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第1章
第十九話 悪魔の塔の攻略隊
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箱魔法での移動でタンナメからカムラドネまで二時間ほどでついてしまい、遠夜見(とおよみ)の巫女との面会を終えてもまだ午前中だった。
箱魔法での移動で旅の疲れもほとんどなかったので、屋敷で用意してもらった昼食とその後のお茶を終え、五人で散歩がてらギルドに寄り情報収集と街の外にある塔を見に行くことになった。
ギルドでは記録石を出して、カムラドネまでの道中で得たわずかばかりの討伐報酬をもらい、同時にお知らせなどの情報を収集した。
そこには悪魔の塔の記事があった。
◇ ◇ ◇
特集一 スデン王国第七狩猟部隊 ゴーウィン隊長が語る強さの秘訣とは
特集二 長期潜伏に必要なアイテム特集
特集三 モンスター別対処法とおすすめ武器
特集四 今月のレアお宝情報
……
◇ ◇ ◇
他にもこれまでの悪魔の塔の歴史背景や情報がまとめてあり、写真の掲載こそ無いが、ちょっとした雑誌になっていて、"月刊悪魔の塔"といってもいいくらいの記事の量だ。
特集一に目を通しつつ、レイラに尋ねる。
「ゴーウィンって人は有名なのか?」
「そうね、当時の最上階まで行って悪魔と対峙している数少ないパーティの一つよ。スデン国王が私のために派遣した部隊ではあるんだけど、その人苦手なのよね……」
「ムキムキマッチョな感じ?」
「ふふふ……。まぁそれもあるけど、どうやら私のことを気に入っているらしくてね。会うたび塔で手に入れた宝石類を献上してくるの。そんなのでなびくとでも思っているのかしら」
プレゼントする相手は塔が百階層に達したら、命を奪われてしまう。そんな塔へ冒険者を呼び寄せている宝を渡してもダメだろう。ゴーウィン、ちょっとは考えろよ。
「最近それがエスカレートしてきて、面倒くさいのよ」
「そりゃあ、こんなに綺麗な人だったら、お付き合いしたいって思っちゃうよな~」
「アキトだったら、いつでもOKなんだけど!」と、ぴたっとくっついてきた。
「えっ!?」と、言ったきり何を言っていいのかわからなくなり、言葉を続けられない。レイラはにこにこしながらくっついたままだ。
ドキドキしながらも記事を読み進めていくと、塔最深部へ行ったパーティは過去に六組しかなく、どのパーティも瞬殺で強烈なブレス攻撃で屠られている。他にも九十階層に到達するまでにおよそ十五日かかったと記事には書いてあった。
そんなにかかるのか……。
狭いダンジョン内であれば野営にも気を使わないといけないし、階を進むごとに相手も強くなり、かなりの数のモンスターを倒さなければならない。さらにラスボス悪魔の能力も未知であるのと、同じくらいの階層が地下もある……。うーんどうしよう。
ギルドホールの一角であれこれ考えていると、いかついフルプレートの戦士系十数名がガチャガチャと入ってきて周囲の注目を集めていた。
その中一人で浅黒い屈強な戦士がレイラに声を掛けてきた。
「これはこれは巫女様ではございませんか、こんな所でお会いするなんて珍しい。……さては私をお探しでしたかな?フハハハ!」
レイラはぱっと俺から離れた。
「ゴーウィン殿、今日は所用でギルドに立ち寄っただけですよ」
「左様ですか。お連れの方は……見かけない顔の方ばかりですな」
「弟子のノイリとそのお友達ですよ」
俺の方に寄ってきて握手を求めてきた。
「スデン王国第七狩猟部隊隊長ゴーウィンだ」
分析能力を発動させる。
◇ ◇ ◇
ゴーウィン:レベル62 魔法剣士
198cm 体重94kg
30歳 スデン王国第七狩猟部隊隊長
◇ ◇ ◇
レベルは高いな。さすが最深部まで行ったことのある猛者だ。身体はがっちりしていて俺と比較するとかなりの体格差がある。
「初めまして、冒険者のアキトといいます」
手を出し握手を交わすと金属の籠手で覆われた手は握りつぶすくらいの力で俺の手を握ってきた。
一般人であればイデデデ……と、泣きが入る展開になるのだが、俺の”守り”のステータスではそうはいかない。
