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第1章
第五十六話 決心
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最近はレイラとルーミエとユウキの三人のレベルを上げる目的で一緒にカムラドネ近郊のダンジョンに出かけて、モンスターを倒し、経験値を稼ぐ。現状のレベルはルーミエが40、ユウキが33、レイラが19といった具合だ。
それに最近レイラの動きが良くないように思えた。俺としては嫁や嫁候補に戦力とは考えていないので、できればあまり無理しないでほしいのが本音だ。
しかしカラルだけは別で鍛えたら鍛えた分だけ強くなるのが悪魔族という種族であり、カラルも戦闘能力が上がるのが嬉しいらしい……。
新居での生活も安定し、遠夜見(とおよみ)の巫女の神託もナリヤ以降は出ていない。そろそろルーミエとユウキの国に向かうか……。
そう思い立った翌日の朝食後に、そのことをみんなに話をしたところ、ルーミエが心配してくれる。
「ありがとう、アキト。
アキトがとても強い人ってわかっているんだけれど……。みんなにとってとても大切な人だし……その……ナリヤでも無茶しちゃう人だってことはよくわかっているの。私の故郷でも同じことになっちゃうんじゃないかって思っているの、それに何かあったらレイラにも申し訳ないわ……」
「そんなことにはならないよ。危ないと判断したら逃げること一番に考えているよ、それにあれから俺もだいぶ強くなったんだよ」
そう答えた俺の言葉にユウキは、真剣な表情で念を押す。
「本当に無茶しちゃだめだよ、お兄ちゃん」
「ああ、わかっているよ」
レイラがルーミエとユウキの肩に手を置き、「大丈夫よ」と、うなずく。
「話したくなかったら無理にとは言わないが、二人の故郷で何があったか教えてくれないか?」
ルーミエは少し寂しそうな笑顔で答えてくれた。
「ありがとう、アキト。私たちが見た最後をそのまま伝えるわ」
□
ルーミエとユウキの故郷は島国だ。数百年ほど昔、同一の王家だった。彼女たちの先祖である当時の国王が双子の息子に国土を二分して統治するように命じた。
二人の王子は島の真ん中で国土を分け、それぞれ土地を開拓し、繁栄させた。二つの国は争うこともなく互いに友好な関係を築き、何度か訪れた災害や襲撃にも耐えて平穏に暮らしていた。
ルーミエがアイテムボックスから地図を出す。
「これが私たちの故郷エソルタ島よ」
机の上に広げた、畳半畳ほどあるその地図をみる。その島は不思議なほど真円に近く、神が作りたもうた奇跡の島とさえ言われていたそうだ。
今から五年前。
まずはルーミエの父親が治めるカノユール王国に遠夜見(とおよみ)の巫女から神託を受けた。この世界では異世界からの襲撃を受けることは想定されていて、どこの国でも軍備を整えている。もちろんカノユール王国でも神託を受けた後、抜かりなく対戦に向けての準備はされていた。しかし異世界からの侵略軍はそれをも上回る戦力をもってカノユール軍を圧倒し、王都を制圧した。
数百年の歴史の中で何度も大規模な襲撃を経験し、しのいできたカノユール王国ではあったが、今回の襲撃でも国中の街やユウキの国への増援を求めたが、王都襲撃には間に合わなかった者も多く、英雄的な存在が、圧倒的強さをもつ一騎当千の冒険者や傭兵の集まりが悪かった。……ただそれだけが原因とは考えにくいのだが、結果として王国一の防御力を誇る王都が陥落した。
上空に数えきれないほどの魔法陣が展開されたあと、ルーミエは国王から逃げるように命令された。最初は抵抗したが最終的には、複数の家臣とともに地下にある脱出用ルートから抜け出すことはできた。
国王と共に残った王妃や兄のことも心配だったので、夜が明けるまで炎上する王都を遠くから眺めていたが、形勢が逆転したようにも見えず、空に張り巡らされた、魔法陣は一向に消える気配はない。
応援体制を整えるべく、別の街に向かい臣下の者たちや諸侯の貴族たちと王都奪還作戦を計画するが、王都に魔物があふれ、魔物の軍隊が形成され、街道を通り各都市に送り出されていることを聞いた。
そして数日後ギルド間の通信で各都市の惨劇を知る。王都奪還作戦は棚上げとなり、街をどのように守るのかを検討することとなった。
どの街でも防衛体制を取ったが、あっけなく敵軍勢に飲み込まれていった。
ルーミエは国中を転々とするも、どの街も次々と襲われ、陥落していく。王都での襲撃に防ぐことが出来なかった時点で勝敗が決していたのだろう。王都襲撃以降、魔法陣からはモンスター達が降下し続けていて、その状況を知るために近づくことさえ許されない状況だ。
王国軍も国王という最高権力者と主力軍隊を失くし、統率も取れず敗戦は続く。ルーミエはなす術もなく、イメノア王国に逃げ込んだ。
その時すでにイメノア王国の王都にも神託が出ていた。
エソルタ島の二国がほぼ同時に神託を受けた例はなく、それにカノユール王国への増援をして
軍が分散していることと、街道を通じてイメノア王国のいくつかの街も陥落している状況では敗戦は濃厚だった。
そんな状態であっても暖かくイメノア王国に迎えられたルーミエ一行だったが、ユウキとその家臣数名とイメノア王国を脱出するまでにそう時間は掛からなかった。
ルーミエとユウキはエソルタ島から海を渡り、大陸にたどり着いた。
護衛についていた家臣たちは、海を渡ったあと、国が滅びたことにより仕えるべき王が不在となり、薄情ではあったが二人の王女に別れを告げ、冒険者として、それぞれの人生を歩むことになった。
