チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號

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第1章

第十五話 エスタ出立準備

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 ルーミエがリビングに来るなりこう言いだした。

「これからお風呂と朝食の準備をします。朝食は私たちが準備します。アキトは浴槽を置いてるのでお風呂を用意して下さい」

 どうしたどうした。朝の起きた時のようなデレた感じがない、事務口調なのでこちらも改まってしまう。

「お、おう」

 風呂場に行くと昨日買い出しの時に買ってきた木製の湯船が置いてあった。お湯をなみなみと注ぎ、手を入れて温度を確かめる。――よし、適温だ。

 脱衣室ではユウキとノイリの二人が準備して、俺が出ていくのを待っていた。

「わーい、お兄ちゃん、ありがと。……一緒に入っちゃう?」

「えっ!?」

 ユウキがいたずらな笑顔で聞いてきたので、ドキッとしてしまう。正直一緒に入りたい。

「だ、だめですよぅ、ルーミエにおこられますよ」と、ノイリが清く正しく引き止めてくれた。

 一緒に入ることを想像して顔がにやけてしまうのは男の性(さが)です。

 リビングでは黙々とルーミエが朝食の準備をしている。少し準備を手伝い、ルーミエと二人で先に朝食を食べ始めたが、何故か会話は無い。ルーミエどうしたんだろう?機嫌が悪いのかな?

 無言の朝食を食べ終わった頃に顔を手でハタハタとあおぎながら、バスタオルを巻いたユウキが出てきた。

「いやーおっさきー」

「ユウキ!アキトがいるんだから、服着なさいよ!」

「いつもは何もつけてないけど、暑いんだからバスタオルで許してよ~」

 ユウキは裸族なのか……。

「アキトさんありがとうございました。気持ちよく入れました」と、ノイリは礼儀正しくお礼を言ってくれた。

 湯上り美女が二人。うーん、眼福眼福。

 ルーミエから熱めのお湯を足すように指示があり、お湯を足していく。あつつ……熱すぎたな。水を入れる、ぬるいかな?適温がわからなくなってきた。手でお湯をかき回しているとバスタオルを巻いたルーミエが入ってきた。こちらもユウキと同じくいいプロポーションだ。なんだろう、これは男として試されているのだろうか?

「うん、いい感じよ。ありがとうアキト!」と、さっきの無表情とは打って変わって極上の笑顔でお礼を言ってくれると、ドキドキしてしまう。

 俺が風呂から出ていくと「んん~~~~~~」と、風呂場からとても色っぽい声が聞こえてきた。

 聞けばルーミエはお風呂好きで、入ると当分は出てこないそうだ。早く入りたい一心で、事務口調だったり、無言で朝食を食べていたんだな。

 朝食を食べている二人に今後の予定を聞く。

「この宿は今日で引き払うの。そのあとはギルドに行って、昨日の報酬の受け取ってからカムラドネに向かうための旅支度かな」

「ノイリ、どのくらいの移動になるの?」

「ここから馬で七日ほど南西に移動するんです」

「七日か……」移動だけでこれだけ長い時間を費やしたことがないので、言葉に詰まる。

 車や飛行機のない世界なので、あきらめて慣れるしかないのかな。唯一救いなのが、旅の荷物は全てアイテムボックスに入るので、馬車などには乗らず、身軽に移動はできるということぐらいだ。

 途中にタンメナという街があり、そこまで食料や水を補給する所は無い。移動と休息に時間をかけたいので、自炊はしない。少し多めに三食、十日分をそれぞれが屋台街で買い込んでもっていくとのこと。

 本当にアイテムボックス内の食べ物は基本的には腐らないってのは便利すぎるな。



 ルーミエがお風呂からあがって、落ち着いたころに宿を出てギルドへ向かう。

 ギルド内は昨日の襲撃の後の処理や報酬支払でとても混雑していて、討伐報酬の受け取りにも時間がかかった。

 ちなみに俺の改ざんされた討伐記録は気づかれなかった。討伐記録確認の際に記録石(キロクセキ)にはギルドからのお知らせが入ってくる。

 なになに……。

◇ ◇ ◇
重要案件:「首謀者ガルジアを倒したパーティについて」

 エスタを襲った災いを大きな犠牲を払いつつも退けた冒険者たちには大変感謝しています。また亡くなられた冒険者方々の一日も早い現場復帰と無事仲間との合流を果たされることを願っています。

 さて、ギルドでは襲撃首謀者ガルジアを倒したパーティを探しています。依然、目撃情報はなく生死が不明ではありますが、捕らわれていた三百人を超える魂が解放されたことをエスタ支部の協会で確認しております。また、それに付け加えモンスターが一掃されたことにより、当ギルドはガルジアの討伐完了と判断しました。そのパーティへの十分な報酬を用意し、また英雄としてエスタ首長から……」
◇ ◇ ◇