ギチギチと音を立てているが握りつぶすことができないでいる。
奴の手は大きく、かろうじて俺の親指と薬指、小指がゴーウィンの手の平をホールドしている。
同じ手を握るのでも女子の手をにぎにぎしたいわー。と、思っていると。迫力ある顔が近づいてきて、さら威嚇してきた。
小声で「小僧、俺の女に手を出すなよ……」と、言ってさらに力を込めてきた。
こういう性格だったら彼女に疎まれているのも分からないだろうな。
「さて、……どうしましょうかね」と、言葉を返しながら、全力で手の平を握り潰す。
メキメキっという二人にしかわからない音がして、同時にゴーウィンの顔が苦痛で歪む。
「あがっ……貴様!!」
咄嗟に手を放し、その場にうずくまる。
「少々力を入れすぎましたね、いやいや申し訳ない」
これで俺の力量を理解してくれたらいいんだが……。治癒魔法を施してやる。
「なっ…」と、小声で驚き、呆然とした表情で俺を見送る。
取り巻きのフルプレートの戦士が行く手を阻もうとするが、ゴーウィンが「やめろ」と、制止した。
「今日のところはこれで失礼させていただきます。巫女様、行きましょうか」
ギルドを出たところでルーミエがゴーウィンを非難する。
「嫌な感じの方でしたわね。……それにしてもアキト、彼の手に何したの?早くてよくわからなかったわ」
「奴が『俺の女に手を出すな』と、言って俺の手を握り潰そうとしたから、逆に潰して、その後に完全に治した」
「完全に治すもそうだけれど、潰せるなんて、この細い腕のどこに力があるのかしら……」
と、ルーミエは俺のチートを不思議がっている。
「やんっ、私のためにありがとう。ア・キ・ト。もうこれで完全にアキトの女なのね……うふふ」と、レイラが俺の腕に絡みつく。
出会った時からだがレイラが俺に積極的な好意を寄せてくれている。俺の女になってもいいなんて、これだけの美人に言われると妄想が止まらない。
楽しい雰囲気のままカムラドネ山側の門を抜けて塔に向かう。上空から見たときには街の近くにあると思ったが、かなりの巨大建造物でもあり、歩いていくと随分と時間がかかった。
材質は石でできているのだが、これだけの高さを積み上げるとなると、元いた世界の技術では到底建造はできない何か魔術的な力が働いているのだろう。巨大な塔は正方形の形をしていて、その一辺は二百メートルくらいはありそうだ。
塔の入り口付近から塔を見上げ、目を凝らしてみると頂上付近がズームされてよく見える。本当に便利な体だな……。
塔の壁には窓がいくつもあり、そこからハーピー、グリフォン、ワイバーンが出たり入ったりしている。空中浮遊からの攻撃対策だろう。箱魔法移動で高層階からの攻略は難しいかな。
ふとレイラの自己紹介の時を思い出し、「れいたん、中はどうなっているか知ってる?」と、聞いてみる。
「うん」と、満面の笑みで答えてくれた。マジ可愛い……。
おや、他の三人の視線が痛いぞ。
「日によってルートが変わるからフロア地図はないんだよ。階によって上層へ行く階段の前に強いモンスターが出現するときもあるんだって」
「ルート変わるのか。フロアボスも出るし難易度あがるな」
「それに上層フロアでは人数制限があるの。人数を絞らないと通り抜けることができないドアがあって、六十五階以上の階では一フロア最大十五人でしか挑めなくなって、前のパーティがいると次のパーティは進むことができないのよ」
クリアするための条件が厳しいものがある。
「私が死んでもノイリに能力が伝達されることは、各国のお偉いさん達は知っているから、今は各国の攻略組はほとんど休止や撤退しているの……」
百階層に到達したら自分の命が奪われてしまう。救ってくれるはずの攻略隊も撤退し始め、宝物目当ての冒険者だけが集まり、徐々に塔が大きくなっていく。
それをずっと見てきたのか……。レイラの頭をよしよしと撫でる。
地上、地下合わせて百八十階層以上はあるダンジョンの攻略。
逃してしまうと危険な状況は変わらない二体の得体のしれない双子悪魔の討伐。
……そして残り時間が僅かなこと。
普通の冒険者であれば無理難題になるのだろうが、俺はその全ての課題を解決できる手段を持っている。