王女たちは彼らを引き留めることはできなかった。そして自身も冒険者として生きていくことを決めた。
それに最近レイラの動きが良くないように思えた。俺としては嫁や嫁候補に戦力とは考えていないので、できればあまり無理しないでほしいのが本音だ。
しかしカラルだけは別で鍛えたら鍛えた分だけ強くなるのが悪魔族という種族であり、カラルも戦闘能力が上がるのが嬉しいらしい……。
新居での生活も安定し、遠夜見(とおよみ)の巫女の神託もナリヤ以降は出ていない。そろそろルーミエとユウキの国に向かうか……。
そう思い立った翌日の朝食後に、そのことをみんなに話をしたところ、ルーミエが心配してくれる。
「ありがとう、アキト。
アキトがとても強い人ってわかっているんだけれど……。みんなにとってとても大切な人だし……その……ナリヤでも無茶しちゃう人だってことはよくわかっているの。私の故郷でも同じことになっちゃうんじゃないかって思っているの、それに何かあったらレイラにも申し訳ないわ……」
「そんなことにはならないよ。危ないと判断したら逃げること一番に考えているよ、それにあれから俺もだいぶ強くなったんだよ」
そう答えた俺の言葉にユウキは、真剣な表情で念を押す。
「本当に無茶しちゃだめだよ、お兄ちゃん」
「ああ、わかっているよ」
レイラがルーミエとユウキの肩に手を置き、「大丈夫よ」と、うなずく。
「話したくなかったら無理にとは言わないが、二人の故郷で何があったか教えてくれないか?」
ルーミエは少し寂しそうな笑顔で答えてくれた。
「ありがとう、アキト。私たちが見た最後をそのまま伝えるわ」
□
ルーミエとユウキの故郷は島国だ。数百年ほど昔、同一の王家だった。彼女たちの先祖である当時の国王が双子の息子に国土を二分して統治するように命じた。
二人の王子は島の真ん中で国土を分け、それぞれ土地を開拓し、繁栄させた。二つの国は争うこともなく互いに友好な関係を築き、何度か訪れた災害や襲撃にも耐えて平穏に暮らしていた。
ルーミエがアイテムボックスから地図を出す。
「これが私たちの故郷エソルタ島よ」
机の上に広げた、畳半畳ほどあるその地図をみる。その島は不思議なほど真円に近く、神が作りたもうた奇跡の島とさえ言われていたそうだ。
今から五年前。
まずはルーミエの父親が治めるカノユール王国に遠夜見(とおよみ)の巫女から神託を受けた。この世界では異世界からの襲撃を受けることは想定されていて、どこの国でも軍備を整えている。もちろんカノユール王国でも神託を受けた後、抜かりなく対戦に向けての準備はされていた。しかし異世界からの侵略軍はそれをも上回る戦力をもってカノユール軍を圧倒し、王都を制圧した。
数百年の歴史の中で何度も大規模な襲撃を経験し、しのいできたカノユール王国ではあったが、今回の襲撃でも国中の街やユウキの国への増援を求めたが、王都襲撃には間に合わなかった者も多く、英雄的な存在が、圧倒的強さをもつ一騎当千の冒険者や傭兵の集まりが悪かった。……ただそれだけが原因とは考えにくいのだが、結果として王国一の防御力を誇る王都が陥落した。
上空に数えきれないほどの魔法陣が展開されたあと、ルーミエは国王から逃げるように命令された。最初は抵抗したが最終的には、複数の家臣とともに地下にある脱出用ルートから抜け出すことはできた。
国王と共に残った王妃や兄のことも心配だったので、夜が明けるまで炎上する王都を遠くから眺めていたが、形勢が逆転したようにも見えず、空に張り巡らされた、魔法陣は一向に消える気配はない。
応援体制を整えるべく、別の街に向かい臣下の者たちや諸侯の貴族たちと王都奪還作戦を計画するが、王都に魔物があふれ、魔物の軍隊が形成され、街道を通り各都市に送り出されていることを聞いた。
そして数日後ギルド間の通信で各都市の惨劇を知る。王都奪還作戦は棚上げとなり、街をどのように守るのかを検討することとなった。
どの街でも防衛体制を取ったが、あっけなく敵軍勢に飲み込まれていった。
ルーミエは国中を転々とするも、どの街も次々と襲われ、陥落していく。王都での襲撃に防ぐことが出来なかった時点で勝敗が決していたのだろう。王都襲撃以降、魔法陣からはモンスター達が降下し続けていて、その状況を知るために近づくことさえ許されない状況だ。
王国軍も国王という最高権力者と主力軍隊を失くし、統率も取れず敗戦は続く。ルーミエはなす術もなく、イメノア王国に逃げ込んだ。
その時すでにイメノア王国の王都にも神託が出ていた。
エソルタ島の二国がほぼ同時に神託を受けた例はなく、それにカノユール王国への増援をして
軍が分散していることと、街道を通じてイメノア王国のいくつかの街も陥落している状況では敗戦は濃厚だった。
そんな状態であっても暖かくイメノア王国に迎えられたルーミエ一行だったが、ユウキとその家臣数名とイメノア王国を脱出するまでにそう時間は掛からなかった。
ルーミエとユウキはエソルタ島から海を渡り、大陸にたどり着いた。
護衛についていた家臣たちは、海を渡ったあと、国が滅びたことにより仕えるべき王が不在となり、薄情ではあったが二人の王女に別れを告げ、冒険者として、それぞれの人生を歩むことになった。
王女たちは彼らを引き留めることはできなかった。そして自身も冒険者として生きていくことを決めた。
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