自己顕示欲の強い妹にプロデュースされる事になりました

白石マサル

文字の大きさ
89 / 167
第七章~ヒメゴト~

変貌

しおりを挟む
 沙月の顔がどんどん近づいてくる。
 女の子特有の甘い匂いが鼻孔を通り脳を刺激する。

 もう吐息が掛かる距離まで近づいてきている。
 沙月のプルッとした唇が開き

「友也さん……付き合ってください」

 熱を帯びたその言葉で我に返る。
 
 雰囲気に流されちゃダメだ!

「沙月! やめろ!」

 沙月の両肩を掴み突き放す。
 しかし、突き放した事ではだけたブラウスから覗く程良い大きさの胸が露わになる。

「あん、友也さんのえっち……」
「わ、わざとじゃないんだ! 早くどけてくれ!」

 沙月ははだけた胸を隠そうともせずに

「なら答えてください、私と付き合ってくれますか?」

 潤んだ瞳に熱の籠った視線。
 つい見惚れてしまいそうになるが

「ごめん、沙月とは付き合えない」
「どうしてもですか?」
「……ああ」

 俺の返事を聞き、俯く。
 
 めぐの時に感じた痛みをまた感じている。
 だけど、この痛みから逃げる訳にはいかない。

 しばらく俯いていた沙月はおもむろに空を見上げ「はぁ~っ」と息を吐いた後

「此処までして落ちないなんて初めてですよ」

 と言いながら俺の上から降りる。
 続けてブラウスのボタンを留めながら

「やっぱり友也さんは今までの男達とは違いますね」

 と言う。
 言っている意味が分からない。

「どういう事だ?」

 俺の問に沙月は薄い笑みを浮かべながら

「私って、男を自分の虜にするのが快感だったんですよね。それで色々な手を使って男達を落としてきました。皆私をお姫様みたいに扱ってくれるんですよ」

 それでバイトの先輩から聞いた噂が流れたのか。

「それじゃあ今まで俺を落とす為に色々やってきたって事か」
「まぁ、そうですね。でもそれは最初だけです」
「それはどういう意味だ?」
「今までは沢山の男を私の虜にする事が快感だったんです。だけど友也さんは違うんですよね。私自身が誰かの物になりたいと思ったんです。そう思えたのは友也さんが初めてです」

 そこまで一気に言うと、一呼吸置いて

「だから私を友也さんの物にしてください」

 これは今まで遊びで付き合ってきたけど、俺は遊びじゃなく本気になったという事か。

 友華さんとは違った、これは沙月の初恋なのだろう。
 だからこそ真剣に答えなくてはならない。

「ごめん、やっぱり沙月とは付き合えない。」

 そう言って、沙月から貰ったネックレスを沙月に手渡す。

「やっぱり無理だったかー。そんなに新島さんと水瀬さんが良いんですか?」
「なっ!? どうしてその事しってるんだ?」
「実は柚希ちゃんから大まかな事は聞いてたんですよ」

 なんてこった。
 柚希の口はどれだけ軽いんだ。

「でも友也さんもそんな事で悩む必要無いのに」
「そんな事だと?」
「そうですよ。二人が好きなら二人と付き合えばいいじゃないですか」
「そんな事出来る訳ないだろ! 二人に対して不誠実過ぎる!」
「でも~、二人の気持ちを知りながらそれに答えないのも不誠実だと思いませんか~?」

 それを言われると何も言い返せない。
 楓と南に対しては完全に俺の我儘だ。

「聞いたんですけど、柚希ちゃんの計画ではハーレムっていうか、友也さんの事を好きな女子で囲いたいみたいなんですよね」
「アイツまだそんな事企んでたのか」
「だから私はその中の一番になろうと思うんです」

 そう言って勢いよく俺に抱き付いてきた。

「一回振られた位じゃ諦めませんよ」

 そう耳元で囁くと

「それに、このネックレスは私からの首輪の代わりです。勝手に外すなんて許しません」
「っ! いつの間に」

 先ほど沙月に返したネックレスがいつの間にか付けられていた。

 沙月は俺から離れ、満面の笑みで

「諦めませんからね、覚悟しといてください!」

 と言って走っていってしまった。

 残された俺は、ネックレスを触りながら

「はぁ、とんでもない子に好かれたな」

 と、独り言ちて帰路に就いた。


 その日の会議で柚希を問い詰めると

「色んな女の子に囲まれてる方がイケてるじゃん!」

 と柚希は言い切った。

「あのな、そんな事が許されるのはマンガやアニメの中だけだって言わなかったか?」
「でも私の勘だとイケると思うんだよな~」
「勘で俺の学校生活を無茶苦茶にする気か?」

 折角努力して此処までやってきたのに柚希の勘で壊されたんじゃ堪らない。
 そう考えていると

「はぁ~、私がそんな事になるようなことさせる訳ないでしょ?」
「でも現に沙月に色々吹き込んでるだろ?」
「それは沙月ちゃんが私と同じような考えを持ってたからだよ」
「沙月が?」
「付き合えなくても傍に居たいって言ってたしね。多分新島先輩や水瀬先輩もそうなんじゃないかな?」
「沙月はともかく、楓と南は違うと思うぞ」
「その辺は私の勘だからね~」
「あっそ。だけど楓と南にはちゃんと答えは出すからな!」

 こうして会議は終了した。

 部屋に戻るとスマホの着信音が鳴った。
 表示画面をみると

 桐谷友華

 と表示されていた。
 俺は慌てて通話をタップする。

「もしもし」
「あ、もしもし友華です。夜分遅くにごめんなさい」
「大丈夫ですよ、どうしたんですか?」
「あの、急で申し訳ないのですが、明日会えませんか?」
「明日ですか?」
「あ! 宿題とか残ってたりしますか? でしたら別の日でも構いません」
「いえ、宿題はもう終わってるので問題ないです。いいですよ、明日会いましょう」
「ありがとうございます。そうしたら……」

 友華さんとの通話を終え、考える。
 
 友華さんの初恋にもケジメをつけないとな。

 俺は二人を変える事はできたのだろうか?
 そんな事を考えながら眠りに就いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜

みおな
恋愛
 転生したら、乙女ゲームのモブ令嬢でした。って、どれだけラノベの世界なの?  だけど、ありがたいことに悪役令嬢でもヒロインでもなく、完全なモブ!!  これは離れたところから、乙女ゲームの展開を楽しもうと思っていたのに、どうして私が巻き込まれるの?  私ってモブですよね? さて、選択です。悪役令嬢ルート?ヒロインルート?

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

処理中です...