方針は決まった。あんな塔があるからいけないんだ。
「レイラ……。辛い思いをしてきたんだな。今すぐ俺が解放してやるよ」
「えっ!今すぐ?どうやって?」
「塔をぶち壊すんだ。さぁ、街へ戻ろう」
四人とも訳が分からないといった表情しながらも、街へと引き返した。
箱魔法での移動で旅の疲れもほとんどなかったので、屋敷で用意してもらった昼食とその後のお茶を終え、五人で散歩がてらギルドに寄り情報収集と街の外にある塔を見に行くことになった。
ギルドでは記録石を出して、カムラドネまでの道中で得たわずかばかりの討伐報酬をもらい、同時にお知らせなどの情報を収集した。
そこには悪魔の塔の記事があった。
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他にもこれまでの悪魔の塔の歴史背景や情報がまとめてあり、写真の掲載こそ無いが、ちょっとした雑誌になっていて、"月刊悪魔の塔"といってもいいくらいの記事の量だ。
特集一に目を通しつつ、レイラに尋ねる。
「ゴーウィンって人は有名なのか?」
「そうね、当時の最上階まで行って悪魔と対峙している数少ないパーティの一つよ。スデン国王が私のために派遣した部隊ではあるんだけど、その人苦手なのよね……」
「ムキムキマッチョな感じ?」
「ふふふ……。まぁそれもあるけど、どうやら私のことを気に入っているらしくてね。会うたび塔で手に入れた宝石類を献上してくるの。そんなのでなびくとでも思っているのかしら」
プレゼントする相手は塔が百階層に達したら、命を奪われてしまう。そんな塔へ冒険者を呼び寄せている宝を渡してもダメだろう。ゴーウィン、ちょっとは考えろよ。
「最近それがエスカレートしてきて、面倒くさいのよ」
「そりゃあ、こんなに綺麗な人だったら、お付き合いしたいって思っちゃうよな~」
「アキトだったら、いつでもOKなんだけど!」と、ぴたっとくっついてきた。
「えっ!?」と、言ったきり何を言っていいのかわからなくなり、言葉を続けられない。レイラはにこにこしながらくっついたままだ。
ドキドキしながらも記事を読み進めていくと、塔最深部へ行ったパーティは過去に六組しかなく、どのパーティも瞬殺で強烈なブレス攻撃で屠られている。他にも九十階層に到達するまでにおよそ十五日かかったと記事には書いてあった。
そんなにかかるのか……。
狭いダンジョン内であれば野営にも気を使わないといけないし、階を進むごとに相手も強くなり、かなりの数のモンスターを倒さなければならない。さらにラスボス悪魔の能力も未知であるのと、同じくらいの階層が地下もある……。うーんどうしよう。
ギルドホールの一角であれこれ考えていると、いかついフルプレートの戦士系十数名がガチャガチャと入ってきて周囲の注目を集めていた。
その中一人で浅黒い屈強な戦士がレイラに声を掛けてきた。
「これはこれは巫女様ではございませんか、こんな所でお会いするなんて珍しい。……さては私をお探しでしたかな?フハハハ!」
レイラはぱっと俺から離れた。
「ゴーウィン殿、今日は所用でギルドに立ち寄っただけですよ」
「左様ですか。お連れの方は……見かけない顔の方ばかりですな」
「弟子のノイリとそのお友達ですよ」
俺の方に寄ってきて握手を求めてきた。
「スデン王国第七狩猟部隊隊長ゴーウィンだ」
分析能力を発動させる。
◇ ◇ ◇
ゴーウィン:レベル62 魔法剣士
198cm 体重94kg
30歳 スデン王国第七狩猟部隊隊長
◇ ◇ ◇
レベルは高いな。さすが最深部まで行ったことのある猛者だ。身体はがっちりしていて俺と比較するとかなりの体格差がある。
「初めまして、冒険者のアキトといいます」
手を出し握手を交わすと金属の籠手で覆われた手は握りつぶすくらいの力で俺の手を握ってきた。
一般人であればイデデデ……と、泣きが入る展開になるのだが、俺の”守り”のステータスではそうはいかない。
ギチギチと音を立てているが握りつぶすことができないでいる。
奴の手は大きく、かろうじて俺の親指と薬指、小指がゴーウィンの手の平をホールドしている。
同じ手を握るのでも女子の手をにぎにぎしたいわー。と、思っていると。迫力ある顔が近づいてきて、さら威嚇してきた。