 と、長々と続いている。

 そうだ、死体はアズアフィアが飲み込んでしまっているので、見つからないよな。それでも記録石(キロクセキ)から情報が出てくると思っているのだろう。

 しかし英雄扱いは御免だな、このままバックレてしまおう。

 そしてお知らせの最後には一週間後にエスタを挙げての祝賀祭が執り行われると締めくくられていた。

 ギルドで討伐報酬を得た俺たちは屋台街で昼食をシェアしながら、おいしいと思ったものを四食ずつ注文していった。店の方そういった注文を受けることにも慣れていて、手際よく作って渡してくれる。

 栄養バランスも大切だ。肉野菜炒め、焼き肉、サラダ、唐揚げ、ご飯、パスタ系、焼き飯、スープ、デザートなどの果物も十分に購入した。

 四人分で銀貨五十枚くらい使っただろう。金に困らない生活ってのはこういうことなのかな。今まで感じたことのない金銭感覚だが心地よい。

 続いて武器と防具の店に向かい、ルーミエたちのそれぞれの武器や防具を見直すようだ。

 ガルジアから得た戦利品を渡してもいいのだが、彼女たちにとってオーバースペックだったり、出どころを他の冒険者に嗅ぎ回られても嫌なので、時期をみて渡すことにしよう。

 三人の手に金貨三十枚ずつ渡していく。

「こ、こんなにもらっていいの?」

「いいよ、討伐報酬以外にもたくさん稼いだからな。俺はすこし試したいことがあるから、ギルドの訓練所にいるよ、ゆっくり選んでくれ」

「わかったわ。じゃ、またあとでね」



 再びギルドに戻り訓練場に向かいながら、ノイリが言っていたことを思い出す。

 ”アイディア次第で魔法はもっと強くなる”

 それを試したくてここに来た。

【検討事項その一 野営時の無意識下における箱魔法の継続利用の実験】
 ガルジアからの戦利品中にあった、自動魔法継続の機能をもった指輪を使って箱魔法の継続使用を試みる。

 野営について彼女たちからまだ何も聞いていないが、ファンタジー世界の野営といえば交代で見張りに立つのがお決まりだ。毎日馬での移動になるし、しっかりとみんなが休息できるかどうかの実験だ。

 まずは対物理、対魔法の障壁で目隠しのために色を黒した箱魔法を自動魔法継続の指輪を通して発動すると一辺一メートル黒色立方体ができた。

 この箱魔法の強度を試す。襲撃された時でも、準備する時間が稼げればなんとかなるんじゃないのかな。

 剣で切りつけてみるがびくともしない。凝視すると分析能力が働き、箱自体の耐久値が見える。

 攻撃するたびに数値が減るが、指輪の機能で自動的にMPが補充され耐久値は元通りになった。MPは毎秒1から2ほど減っているが、俺の場合一分間でMPは自動回復するので問題ない。

 使えるな。野営時に彼女たちに提案してみよう。

【続いて検討事項その二 無意識下での魔法の継続使用について】
 箱魔法も指輪の機能を使うことで、無意識下での継続使用が可能になった。その延長で治癒魔法を自分自身に常時かけておくことができるのではないかと考えた。

 この世界では神の加護を得れば、四回まで死んでも大丈夫と言われているのだが、俺は異世界出身なので、実際この規定に当てはまるのかわからない。

 加護が無くて死んだらそこで終わりかもしれない。

 ”守り”を1に下げ、自動魔法継続指輪を使い治癒魔法を実行する。

 手のひらを剣の腹の部分にあてて、すっぱりと切る。いつものように自然治癒力でじわりじわりと治り、指輪の効果が発揮されていない。

 箱であったり、炎であれば常にMPを注ぐための対象があれば、指輪も魔力を供給でき効力を発揮する。しかし、治癒は充填対象となる体のHPは満タンにってしまうと、効力を発揮できないのかな?という感じで諦めた。

【検討事項その3 魔法の意識下での継続使用について】
 指輪を用いての継続治癒はできないと判断して、自分で意識をもって魔法をかけ続ける方法で実験をしてみる。

『継続治癒魔法』と、念じてみると毎秒3ずつMPが消費される。お、魔法がかかったぞ!?手のひらをすっぱり切ってみる。

 自然治癒のじわーと治る感じではなく、一瞬で傷がふさがる。切ったあと痛みを一瞬感じるが、あまり痛いと思わなかった。

 アズアフィアが毎分60MP消費、継続治癒が180消費となり、今の俺のステータスであれば、毎分MP回復は290あるのでおそらくMPが底をつくことはないだろう。あとは戦闘でどれだけうまく使えるか経験していくしかないな。

 しばらく実験を続けているとルーミエたちが迎えに来てくれた。

「アキトー、おまたせー」
 指輪を一瞬外し、展開していた箱魔法を解除した。

 さあ、出発だ。
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