チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號

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第2章

第131話 移動2

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第8ダンジョンの中は天井や壁に群生している苔が光り、たいまつなどを持たなくても進むことが可能だ。この苔は人工的に吹き付けているようで、ここも冒険者たちが立ち入ったことのある証拠でもある。

「92層まで降りる。他の冒険者がいなければ、出会った敵はすべて殲滅だ」

「他に冒険者がいたらどうするの?」

「様子見で。相手が苦戦しているようなら助けるし、手出し無用ならそのまま通過だ。走って行くからモンスターをトレインしないように注意しよう。走るペースはルーミエとユウキに任せる。疲れたら言ってくれよ」

「「「りょうかーい」」」

極私的絶対王国(マイキングダム)でフロアをスキャンして、次の層への最短ルートと隠し部屋や宝箱のチェックも行う。前方にいる敵との距離、数、種類を伝えて数が多ければカラルと俺の炎魔法で一掃し、残党をルーミエ、ユウキが切り捨てる。RPGではなくシューティングゲームに近い。

水晶玉は俺が小型の極私的絶対王国(マイキングダム)でいろいろな制限をつけて運んでいる。

「ナンテ速度ダ。コンナノ止メルコトガデキナイ……」

この攻略の速度を目の当たりにして、うろたえている。とはいえここは水晶玉の管理しているダンジョンではないのだが、管理する者としては想像せずにはいられないのだろう……。

「本当にこのスピードは、反則よね。わらわのダンジョンに来てほしくないわ~」

「ソナタモダンジョンヲ管理シテイルノカ?」

「ええ、いまのところ100箇所くらいかしら。ほとんど管理は任せていて、わらわは報告を受けてチェックするだけよ」

「近隣ニソンナニモアルノカ?」

「いいえ、離れたところにあるわね」

「移動ハドウスルノカ?」

「秘密……それを知りたいなら取引ね」

「ソナタノ軍門ニハクダラナイゾ」

「違うわ。その前に確認だけど、あなた召喚(サモン)型よね……。といっても分からないか」

俺も召喚(サモン)型と言われても、わからない。

「あなた、亜空間にモンスターを飼っていて、それを召喚して使役しているのよね?」

「如何ニモ、我ハコノ方法シカ知ラナイ。故ニ知能ガ高イ人型タイプノモンスターヲ使イコナスコトガデキナイ」

「わらわは、受肉(インカネーション)型で、あなたの言う知能の高いタイプを使役することができるのだけれど、どうしても召喚(サモン)型のあのナマの感触に憧れるのよね~」

会話がどうにもマニアックだ。

「――我ト組マナイカ?」

「駄目よ、わらわはすでにアキト様と契約済みよ、……そこで取引なのだけれど、あなたの召喚(サモン)型を分析させてほしいの。見返りに受肉(インカネーション)型をあなたに伝授するの。どう悪くない取引でしょ?」
と微笑えんだ。

「少シ考エサセテクレ……」

そう言うと水晶玉はまた黙り込んでしまった。

□ 

第8ダンジョン89層フロアボス手前の宿場町に到達する。まばらに冒険者たちが行き交うが、人相があまり良くないように感じる。町の雰囲気も何だか暗い。

極私的絶対王国(マイキングダム)で、町の中の会話を収集してみたが、犯罪がらみの話が多い。
町に入ったとたんに俺たちは目をつけられている。

男を殺して女は生け捕りにしろ……。そんなテンプレの声も聞こえてきた。

「この町で休もうと思ったが、このまま通過する」

「フロアボスに挑むの?」

「いや、人の目もあるから、フロアボスは倒さない。目的ポイントの上層階からダンジョン改変能力で一気に目的階層へ降りよう」

このままやり過ごせるのなら、それが一番だと思っていたのだが、この町の奴らはそんな風には思っていないようだ。

町を通り抜けて、来た方角とは違うダンジョンへ向かう。

「おう、待てよ、お前たち!」

野太い声のおっさんが声をかけてくる。振り向くと20数人の小汚い男たちがぞろぞろとこちらに向かってくる。

極私的絶対王国(マイキングダム)展開……。俺たちより後ろを町も含めてすべて覆い『全員気絶しろ』
そう命じるとばたばたと倒れていった。

ダンジョンの弊害といえるべき現象だな。警備力が届かないダンジョン奥深くが、犯罪者のたまり場になる。金さえあれば生活ができしまうのも問題なんだよな。

「カラル、ああいった輩を取り締まることはできないのか?」

「わらわのダンジョンでもよくある話よね。犯罪者たちが潜伏して、普通の冒険者たちを襲ったりするのよ。運が良ければ討伐隊が来てくれるのだけれど、ほとんどが放置している状態よ。……それが原因で悪い噂が流れると冒険者たちの集まりも悪くなるからね頭の痛い話なのよね」

「私たちも、何度も怖い目に遭ったことがあるわ」
女性だけのパーティだとなおさらだろう。ルーミエも俺と出会う前の時代に襲われたそうだが、幸い自分たちよりも弱かったので難を逃れることができたそうだ。

「オ前タチハ、ソンナコトモ考エルノカ……」

「そうよ、殺して追い出すしかなかったんだけれどね、モンスターに襲わせるとピンポイントで狙うのも難しいし、手間がかかるのよね~。……でもね最近いい解決方法ができたの」

「ドウスルノダ?」

「強制送還よ。強制的にダンジョンの外に追い出して、できれば警備兵に引き渡すのよ」

「素晴ラシイ”力”ダナ……我ニハ善悪ノ判断ガナイ。タダ冒険者ヲ呼ビ込ミ、精気ヲ吸イ出スタメダケノ仕組ミヲ提供スル。ダンジョンヲヨリ良イモノスルノモ、ダンジョンマスターノ努メトイウモノナノカ……」

水晶玉はつぶやくように言った。
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