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第六章 実り多き秋の騒動
204.相談の相談
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「……で、俺にってわけか?」
「お忙しい中すみません……」
「構いやしねぇよ」
ある人をお呼びしました。
お仕事中だから識札でも返事があるかわからなかったが、事情を書いたら『行く』と返事が来たので、僕の部屋に来ていただきました。
「あ、ありがとうサイノスお兄様……」
「まあ、他の連中じゃ無理だろ」
お呼びしたのはサイノスさん。
この人の方もどうにかしなくちゃいけないと思うが、僕ら両方の事情を知っているのはある意味この人だけ。
特に、セリカさんとエディオスさんのことについては。
「んで、まずどっちの聞けばいい? セリカかカティアか?」
「カティアちゃんよ!」
「セリカさんです!」
「……どっちもじゃ収拾つかねぇなぁ?」
おっしゃる通りだけど、お互い譲れない。
セリカさんは僕とセヴィルさんのことだし、僕はセリカさんとエディオスさんについて。
どっちも大切なことだけど、どちらが先かと言うとお互い自分じゃない方を優先してしまう。
サイノスさんが言うように収拾がつかないから、ここはじゃんけんだ。
ルールは向こうもこっちも普通に同じだったから、一発勝負!
「「じゃーんけんぽん!」」
「あ」
「では、セリカさんからです」
セリカさんがパーで、僕がチョキ。
決まればセリカさんも諦めたけど、緊張感が込み上がってきたのかお顔が段々と赤くなっていく。
「お、お、お兄様、は、い、いつ気づいて……?」
「確信持ったのはちょっと前だな?」
まさか、ご自分で御名手の事実にまで辿り着くとは思わなかったが。
けれど、それはセリカさんに今言うタイミングじゃないから、サイノスさんもそこは伏せていた。
「エディ誘いたいなら、誘えばいいだろ? まあ、いきなり二人っきりは難しいから、俺とかカティアと一緒なら」
「やっぱり神王様を誘うのは難しいんですか?」
「王太子でも難しかっただろうなぁ? 誘うっつーことは完全にその気があるって意味に捉えられるし」
「あー……」
身分差は親戚さんでも完全に越えられないようだ。
幼馴染みの中でも、セリカさんは離れてた期間が尋常じゃないのもある。
二人でデートするとなれば、一発で周囲にはバレる。
バレない方法もなくないだろうが、相手はエディオスさんだ。神王様って言う存在が一日でもお城を開けてしまう理由がデートじゃ、ただのゴシップだけで済まないだろう。
一人で抜け出すならまだしも、女性が同伴じゃ特に。
「そ、それじゃ、私……ずっと誘えない」
泣きそうになるセリカさんにどうアドバイスしたらいいんだろう。
言い出しっぺは僕だが、僕の方はもう周囲が『セヴィルさんと仲の良い子供』として受け入れられてるから、ちょっとお散歩出来るだけ。
この間のような遠出も、ファルミアさんが提案して他の人達が根回ししてくれたから出来たことだ。
(ん、待てよ?)
ここには、僕とサイノスさんがいる。
御名手を知ってるのは後フィーさんだけだけど、一方が相手を想っているのは大体の人が知っているはずだ。
そこをなんとかしたら!
「サイノスさん、サイノスさん!」
「どうした?」
「計画しちゃえば良いんですよ、僕らで!」
「か、カティアちゃん⁉︎」
「ほーぅ?」
慌てるセリカさんを他所に、サイノスさんは乗り気になったのか、いい笑顔になられて僕の前に屈んできた。
「どーさせんだ?」
「エディオスさんにお休みを作る理由にして、頑張ったご褒美にすればいいんじゃないかと! 僕が出来るのはセリカさんからの宿題と皆さんへの差し入れですが」
「等価交換には充分だ。乗った!」
「さ、サイノスお兄様⁉︎」
さすが、サイノスさん話がわかっていらっしゃる。
これは僕らがお互いの気持ちを知ってて、尚且つ二人が御名手同士だとも知ってるからこそ出来る会話だ。
フィーさんにも頼まれていたから、多分すぐに賛成してくれるだろう。
「じゃあ、その日にとは言えんがお前さんもゼルをなんとか誘えよ?」
「え、え?」
「俺としては同日でもいいが、さすがに王が不在の時に宰相まで休めねぇだろ? いや、逆に二人で視察と銘打てば不在が不自然じゃねぇか?」
「え、え、え??」
なんで、そこまで話が肥大化しちゃったんだろうか?
