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第五章 新たな一員
151.クリーム作りと計画
しおりを挟む「……あまり使いたくない手段だけど、生クリームにカラナを入れるので手を打とうかしら?」
「一種類だけ別に作るしかないですね」
「けどアイシングのココルルはかけないと。生地にはほとんど味がないからクリームに到達するまで舌が疲れるわ」
「ゼルお兄様の辛いもの好きは相変わらずなんですね?」
「昔からですか?」
「ええ、私が覚えてることだと……麺料理ではアナお姉様の髪色程にまで染まったソースでも平然と召し上がられてたわ」
「「……………」」
辛さの具合を知りたくて聞いたが、以前セヴィルさんに聞いた通り以上の辛さじゃなきゃダメだろうとファルミアさんと意見が一致したかも。
「……ゼルのは最後にしましょうか。とりあえずは生クリームとカスタードとチョコカスタードがいいわね。果物入りもいいけれど、時間も押してるからとりあえずはその三種類にしましょう」
「はーい」
「はい」
生クリームは手早く大量に作ってから、セヴィルさん用のと分けて緩めの冷気結界に入れておく。
カスタードとチョコカスタードは、カスタードを大量に作って半分を湯煎したチョコを入れる作り方でいくそうだ。
「ココルルは湯煎で溶かしておいて、キビトット(コーンスターチ)はふるっておくの」
それと準備には氷水入りのボウルに空のボウルを入れておくのだそうな。
「生地と同じで牛乳を鍋で温めるんだけど、今度は沸騰させずに直前まで温めるわ」
その次に、ボウルに卵黄、砂糖、コーンスターチを入れて白っぽくなるまでホイップ。
これに火から下ろした牛乳を少しずつ加えてまた混ぜ込んでいくんだって。
「混ざりきったら笊で口当たりが良くなるように濾すの。ボウルじゃなくて別に用意した鍋に入れてね? これを中火にかけて泡立て器でずっと混ぜていくとクリームに固さが出来るのよ」
絶えずに混ぜてと注意されてから全員でコンロの前の立つ。
最初はしゃばしゃばなクリームが少しずつトロトロなっていくのは面白い。色も白っぽかったのが卵色になってくもの。
ただ沸騰してきたら火を弱めるのを忘れずに。もったり固まっていくまで混ぜるそうだ。
「じゃあ、このクリームを半分はボウルに入れてトナコのオイルとアマロ酒を混ぜて冷却ね。残りは全部チョコカスタードにしましょう」
分けたカスタードは全部一緒にしてファルミアさんが仕上げてくださり、それからチョコカスタード作りだ。
「湯煎したココルルを鍋に残したカスタードに入れて、弱火で混ぜるの。これもいっぺんに入れずに少しずつね」
入れ切ったら火を止めてコンロから下ろしてよく混ぜる。この後にはバニラオイルとラム酒を入れてよく混ぜるそうだ。
「この出来上がったチョコカスタードを冷却じゃなくて、最初に用意したボウルに入れて間接的に冷やすの。完全に冷却させてしまったら、最後に入れる無塩バターが溶けないからよ」
「少し熱いくらいですか?」
「温度計がないから大体それくらいね」
これは冷やし過ぎないように注意だ。
適温に冷ましてから氷水から出し、バターを三回に分けて混ぜ込んだらほとんど出来上がりだって。
「これを冷却で完全に冷ますわ。っと、生地が多分乾燥出来たはずね。氷室に入れておいて、先に生地の仕上げをしましょうか?」
焼き上がったエクレア生地は、特にどれも潰れてなくて僕の知ってるエクレアと同じでした。
「綺麗ですね!」
「うん。生焼けもないから上々ね」
「ココルルの湯煎終わりましたっ」
確認中にセリカさんにはアイシング用のチョコを湯煎掛けしてもらってました。
「火加減は温めに出来たかしら?」
「はい。ココルルが緩く溶けるくらいに」
どれ、とファルミアさんはミニスプーンを使って溶け具合を確かめられたが、特に何も言うことはなく頷かれた。
「このココルルを生地の上表面にだけ塗っていくの。全部だけど、大変だから休み休みね」
焼けた生地は薄っすら冷却魔法をかけて持てる熱さにさせておく。
それから全員ボウルに分けたチョコをスプーンで絵の具を塗るようにしながら生地の表面に塗りつけていく。
出来るだけ薄くしようにも、プロじゃないからいびつになってしまう。そこも手作りの醍醐味だからとファルミアさんは気にするなと言ってくれた。
全部塗り終えた頃には、さすがに手が少し疲れました。
「お茶でも淹れて休憩にしましょうか。片付けは少しした方がいいけれど」
シンクに溜まっていくばかりで結構な量になっていた。
なのでと言っていいか、ここでクラウにはチョコの汚れのボウルだけを好きに舐めさせてやることに。
汚れ防止策にファルミアさんが薄い膜のような結界を張ってくれました。
「ふーゅゆ、ふゅぅ!」
ずっと見学してるだけで我慢が限界だったのか、甘いものが食べれて実に幸せそうだった。
「クラウちゃんが聖獣ではなく神獣と聞いた時は驚いたけれど……」
クラウの秘密もセリカさんには伝えてある。
僕の秘密を先に知ったから失神寸前にはならなかったけれど、それでも結構目を丸くされていた。
「神気を感じ取れる人間も限られてるからそうバレないでしょうし。セリカ、あなたの守護獣はまだなのかしら?」
「はい。あの事件がなければ、その頃に決める予定ではいました。市井では守護獣の義務化がなかったので、記憶が戻ってからも特に探しませんでしたし」
「そうね。私の場合は生まれた直後に四凶達が決定したせいで必要はなかったけれど」
貴族社会では、守護獣は正装と同じように貴族の嗜みの一つと捉えられてるそうだ。
品評会とかは今の時代設けられてないそうだが、それでも希少価値が高く美しい守護獣は注目の的になることが多いそうな。
「……僕、四凶さん達やディシャス以外だと皆さんの守護獣はお見かけしたことがありませんね」
「無理ないわよ。クラウのように連れ歩けれる時期なんて、守護獣が幼少期の頃くらいだもの。大抵は騎獣くらいにまで成長してるから普段は獣舎よ?」
「じゃあ、セヴィルさん達のも?」
「あら、まだ見せてもらってないの?」
「お忙しいですし、僕に構ってる時間……は」
言い切ろうとしたら、空気が凍るような音が聞こえてきたのでゆっくりと顔を上げた。
セリカさんはぷるぷると体を震わせてて、ファルミアさんは目が一切笑ってないのに口元は弧を描くように緩ませていた。
「御名手に自分の守護獣を見せてない? あれ以降時間が取れないのはまあ仕方ないにしても、本当に八半刻も時間を取らなかったようね……」
あ、これファルミアさん達が来た日の夜とほとんど同じパターンだ。
「帰国前にとは予定してたけど、早い内がいいわ。セリカ、明日のカティとの勉強会は日を変えることは出来るかしら?」
「え、あ、は、はい。範囲を決めているだけなので特に問題はないかと……」
「なら決定ね! カティとの逢引二回目を明日決行させるわよ!」
「えぇえええ⁉︎ で、でも、セヴィルさんのお仕事」
「式典が終わったばかりだけど、後始末くらいなら近習達に任せればいいわ! 公表してなくてもあなたとゼルは御名手よ? 城じゃ目立ち過ぎるから保有地に遠出がいいわね!」
ダメだ。これはもう止められそうにない。
と言うか、帰国前にもって、デート企画第二弾は既に考えられていたんだ……。
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