【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第六章 実り多き秋の騒動

221.共通の通過地点(途中別視点有り)

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 ◆◇◆






 また何回か休憩も少し挟みつつ向かった先には、見覚えのあるモノが目に飛び込んできた。

「聖樹!」
「ふゅふゅぅ!」
「ここ、ではないよな?」

 セヴィルさんが止まってから僕も地図を確認しても、通過点ではあるけど不思議な囲みのようなものが出来ていた。

「ここを一周?」
「そうなのか?」

 セヴィルさんと一緒に覗き込んでも、聖樹らしいポイントのマークにはどの線も必ずぐるっと一周するように指示があった。
 その先は、何故か泉があるのとは反対の方に真っ直ぐとしか描かれていない。

「これ、どう言うことなんでしょう?」
「俺もエディオス達も地図通りに指示してもらえとしか言われてなかったな」
「見なかったんですか?」
「見ようとしたら、あいつに『パートナーと見ろ』と言われたのでな」

 ってことは、サプライズとして秘密にしてしておきたかったのだろうか。
 このポイントについても、パートナーと解いてみろって暗示かもしれない。

「先に誰か来ましたかね?」
「……足跡、らしきものは見当たらない、か」

 セヴィルさんの高さでも見当たらないってことは、僕達がひょっとして一番かもしれない?
 まだまだ憶測でしかないけれど。

「ふゅふゅぅ!」
「え、クラウ?」

 いきなりクラウがジタバタし出したので、油断してたから抱っこしてた腕が緩んでしまった。
 そのせいで、すぽんと抜け出して翼を広げて飛んで行ってしまう。
 まさか、聖樹水を飲むんじゃ……って焦ってしまったが、クラウは泉を素通りして聖樹の手前で止まった。

「ふゅ、ふゅ!」

 そして、聖樹を右手で指してから、何故か教えてもいないくるっと回るターンをし出した。
 たまに見る、僕が覚えのない行動ってほんとどこで覚えてきたんだろう。
 思い当たるのは、ある意味よく一緒にいるフィーさんだ。
 蒼の世界のついてはそこそこ詳しいし、セリカさんとの勉強会が始まってからは時々クラウを預けている。その時とかに、絶対ふざけて教えたに違いない。

「……指示通りに、聖樹を一周しろと言うことか?」

 あれだけで、セヴィルさんはなんとなくわかったみたい。

「ふゅ、ふゅ!」
「お、おい、クラウ!」

 僕達がまだ不安に思っていたら、焦ったかったのかクラウが戻ってきてセヴィルさんの服の袖をぐいぐい引っ張ったのだ。

「く、クー!   落ち着いて!   僕達があの樹を回ればわかるの?」
「ふゅぅ!」

 質問をすれば、クラウは服を引っ張るのをやめてセヴィルさんの肩の近くで浮かんで、『えっへん』と自分の胸を張ったようにした。
 ように、ってくらいお腹と胸の境がわからないからそう見えただけ。
 これを仕込んだのも、きっとそれフィーさんだろう。
 可愛いけど、性別のないクラウを一体どう躾たいのか。
 そこはまあいいとして。

「聖樹に何か仕掛けでもあるのか……?」
「わからないですけど、行くしかないみたいですね」

 ここでためらってても、地図の指示は絶対だから。
 なので、クラウが僕の腕の中に戻ってきてから、セヴィルさんは僕をしっかりと抱えて走り出した。

「回る方向は!」
「泉から向かって左です!」

 根っこが大きいので大回りするのかと思っていたら、セヴィルさんは数メートル手前で地面を強く蹴り、根っこの上まで跳んでから次の根っこへ。
 と、難なく跳んで跳んで、跳んでいって……気づいたら一周してたって、セヴィルさんの身体能力凄過ぎです!
 けれど、泉が見えてくれば、上から息を呑む声が聞こえて来たので顔を上げた。

「どうかしましたか?」
「前を見ろ。明らかにおかしいのが、見えるはずだ」
「前?」

 セヴィルさんの跳躍に驚いてしまってて前を疎かにしていた。
 彼に言われて前方を向けば、僕達がスタートしたらしい箇所が歪んで・・・いた。

「え?」
「詳しいカラクリはわからないが、クラウが急かした理由があれだろう。この樹を回れば、道が繋がるという事か」
「だ、大丈夫ですか?」
「ここはフィルザス神の領域だ。あれの管理下で不可思議でない状況など大したことではない」
「なるほど!」

 フィーさんのお家?なら、僕でも納得出来ちゃう。
 びっくりハウスだって後でバラされたとしても納得出来ちゃいそう!
 兎にも角にも、あそこに飛び込んで真っ直ぐ進めば目的地に着けるだろう。
 二人で頷き合い、僕はクラウをしっかり抱っこしてからセヴィルさんの腕にしがみついた頃には、あのアメーバみたいに歪んだ場所がすぐ目の前にあった。

「飛び込むぞ!」
「はい!」
「ふゅ!」

 次のステージもどんと来い!って意気込んでた僕は、楽しくてしょうがなかった。
 セヴィルさんといて楽しくないわけじゃなくて、こんな風に心踊る感覚になるのなんて久しぶりだったから。
 その気持ちのまま、セヴィルさんが歪んだゾーンを通り抜けていけば、景色は一変。
 明るい空とか、さっきまで回っていた金色の聖樹とかはどこにもなく、代わりに神域に来てから始めて訪れるおどろおどろしい黒い森の中。
 例えるなら、おばけの森?って言うくらいどこもかしこも暗い場所だった。