◆◇◆
「いっそ、僕の神域に招待させることで堂々と不在にしちゃえばー?」
フィーさんにも事情説明することになれば、急にそう言われてしまいました。
「神域にか?」
「一昨日に、その話題出してね? エディの仕事の出来次第でいいよーって言ったから」
そう言ってから、フィーさんは自分で用意した熱いコフィー飲んだ。
場所は変わらず僕の部屋だけど、座って話そうと言うことになったので、フィーさんがテーブルセットとティーセットを創ってくれたのです。
僕はフィーさんの右隣、サイノスさんはその逆。
セリカさんはフィーさんの真正面で、ずっと俯きながらコフィーをティースプーンでかき回している。
自分のことだから恥ずかしくて気を紛らわしたいようなので、僕らは注意していない。
「そりゃいいな? つーことなら俺も堂々と護衛として同行出来るわけか?」
「君もどーせなら、アナ誘えば?」
「なっ⁉︎」
「え、お兄様……アナお姉様を?」
「い、言うなよ⁉︎」
これでアナさんの気持ちも知ってる上での同士が出来た。
あとでセリカさんには聞かれるだろうけど、こっちの御名手についても気付かれるまで話すのはやめておこう。フィーさんからも一応言われてるので。
フィーさんも、僕の相談相手を増やすのにわざとサイノスさんにけしかけただろう。ちょっと見たら、わざとっぽく笑ってたもの。
「ってことはー、僕以外はみーんな逢引ってことかな?」
「う」
「あ」
「そ、そそそ、そうですね」
改めて言われるとむず痒くなってしまうのはお互い様だ。
目的の真意を知ってるのは片方の僕らだけだけど。
「セヴィルさんにもお話した方がいいです?」
「まあ、あの子だけならいいんじゃない? ただ、教えるのは二人っきりの時にしてね?」
「あ、は、は……い」
了承をもらえたのなら、ちょっとほっと出来た。
けど、サイノスさんのように気づかれてからじゃなきゃ皆さんの御名手については話さないつもりだ。
だって、フィーさんならまだしも、他人から告げていいことではないらしいから。
僕はあんまり実感なかったけど、セヴィルさんとこのお城で再開したような勘付くことがあって、お互いが気づき合うようだもの。
「……日程は、どーする」
ずっとお顔を赤くされてたが、気持ちを切り替えたのかほっぺが少し赤くても琥珀色の眼は真剣だった。
「そーだね? 収穫祭も終わって、大体の見送りも終わったでしょ? いつも通りなら、執務って数日で落ち着く?」
「急ぎがいいのか?」
「んふふー、僕の神域に来るなら収穫祭みたいなことするって言ったしね? とーくべつにー、ある果実の収穫を二人一組で取りに行く速さを競おうかなって!」
「ある果実、ですか?」
「どう言うものでしょう?」
「それは、当日までのひーみーつ!」
ここは、わざとらしく片目ウィンクと唇に人差し指を添えたフィーさん。
神域の果物だから、きっととんでもないのを用意されるのかな?
「その果実の成熟期が近いのか?」
「さっすがサイノス! そうそう、まあ一週間前後が食べ頃かな?」
「……それを餌にすれば、エディも急ぐな。俺らとかのは伏せて、そこだけ伝えればいいか?」
「僕がやっておこうか? 君からじゃ、なんで?とか思われちゃうだろうし」
「わーった。話は合わせとく」
「じゃ、この話についてはお終い。僕、ちょっと用事あるから行くねー?」
「おう。俺ももういいだろ?」
「あ、はい」
「あ、ありがとうございました!」
二人を見送ると、フィーさんの創ったモノ達は瞬く間に消えてしまい、僕とセリカさんにまだベッドでくーすか寝てるクラウだけが残った。
扉が完全に閉まってから、セリカさんが僕に詰め寄ってきた。
「サイノスお兄様とアナお姉様が両想いって、いつ知ったの⁉︎」
「……サイノスさんが、セリカさんのこと気づいた辺りですね」
「ってことは、あのお二人はまさか御名手⁉︎」
「……内緒ですよ?」
気づかれたからには答えるって、さっき決めたもの。
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