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第六章 実り多き秋の騒動
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「散歩に行こう」
「ぴ⁉︎」
「ふゅ⁉︎」
収穫祭二日前。
急にセヴィルさんがやって来たので、僕とクラウは驚いてしまった。
セリカさんとはたまたまお勉強が終わった後だったから、見計らったかのようにセヴィルさんが入れ替わりでやって来たので、驚かないわけがない。
「ど、どうされたんですか?」
「さすがに行き詰まった」
僕が聞けば、即返答。
これは、よっぽどお疲れのようだ。
「え……っと、エディオスさんはいいんですか?」
「アルシャイードや他の近習達に任せた。とりあえず、息抜きさせてくれ」
つまり、僕に会える時間が減るに減ったのとお仕事が大変過ぎて限界のようだ。
(す、少し、嬉しいかも……っ!)
息抜きの拠り所に、僕なんかを選んでもらえるなんて。
(って言ったら、絶対怒られるから言わないでおこう)
この人也の愛情表現って、直情的な言葉をくれることだから。
最近、ちょっとそこがわかってきたんです。
だけど、
「無理してお散歩に行くより、お部屋でお茶しませんか?」
「……お前が気分転換出来ないのに?」
「来てくださっただけで充分ですよ?」
でなきゃ、ひと息ついたら裏庭か中庭に遊びに行こうと思ってた。
それを伝えれば、セヴィルさんは『そうか』とやっと中に入ってくれました。
「じゃ、お茶の準備しますねー」
実は、お茶のストックやお湯を沸かすことが出来るように少し前から設備を改造してもらったのだ。
一回一回、コロネさんやサシャさんを呼ぶわけにいかないと思うのは僕が貴族でない平民だから。
ここで生活する設定もそうしてあるので、お茶やコーヒーが欲しい時は自分で用意出来るようにしてもらえたんです。
キッチンじゃない、簡易的な給湯設備くらいだけど充分。
お茶菓子なんかは、保存の魔法をかけた焼き菓子を常時ストックさせてある。クラウが食べ過ぎないように、缶に入れて厳重に保管も忘れてない。
今日のお茶は胃に優しいレモンバームのようなすっきりしたハーブティーに、この間片手間に作った抹茶とチョコチップのクッキー。
これはセヴィルさんも食べられると言ってくれたので、ちょうどあって良かった。
「どうぞー」
「ふゅふゅ」
クラウも僕の真似をしたいのか、ちっちゃな手をセヴィルさんに向けていた。
セヴィルさんは創ってくれたテーブルセットに腰掛けていて、僕がお茶を差し出せばすぐにカップを持ってくれました。
「……落ち着くな」
セヴィルさんは甘いものでも、ハーブティーのような香草茶は嫌いじゃないらしい。
だから、お散歩途中の東屋でのお茶会は大抵ハーブティー。紅茶も嫌いじゃないみたいだけど、飲むのはハーブティーが多いとか。
僕も自分の席について、先に飲んでるクラウの横に置いたカップを手に取った。
温度もちょうどいい美味しいお茶になっていた。
「お仕事、無理してないですか?」
顔色は少し落ち着いても、気疲れはすぐに抜けるわけじゃないから。
「……俺はまだいいが、エディオスが無茶をしている」
「え?」
「神域に堂々と行けるのだぞ? 日帰りではなく、フィルザス神の小屋か本邸に泊まるつもりでいるみたいだ」
「え゛⁉︎」
フィーさんから詳細なんてあれっきり聞いてないけどそんな勝手なことをしていいんだろうか。
「い、いいんですか?」
「昨夜久々にフィルザス神と晩酌していたが、その時に酔った勢いで決めてたそうだ」
「セヴィルさんもお酒を?」
「少し付き合ったが、手洗いで席を外した時に決めていた」
「あー……」
エディオスさんもだけど、他の人も大丈夫か心配になってきた。
僕はセリカさんとお勉強会って、皆さんに比べたらのんびり過ごしてるだけだけど。ちなみに先日のミニテストは平均点より少し上くらいだった。
「何か差し入れしましょうか?」
「無理にしなくていい。エディオスの自業自得だ」
「そうですか」
と言うことは、この間以上に差し入れしにくい状況って事みたい。
「しかし、本当にフィルザス神が許可するとは思わなかったが」
このタイミング、セヴィルさんに言えるチャンスかもしれない!