「こ、ここここ、ここ、神域ですか?」
「ふーゅぅ!」
「だ、そうだが」

 クラウが腕の中でこくこく頷く様子から、ここが神域のどこかなのか僕達に教えてくれた。
 神獣だから、オーラ?気配?って言うのでわかるみたいだ。

「……あれ?」

 ちょっと地図が気になったので覗き込んだら、聖樹以降の指示どころか地図全体が変わっていた。









 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(サイノス視点)






「ななな、なんですの⁉︎」

 俺にしがみつくアナが叫ぶのも無理はない。
 何番目にあの歪んだ空間を通ったかわからないが、地図通りに聖樹を回って突破したところは、神域でも見覚えのない場所だったからだ。

「どこだ……ここ?」
「サイお兄様も、来たことがありませんの?」
「俺なんか、エディとゼルに比べれば回数限られてたしな」

 フィーと、今の俺がエディ達と同じように接する事が出来たのはエディのお陰だ。
 あいつが、駄々こねて100の時に勝手に神域に行ってしまったのを追いかけてなきゃ、俺は今でもフィーに対して他の人間と同じように神として敬ってただけだ。
 かと言って、俺はエディが勝手に飛び出していった以外にこの神域に来る機会が限られてたのは、エディとの年の差や仕官する時期が重なったせい。
 思うように自由な時間を過ごせなかったもんで、フィーと直接話すのも宮城だけだった。
 だから、神域についてはあの聖樹とフィーの小屋に本邸しか知らない。
 俺に聞くってことは、アナも大体同じってとこか。

「とりあえず、地図見ないとなんもわかんねぇな?」
「そ、そそ、そうですわね!……あら?」
「どした?」

 少しあごを引いて下を見れば、アナが藤色の瞳を丸くさせていた。








 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(エディオス視点)






「い、いやぁあああああああああ⁉︎」
「お、おおお、落ち着けセリカ⁉︎」

 歪んだ空間の先が神域にしちゃ気味の悪い場所だったんで、その景色が目に飛び込んでからすぐにセリカが俺にしがみついてきた。
 それはまだ予想出来ることだったからって、その予想以上に柔らかいセリカの胸を押し付けられてしまい、俺は口ではセリカをなだめようにも意識はそっちに向いていた。

(だって、無理あんだろ⁉︎)

 惚れてる女のそう言うもんを体に押し付けられて、正気保てる男っているか?
 俺は有り得ないくらいに鼓動が速まり、顔が火を噴きそうなくらい暑くなり、けど頭では自分も落ち着かせようと理性を働かせていた。

「とりあえず、叫ぶのやめろ!   まったく魔獣がいないとこじゃねぇんだぞ⁉︎」

 俺がそう言えば、セリカはやっと我に返ってくれたのか叫ぶのをやめてくれた。

「ご、ごご、ごめん、なさい」
「……まあ、こんなとこ来りゃ女は大抵そうなんよな?」

 アナは苦手だったか?と思い浮かべられるが、カティアの場合どうなんだ?
 少し早めの移動でぐったりすることはあるが、セリカと似たようになればゼルがどう対応するか。
 今も押し付けられてる胸の感触は、カティアの場合ないからまあ大丈夫だろう。
 って、いい加減離れてもらわんと俺の理性が保たねぇ!

「……しがみつくのはいいが、当たってんぞ?」
「え?……ごごご、ごめんなさい!」

 やっと自分の体勢を理解したようで、首に回されていた手を離し、元の位置に戻った。
 顔は覗き込まなくてもぜってぇ赤いだろうから見ない。
 見たら、胸を当てられた以上に理性が切れそうになるからだ。

「っかし、マジで出そうだな……」

 カティアと最初に会った日は、たまたま聖樹の近くで星熊ストルスグリーを倒せたが、フィーがたまに頼んで来るどの討伐依頼でもこんな場所はなかった。

「お、お兄様、来たことないの?」
「ねぇな」

 昔より自重はしてんが、好き勝手に神域の食いもんを食われないように案内させなかったとこか。
 こんな奥まったところで、美味い食いもんがあるか怪しいがセリカが指示してくれた地図じゃさっきのとこは絶対だった。

「セリカ、地図の続きどーなってる?」
「え、えっと……あれ?」
「あ?」
「ぜ、全然違うのに、なってるの!」

 俺の方にも見せてくれたので覗けば、たしかにフィーに隠れて見た時とは違って、この場所に合わせたような風景しかなかった。
 それと、他の線はなくて俺達が辿ったのと同じ色の線しか順路は書かれていない。

「あの空間を越えたら、変わるって仕組みか?」

 元々、フィーが用意したものだ。
 紙に何かしらの仕掛けがあってもおかしくはない。

「だ、大丈夫、かな?」
「フィーが用意したんだ。これくらい普通だ」
「そ、そうなんだ」
「魔獣も寄せ付けねぇように、なんかしてるはずだ。とにかく、他の奴らに追いつくように急ぐぞ」
「う、うん」

 少し強引にセリカに頷いてもらってから、指示通りに進むことにした。
 他の線がないのかまではわかんねぇが、まず目的のやつを手に入れないと勝負に負ける。
 ゼルにもだが、アナに負けたくないからだ。
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