【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第六章 実り多き秋の騒動

218.神域収穫祭スタート!(途中別視点有り)

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 ◆◇◆






 言われた通りに着替えてリビングに戻ってきたけど。

「あ、あの、フィーさん?」
「なにー?」
「この服、どう見たって蒼の世界のですよね?」

 それにカラーがモノクロでも、僕がいた世界のボーイスカウトのようにしか見えない!
 大人の女性二人は、流石に長ズボンでもなんで僕だけハーフパンツなんだ!

「似合うからいいじゃーん」
「そう言う問題じゃないです!」
「走るし、パートナーに抱えてもらうにはスカートじゃダメでしょ?」
「抱えて?」
「もらう?」
「ですの⁉︎」

 最後、アナさんがとっても大きな声で叫びました。

「そ、来た時と同じパートナーに行き帰りとも抱えてもらうんだよ?」
「聞いておりませんわフィルザス様⁉︎」
「私もひとっことも聞いてません!」
「今言ったじゃーん?」
「「フィルザス様⁉︎」」

 フィーさん、計画立てるの結構雑な気がしてきた。

「抱えんのはいいが、そんな急がなきゃなんねぇのか?」

 エディオスさん達は、来た時と同じ冒険者風の軽装。
 ただ違うのは、移動前に羽織っていたマントがない。
 セヴィルさんもサイノスさんも着てないから、フィーさんに事前に言われてたかも。

「ま、ねー?   先に言っておいた理由の一つだからさ?」
「お前さんが言ってた、成熟期間が関係あるのか?」
「そーそー。自然に落ちる以外の方法で収穫すると、食べれるのが半日以内だからね?」
「それなのに、明日調理でいいのか?」

 たしかに、セヴィルさんが指摘したようにそれでは明日のお昼とかに使えないんじゃ。

「時間内に戻ってきたら、僕が術で加工させるから問題ないよ。だもんで、全員急いで帰ってきてね?」

 途端、目の前がぐにゃりと揺らいだ。

「え、え?」
「慌てるな」
「セヴィルさん?」
「ふゅ!」

 隣にいなかったセヴィルさんの声に驚いて振り返れば、僕達はどうしてか小屋の中じゃなく森の中に放り出されていた。
 クラウも一緒で、鳴きながらあちこちを見回っていた。

「フィルザス神の魔法だ。昔、神域に来たばかりの頃はエディオスと隠れ鬼をするのによくこうされたんだ」
「じゃあ、転移の魔法ですか?」
「ああ、これだけの人数を……別々の場所に転移させるなどあいつしか無理だな。人間では到底出来ない」

 たしかに、今いる場所にはエディオスさん達はいない。
 覆い茂った木々で周囲は見えにくても、あの鮮やかな髪色は僕以外誰一人としていなかった。

「……でも、中途半端に説明されるだけって。僕達目的のキアルとか経路とか知りませんよ?」
「それについては、お前達が着替えてる間に俺達が大まかに聞かされた」
「え?」
「収穫祭は口実だろう?   エディオスやサイノス達をそれぞれ二人きりにさせるのが目的なら、フィルザス神ならこうするだろうな。順路についての紙ならこんなのを持たされた」

 魔法袋クード・ナップから取り出した紙には、聖樹を中心にした森の地図が描かれてあった。
 その中には、緑、紫、紺と三色の線がある一点を目掛けて引かれていた。

「俺達の場合は、俺の目の色に合わせて紺色だろうな」
「じゃあ、僕が抱えてもらいながらセヴィルさんに指示する感じですか?」
「その方が早いだろう」

 なので、お姫様抱っこしていただくことに。
 決して慣れてないわけじゃないんだけど、いちいち恥ずかしがってたら身が持たない。
 セリカさん達は予想出来なくないが、お相手があの人達だと結構強引なとこがあるから問答無用で抱っこされてるはず。
 そう思うことにして、僕はクラウを左手で抱えてから地図を覗き込んだ。









 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(エディオス視点)








 いきなり二人っきりにさせられるとは思いもよらなかった。

(……フィーの性格から、させるつもりだろうって予測しろよ俺!)