小声で「小僧、俺の女に手を出すなよ……」と、言ってさらに力を込めてきた。
こういう性格だったら彼女に疎まれているのも分からないだろうな。
「さて、……どうしましょうかね」と、言葉を返しながら、全力で手の平を握り潰す。
メキメキっという二人にしかわからない音がして、同時にゴーウィンの顔が苦痛で歪む。
「あがっ……貴様!!」
咄嗟に手を放し、その場にうずくまる。
「少々力を入れすぎましたね、いやいや申し訳ない」
これで俺の力量を理解してくれたらいいんだが……。治癒魔法を施してやる。
「なっ…」と、小声で驚き、呆然とした表情で俺を見送る。
取り巻きのフルプレートの戦士が行く手を阻もうとするが、ゴーウィンが「やめろ」と、制止した。
「今日のところはこれで失礼させていただきます。巫女様、行きましょうか」
ギルドを出たところでルーミエがゴーウィンを非難する。
「嫌な感じの方でしたわね。……それにしてもアキト、彼の手に何したの?早くてよくわからなかったわ」
「奴が『俺の女に手を出すな』と、言って俺の手を握り潰そうとしたから、逆に潰して、その後に完全に治した」
「完全に治すもそうだけれど、潰せるなんて、この細い腕のどこに力があるのかしら……」
と、ルーミエは俺のチートを不思議がっている。
「やんっ、私のためにありがとう。ア・キ・ト。もうこれで完全にアキトの女なのね……うふふ」と、レイラが俺の腕に絡みつく。
出会った時からだがレイラが俺に積極的な好意を寄せてくれている。俺の女になってもいいなんて、これだけの美人に言われると妄想が止まらない。
楽しい雰囲気のままカムラドネ山側の門を抜けて塔に向かう。上空から見たときには街の近くにあると思ったが、かなりの巨大建造物でもあり、歩いていくと随分と時間がかかった。
材質は石でできているのだが、これだけの高さを積み上げるとなると、元いた世界の技術では到底建造はできない何か魔術的な力が働いているのだろう。巨大な塔は正方形の形をしていて、その一辺は二百メートルくらいはありそうだ。
塔の入り口付近から塔を見上げ、目を凝らしてみると頂上付近がズームされてよく見える。本当に便利な体だな……。
塔の壁には窓がいくつもあり、そこからハーピー、グリフォン、ワイバーンが出たり入ったりしている。空中浮遊からの攻撃対策だろう。箱魔法移動で高層階からの攻略は難しいかな。
ふとレイラの自己紹介の時を思い出し、「れいたん、中はどうなっているか知ってる?」と、聞いてみる。
「うん」と、満面の笑みで答えてくれた。マジ可愛い……。
おや、他の三人の視線が痛いぞ。
「日によってルートが変わるからフロア地図はないんだよ。階によって上層へ行く階段の前に強いモンスターが出現するときもあるんだって」
「ルート変わるのか。フロアボスも出るし難易度あがるな」
「それに上層フロアでは人数制限があるの。人数を絞らないと通り抜けることができないドアがあって、六十五階以上の階では一フロア最大十五人でしか挑めなくなって、前のパーティがいると次のパーティは進むことができないのよ」
クリアするための条件が厳しいものがある。
「私が死んでもノイリに能力が伝達されることは、各国のお偉いさん達は知っているから、今は各国の攻略組はほとんど休止や撤退しているの……」
百階層に到達したら自分の命が奪われてしまう。救ってくれるはずの攻略隊も撤退し始め、宝物目当ての冒険者だけが集まり、徐々に塔が大きくなっていく。
それをずっと見てきたのか……。レイラの頭をよしよしと撫でる。
地上、地下合わせて百八十階層以上はあるダンジョンの攻略。
逃してしまうと危険な状況は変わらない二体の得体のしれない双子悪魔の討伐。
……そして残り時間が僅かなこと。
普通の冒険者であれば無理難題になるのだろうが、俺はその全ての課題を解決できる手段を持っている。
方針は決まった。あんな塔があるからいけないんだ。
「レイラ……。辛い思いをしてきたんだな。今すぐ俺が解放してやるよ」
「えっ!今すぐ?どうやって?」
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