221 / 616
第六章 実り多き秋の騒動
221.共通の通過地点(途中別視点有り)
しおりを挟む◆◇◆
また何回か休憩も少し挟みつつ向かった先には、見覚えのあるモノが目に飛び込んできた。
「聖樹!」
「ふゅふゅぅ!」
「ここ、ではないよな?」
セヴィルさんが止まってから僕も地図を確認しても、通過点ではあるけど不思議な囲みのようなものが出来ていた。
「ここを一周?」
「そうなのか?」
セヴィルさんと一緒に覗き込んでも、聖樹らしいポイントのマークにはどの線も必ずぐるっと一周するように指示があった。
その先は、何故か泉があるのとは反対の方に真っ直ぐとしか描かれていない。
「これ、どう言うことなんでしょう?」
「俺もエディオス達も地図通りに指示してもらえとしか言われてなかったな」
「見なかったんですか?」
「見ようとしたら、あいつに『パートナーと見ろ』と言われたのでな」
ってことは、サプライズとして秘密にしてしておきたかったのだろうか。
このポイントについても、パートナーと解いてみろって暗示かもしれない。
「先に誰か来ましたかね?」
「……足跡、らしきものは見当たらない、か」
セヴィルさんの高さでも見当たらないってことは、僕達がひょっとして一番かもしれない?
まだまだ憶測でしかないけれど。
「ふゅふゅぅ!」
「え、クラウ?」
いきなりクラウがジタバタし出したので、油断してたから抱っこしてた腕が緩んでしまった。
そのせいで、すぽんと抜け出して翼を広げて飛んで行ってしまう。
まさか、聖樹水を飲むんじゃ……って焦ってしまったが、クラウは泉を素通りして聖樹の手前で止まった。
「ふゅ、ふゅ!」
そして、聖樹を右手で指してから、何故か教えてもいないくるっと回るターンをし出した。
たまに見る、僕が覚えのない行動ってほんとどこで覚えてきたんだろう。
思い当たるのは、ある意味よく一緒にいるフィーさんだ。
蒼の世界のついてはそこそこ詳しいし、セリカさんとの勉強会が始まってからは時々クラウを預けている。その時とかに、絶対ふざけて教えたに違いない。
「……指示通りに、聖樹を一周しろと言うことか?」
あれだけで、セヴィルさんはなんとなくわかったみたい。
「ふゅ、ふゅ!」
「お、おい、クラウ!」
僕達がまだ不安に思っていたら、焦ったかったのかクラウが戻ってきてセヴィルさんの服の袖をぐいぐい引っ張ったのだ。
「く、クー! 落ち着いて! 僕達があの樹を回ればわかるの?」
「ふゅぅ!」
質問をすれば、クラウは服を引っ張るのをやめてセヴィルさんの肩の近くで浮かんで、『えっへん』と自分の胸を張ったようにした。
ように、ってくらいお腹と胸の境がわからないからそう見えただけ。
これを仕込んだのも、きっとそれフィーさんだろう。
可愛いけど、性別のないクラウを一体どう躾たいのか。
そこはまあいいとして。
「聖樹に何か仕掛けでもあるのか……?」
「わからないですけど、行くしかないみたいですね」
ここでためらってても、地図の指示は絶対だから。
なので、クラウが僕の腕の中に戻ってきてから、セヴィルさんは僕をしっかりと抱えて走り出した。
「回る方向は!」
「泉から向かって左です!」
根っこが大きいので大回りするのかと思っていたら、セヴィルさんは数メートル手前で地面を強く蹴り、根っこの上まで跳んでから次の根っこへ。
と、難なく跳んで跳んで、跳んでいって……気づいたら一周してたって、セヴィルさんの身体能力凄過ぎです!
けれど、泉が見えてくれば、上から息を呑む声が聞こえて来たので顔を上げた。
「どうかしましたか?」
「前を見ろ。明らかにおかしいのが、見えるはずだ」
「前?」
セヴィルさんの跳躍に驚いてしまってて前を疎かにしていた。
彼に言われて前方を向けば、僕達がスタートしたらしい箇所が歪んでいた。
「え?」
「詳しいカラクリはわからないが、クラウが急かした理由があれだろう。この樹を回れば、道が繋がるという事か」
「だ、大丈夫ですか?」
「ここはフィルザス神の領域だ。あれの管理下で不可思議でない状況など大したことではない」
「なるほど!」
フィーさんのお家?なら、僕でも納得出来ちゃう。
びっくりハウスだって後でバラされたとしても納得出来ちゃいそう!