 今、事前に渡された地図にもあった俺とセリカの開始地点。
 セリカはいきなりの転移に驚いて大慌てしてたが、俺がフィーの得意技だと説明したら一応落ち着いてはくれた。
 くれたんだが、森の中で俺に抱えられながら走る事にはすぐに納得出来ず、縮こまってしまってた。

「え、えっと……その」

 まったくどうしたらいいんだ。
 こちとら騎乗の時に出来るだけ腹くくったのが、今になって緊張感ってのが込み上げてきてんのによ⁉︎

(ゼルやサイノスに呆れられんだろうが……)

 騎乗中、体調について聞く以外マジで一刻も無言で過ごしてただなんて言えねぇ……。
 カティアとシュレインに行く時とかは、あいつがディシャスの背に慣れずでほとんど慌ててたから話せなかった。
 だが、セリカは幼少期を除いても多少は騎乗に慣れている。そのおかげで騎乗には問題なかったが、いざ二人だけになると何を話していいのかわからない。
 正直言って、城じゃ二人だけになる機会なんてなかったし、セリカは普段カティアの家庭教師で俺の近くにいない。
 それに、セリカを説得しに行った以来、直接会話してなかった。

(今回のも、フィーとかサイノスが関わってるだろうが……)

 つか、絶対そうだろうが……いきなり二人っきりにさせても何話していいのかわからん!
 騎乗した時はうっかり手ぇ握っちまったが、予想以上の柔らかさに思考が飛びそうになったしよ……操縦に集中しなきゃなんなかったのに無意識怖!

「あ、あの……エディお兄様」
「っ……おー、なんだ?」

 やっと声を掛けてきたセリカの方に振り返れば、意外と近くにいた。
 黒と白の、ドレスとも乗馬服とも違う身体のラインにぴったり合った服装は俺の目から見ても可愛らしい。
 そして、男だから目が行くのはやっぱり女特有の胸部。

(こいつ、アナくらいデカくね⁉︎)

 胸がふくよかな女は身内問わず結構見てきたから、目は肥えていると思う。
 が、セリカは戻ってきて短期間しか過ごしてなくても『惚れた女』だ。
 意識してる奴とそうじゃねぇ奴の違いくらい、自覚した今の俺ならわかる。こんな細くて柔らかそうな女の身体を抱き上げて、しかも抱えながら走らなくちゃなんねぇって!
 だが、そこに視線が向き過ぎないようにセリカの顔を見る事にした。
 恥ずかしいのに変わりないが、目を見てやんなきゃこの遊戯すら始めれない。

「え、えっと……わ、私」
「おう」
「お……重いと思うから、おんぶにして!」
「……はぁ?」

 ディシャスに乗る前にも抱えたのに何言ってんだ?









 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(サイノス視点)






「納得がいきませんわ!」
「そうカリカリすんなよ」
「サイお兄様はどうしてそんなにも冷静ですの⁉︎」

 いや、それは今回の計画者の一人だしな?
 俺とアナのはどっちかと言えばついで。主体となるのはセリカとエディオスだ。
 その事実を少々知ったアナでも、現状俺と二人っきりについて怒ってるのじゃなく、俺に『抱えられる』ことが納得いってないようだ。

「俺くらいなら、お前さんを長時間抱えるのなんてなんて事ないぜ?」
「サイお兄様、仮にも淑女に失礼ですわよ⁉︎」
「からかってねぇって」

 けど、さっさと始めなきゃゼルとカティアに追い越されちまう。
 カティアはまだきちんとゼルの気持ちに応えてなくても、ほとんど時間の問題だ。遠出の逢引以降、散歩なんかを繰り返していくうちに表情は変わっている。
 鈍い俺から見たって、あれはもう恋してる女の顔だ。
 元の身体に戻れば、そのうちくっつく。
 対する俺とかエディの場合は完全に片想いだ。
 エディだけは両片想いで、御名手の事実を知らなくても、状況は俺の方とほとんど変わりない。
 だからって、挑まれた勝負を受けない訳がない。

「行き先は、先に俺達がフィーから聞いてる。お前さんが俺に抱えられながら指示してくれねぇとエディ達に負けるぞ?」
「それは嫌ですわ!」

 やっぱ、エディの妹だから勝負事には負けたくねぇんだよな?
 騎乗前でも気合い入れてたのはお互い様だ。

「んじゃ、途中休み休みしながら行くぞ?」
「わかりましたわ!」

 さっきまでの抵抗はどこへやら。
 甘い雰囲気はまったくないが、アナらしくていいかと俺は納得する事にした。
 とりあえず、地図の中の紫の線を辿ることに決め、俺は絶対落とさないように愛しい女性を抱えてから走り出した。


**********



しばらく、三視点と言う形が続きますノ

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