーさんは可愛らしく舌を出して一応は謝罪してくれました。

「うむ。マリウス達を唸らせる程の調理の腕前を直にこの目で確かめたかったからのぉ。式典を抜け出してまで来た甲斐はあったわい」
「だだだだダメじゃないですか⁉︎」

 エディオスさん以上の脱走犯がここにいました!
 事情を知らなかった僕はともかくとして、なんでイシャールさんやフィーさんは止めなかったのだろうか。

「この爺さんが動き出せば、俺でも無理だな。歳食っててもサイノス並みの腕持っちゃ抑えれねぇよ」
「サイノスさんくらい、強い……?」
「在位当時の異名は剛力の神王とか色々呼ばれてたからな?」

 とにかくスーパーおじいちゃんだと言うことは理解出来ました。

「け、けど、今日は最終日なのにご飯はこっちでよかったんですか?」

 もう実行済みのことはともかくとして、夕ご飯をご一緒して良かったのか気になったのだ。

「大丈夫じゃ。家族として久々に食卓を囲んだのを一週間近く過ごしてきたんじゃ。一日くらい気にせんでよいよ」
「そ、それでいいんですか?」
「儂らは王族でも、フィーと関わりが深いからか価値観は少し庶民寄りでの?   カティアちゃんが気にすることは何もない」

 そこまで言われては、これ以上踏み込むことはやめておこう。

「とは言え、長居は出来んからな。名残惜しいがもう少しで離宮に帰らなくてはのぉ」
「しばらく出てくんな」
「つれないの、イシャールは」
「俺は魔眼持ちだからあんたの正体知ってるだけだが、いつカティアにバラすかハラハラしてたんだよ!」
「ふぉふぉふぉ、まだまだ修行が足りんの?」
「俺は侯爵家の一員でも、中層の料理長だ!」

 そうしてあーだこーだと言い合いが始まってしまったので、僕はフィーさんと一緒に彼らから距離を置いた。

「……仲が良いんですね?」
「レストは孫溺愛だし、赤ん坊からずーっと見てきた子とかも特に可愛いがるからね?」
「……おいくつなんですか?」
「んー、たしか2500歳は軽く超えてたかな?」
「…………」

 二十世紀以上生きてても、中身は70歳前後くらいのおじいちゃんって。
 僕もこの世界の常識に体が作り変えられたらしいが、いつまで生きるのか少しわからなくなってきた。
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