兎にも角にも、あそこに飛び込んで真っ直ぐ進めば目的地に着けるだろう。
二人で頷き合い、僕はクラウをしっかり抱っこしてからセヴィルさんの腕にしがみついた頃には、あのアメーバみたいに歪んだ場所がすぐ目の前にあった。
「飛び込むぞ!」
「はい!」
「ふゅ!」
次のステージもどんと来い!って意気込んでた僕は、楽しくてしょうがなかった。
セヴィルさんといて楽しくないわけじゃなくて、こんな風に心踊る感覚になるのなんて久しぶりだったから。
その気持ちのまま、セヴィルさんが歪んだゾーンを通り抜けていけば、景色は一変。
明るい空とか、さっきまで回っていた金色の聖樹とかはどこにもなく、代わりに神域に来てから始めて訪れるおどろおどろしい黒い森の中。
例えるなら、おばけの森?って言うくらいどこもかしこも暗い場所だった。
「こ、ここここ、ここ、神域ですか?」
「ふーゅぅ!」
「だ、そうだが」
クラウが腕の中でこくこく頷く様子から、ここが神域のどこかなのか僕達に教えてくれた。
神獣だから、オーラ?気配?って言うのでわかるみたいだ。
「……あれ?」
ちょっと地図が気になったので覗き込んだら、聖樹以降の指示どころか地図全体が変わっていた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(サイノス視点)
「ななな、なんですの⁉︎」
俺にしがみつくアナが叫ぶのも無理はない。
何番目にあの歪んだ空間を通ったかわからないが、地図通りに聖樹を回って突破したところは、神域でも見覚えのない場所だったからだ。
「どこだ……ここ?」
「サイお兄様も、来たことがありませんの?」
「俺なんか、エディとゼルに比べれば回数限られてたしな」
フィーと、今の俺がエディ達と同じように接する事が出来たのはエディのお陰だ。
あいつが、駄々こねて100の時に勝手に神域に行ってしまったのを追いかけてなきゃ、俺は今でもフィーに対して他の人間と同じように神として敬ってただけだ。
かと言って、俺はエディが勝手に飛び出していった以外にこの神域に来る機会が限られてたのは、エディとの年の差や仕官する時期が重なったせい。
思うように自由な時間を過ごせなかったもんで、フィーと直接話すのも宮城だけだった。
だから、神域についてはあの聖樹とフィーの小屋に本邸しか知らない。
俺に聞くってことは、アナも大体同じってとこか。
「とりあえず、地図見ないとなんもわかんねぇな?」
「そ、そそ、そうですわね!……あら?」
「どした?」
少しあごを引いて下を見れば、アナが藤色の瞳を丸くさせていた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(エディオス視点)
「い、いやぁあああああああああ⁉︎」
「お、おおお、落ち着けセリカ⁉︎」
歪んだ空間の先が神域にしちゃ気味の悪い場所だったんで、その景色が目に飛び込んでからすぐにセリカが俺にしがみついてきた。
それはまだ予想出来ることだったからって、その予想以上に柔らかいセリカの胸を押し付けられてしまい、俺は口ではセリカをなだめようにも意識はそっちに向いていた。
(だって、無理あんだろ⁉︎)
惚れてる女のそう言うもんを体に押し付けられて、正気保てる男っているか?
俺は有り得ないくらいに鼓動が速まり、顔が火を噴きそうなくらい暑くなり、けど頭では自分も落ち着かせようと理性を働かせていた。
「とりあえず、叫ぶのやめろ! まったく魔獣がいないとこじゃねぇんだぞ⁉︎」
俺がそう言えば、セリカはやっと我に返ってくれたのか叫ぶのをやめてくれた。
「ご、ごご、ごめん、なさい」
「……まあ、こんなとこ来りゃ女は大抵そうなんよな?」
アナは苦手だったか?と思い浮かべられるが、カティアの場合どうなんだ?
少し早めの移動でぐったりすることはあるが、セリカと似たようになればゼルがどう対応するか。
今も押し付けられてる胸の感触は、カティアの場合ないからまあ大丈夫だろう。
って、いい加減離れてもらわんと俺の理性が保たねぇ!
「……しがみつくのはいいが、当たってんぞ?」
「え?……ごごご、ごめんなさい!」
やっと自分の体勢を理解したようで、首に回されていた手を離し、元の位置に戻った。
顔は覗き込まなくてもぜってぇ赤いだろうから見ない。
見たら、胸を当てられた以上に理性が切れそうになるからだ。
「っかし、マジで出そうだな……」
カティアと最初に会った日は、たまたま聖樹の近くで星熊を倒せたが、フィーがたまに頼んで来るどの討伐依頼でもこんな場所はなかった。
「お、お兄様、来たことないの?」
「ねぇな」
昔より自重はしてんが、好き勝手に神域の食いもんを食われないように案内させなかったとこか。
こんな奥まったところで、美味い食いもんがあるか怪しいがセリカが指示してくれた地図じゃさっきのとこは絶対だった。
「セリカ、地図の続きどーなってる?」
「え、えっと……あれ?」
「あ?」
「ぜ、全然違うのに、なってるの!」
俺の方にも見せてくれたので覗けば、たしかにフィーに隠れて見た時とは違って、この場所に合わせたような風景しかなかった。
それと、他の線はなくて俺達が辿ったのと同じ色の線しか順路は書かれていない。
「あの空間を越えたら、変わるって仕組みか?」
元々、フィーが用意したものだ。
紙に何かしらの仕掛けがあってもおかしくはない。
「だ、大丈夫、かな?」
「フィーが用意したんだ。これくらい普通だ」
「そ、そうなんだ」
「魔獣も寄せ付けねぇように、なんかしてるはずだ。とにかく、他の奴らに追いつくように急ぐぞ」
「う、うん」
少し強引にセリカに頷いてもらってから、指示通りに進むことにした。
他の線がないのかまではわかんねぇが、まず目的のやつを手に入れないと勝負に負ける。
ゼルにもだが、アナに負けたくないからだ。
22
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-
いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、
見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。
そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。
泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。
やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。
臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。
ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。
彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。
けれど正人は誓う。
――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。
――ここは、家族の居場所だ。
癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、
命を守り、日々を紡ぎ、
“人と魔物が共に生きる未来”を探していく。
◇
🐉 癒やしと涙と、もふもふと。
――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。
――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる