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第2章
第130話 移動
しおりを挟む水晶玉は少し黙り込んで考えて
「……ナラバ連レテ行ッテクレルカ」
と言った。カラルの説得が効いたのか、水晶玉は行く気になっているようだ。
「アキト様、いったん外に出る?」
カラルはこのダンジョンを手に入れられる可能性があってテンションが上がっている。
「いや、……ここから第1ダンジョンを目指す」
第1ダンジョンの地上の入り口は、ここから北へかなり移動しなければならないほど遠い。異世界転移魔法を使って街の上空から入り口を目指してもいいのだが、地上に戻ってまたダンジョンを攻略するのは時間が更にかかる。それに第1ダンジョンへ入る時にどこかのカンパニーに記録が残ってしまう。
まずは状況確認だ。
「カラル、手を出して」
カラルは手を前にかざす。俺はその手を組み合うように握り、極私的絶対王国(マイキングダム)を発動させる。地上の方と地中を北に向かって広げていく、3つほどダンジョンを通過して、第1ダンジョンにたどり着く。
戦術管制画面(タクティクスコンソール)展開……。
フラットパネルのような黒い板に、ここから第1ダンジョンまでの地中にあるダンジョンを立体的に映し出す。フレームだけのダンジョン構造を眺めながら、その第1ダンジョンまでの最短ルートを想定する。
この第4ダンジョン83層からとなりの第8ダンジョン79層へ。
そしてダンジョン内を移動して92層から更に第21ダンジョン95層へ、そこから下降して112層目に到達後、第16ダンジョンの118層目を経由してようやく第1ダンジョンの123層にたどり着く予定だ。
ついでに第1ダンジョンのロンダールがいる場所を探索する。冒険者が到達できる階層は223となっていて、地中の深いところまで作られている。
「さすがに大きいな……。ロンダールはどのあたりにいるんだ?」
「知ラナイ」
それもそうか、最下層あたりを探索する。カラルの光魔法で照らさなくても、視認できるの明るさをダンジョン内は保たれているのは、操作するのが魔族だからなのだろうか。最下層には見当たらない。更に地中深くへ極私的絶対王国(マイキングダム)を広げていくと空間を発見する。
部屋の中央には水晶玉が座布団の上に鎮座し、5体の人型のモンスターがくつろぎながら待機している。部屋の隅には棺があり、まだ他にもモンスターが眠っているのだろうか?
ここで再び水晶玉に聞くが、「イナイ」という寂しげな声が返ってきた。
他も探索はしてみたものこの部屋以外はそれらしきところはなかった。
このまま遠隔攻撃でモンスターたちを倒してもいいのだが、情報収集ができなくなる。ここは乗り込んで話をするのが一番だな。
「よーし、移動を開始するぞ。カラルはこのポイントに着いたらダンジョンとダンジョンの間は通路を作ってくれ」
「かしこまりました」
「ダンジョン内は普通の冒険者と同じように移動するから歩きになるけどユウキ、ルーミエいけるか?」
「あたしたち今日は紫毒龍倒しただけで他は何もしていないよ、お兄ちゃん」
確かにさっきまでは剣の手入れして暇そうだったからな。
「それでも通常の冒険者だったら、何日もこのダンジョンに泊まり込んで踏破をしようというのだから、冒険者家業も大変よね」
ルーミエも少し前までの冒険者として、生計を立てていた頃を思い出したのだろうか……。
いくら稼ぎがいいからといって生死をかけてダンジョンに挑むのは精神的にきついということだろう。俺もチートがなければダンジョンなんかに挑まず、田舎でひっそりと暮らしたいって思うだろうな。
でもまだ1日経過しただけだ。通常の冒険者は1か月以上潜ることもざらだと聞く。
「アキト様、第1ダンジョンへの突入ルートは、この水脈を利用してはどうかしら?」
コンソール画面の第1ダンジョン水流を指さした。手前の第16ダンジョンから水脈に入り、水の中を通っていけば第1ダンジョンをコントロールしている奴には気づかれないと言うことだ。
「ありがとう、カラル。その案でいこう」
握っていた手を引き寄せて頭をなでなでする。
箱魔法に乗り込み、カラルがダンジョンを改変して移動して、1つ目の第8ダンジョンに到着した。あたりに冒険者やモンスターがいないことを確認してから、ダンジョン内に入り、ここからは歩いて92層を目指す。
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