「……セヴィルさん」
「何だ?」
「実は、今度の収穫祭企画したのフィーさんだけじゃないんです」
「お前が?」
「正確には、あとサイノスさんもいます」
「……俺が聞いていいのか?」
「セヴィルさんはいいそうです」
ほぼ全部、僕とフィーさんが抱えてた秘密をここで言おう!
セヴィルさんは基本口が堅い人だもの。
他の皆さんも堅いけどね?
「御名手同士の逢引計画です!」
「……俺達以外?」
「皆さんのお相手、もう決まってたらしいです」
「……参加人数が少ないが、まさかそれぞれの相手が?」
セヴィルさんがぽかんと口を開けてしまうのも無理はない。
僕だって、聞いた時は飛び上がらんばかりに驚いたもの!
「……サイノスがアナで、エディオスがセリカ?」
「正解です!」
「……あいつらは知ってるのか?」
「サイノスさんは、エディオスさんとセリカさんの事を気付かれたのでフィーさんが教えてました。ご本人のはまだです」
「…………何故こんな近くにいて気づかないんだ、あいつらは」
あー、すっきりした。
ほんの少しだけ肩の荷が下りました。
「気付かない理由は僕もわかりませんが、内緒ですよ?」
「当然だ。だが……よく一人で抱えてたな」
「フィーさんがいたので、完全に一人じゃなかったですし」
後もうひと組抱えてるのは、今言わないでおこう。
僕も半信半疑なところがあるから。
「……一つ聞くが」
「あ、はい」
「男の方の気持ちは知ってるが、女の方はどうなってる?」
「……同じですね」
「……俺もあまり他人事ではないが、鈍過ぎやしないか?」
ええ、本当に。
なんで、こんなにも鈍感さんが多いのやら。
「ふゅ」
クラウは頷いてるのかどうかわからないが、自分の分のクッキーを食べてお腹をぽんぽんさせていた。
「だが、その事実を知らない上で神域で過ごさせるのか」
「二人ひと組にさせて、わざと二人っきりにさせるそうです」
「……サイノスはまだいいだろうが、エディオスが危ういな」
「と言いますと?」
「俺とお前が遠出した時に、エディオスはサイノスに焚きつけられて自覚したんだ。お前をフィルザス神に預けた後に見に行ったが……認めるのに随分と部屋を荒れさせてた」
想像しやすい。
自覚した時の恥ずかしさに身悶えちゃったって感じだろう。
わかったのは、ツッコミ親友が無理矢理見せてきた恋愛ドラマにあった演出のお陰だ。
だから、恋愛は苦手でも客観的な見解は出来なくもない。
それに今は、完全に応えられてなくても婚約者さんがいる身だ。
あ、相手からは相当好かれていますが、今は置いとくとして。
「この提案は、セリカさんが気軽にエディオスさんを誘う事が出来ない事がきっかけでした」
「たしかに、幼少期ならまだしも成人を迎えた女性が、男を誘うのは難しい。ましてや、神王が相手ではな」
「幼馴染みさんでもですか?」
「セリカのこれまでの境遇と今宮城に来ている理由は、見ようによってはエディオスの懐に漬け込もうとする風にも見られる。考え過ぎかもしれないが、良からぬ輩達はそう思っておかしくない」
優しい人達が多いお城でも、やっぱり反対派とか過激派とかがいるんだ。
僕はカイツさんに一度誘拐されたが、あれはまだ運が良かっただけ。
次は、そうとは限らないもの。
「だが、これを機にエディオスとセリカの時間を増やす方がいいかもしれないな?」
「出来るんですか?」
「俺がカティアとこうして過ごす時間を作るのと同じだ。その程度なら、俺も構わないが」
「アナさん達は?」
「……出来なくないだろうが、噂が広まるのが早そうだ」
「噂?」
「見目があれだけいいだろう? あれでいて、エディオスもだが奴らも羨望の的になっている」
セヴィルさんはどうなのかな、と思った時ちくんと胸が痛んだ。
なんだろう?と思っても、一瞬だったからすぐに消えてしまった。
「セヴィルさんはどうですか?」
「……俺の場合、敬遠されがちだからないだろう」
それは冷徹宰相さんって呼び名があるせいかな?
でも、最初のお散歩の時にユティリウスさんに無理矢理着せられた黒王子様では、結構注目の的だった。
あれ以来、そう言う格好は見てないけど……また、見れたらなと思う。
(ちょっとずつ、好きが大きくなってきたのかな?)
そうで、あっていてほしい。
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