異世界転生して最強召還師になったけど現世に帰ってきた女子高生ですが何か？

74話 身体の芯が熱い

「ふぅ…」


私はトイレットペーパーを大目に取り、あそこを拭いた。

おしっこ、いっぱい拭いておかないとね…。


「はぁん…。ふぅん…」


ただ、用を足して拭いているだけなのに、身体の芯が熱い…。


今日出会ったばかりの好きな人のことを考えてしまって、身体が火照っているのだ。


恥ずかしさと愛おしさが合わさって変な気分だった…。結構な時間トイレにいてしまった。


翼さん、待ってるだろうから早く出よう…。


私は、お気に入りの漆黒の下着を穿き直して、トイレを出ることにした。

トイレのドアを開け、店内に戻った。



翼さんはいつのまにか、カウンター席に腰掛け、待っていた。

何やら憂鬱そうなアンニュイな表情をしている。


とても長い睫毛と涼しげな切れ長の瞼。

そして、髪の毛と同じ、栗色の瞳。


ウェーブのかかった栗色の髪の毛は、腰までかかっている。

はぁ、いつ見ても綺麗。


肌も色白なので、遠目で見たら人形に見えるかもしれない。

それぐらい人間離れした美貌だった。



「翼さん、すみません。お待たせしました…」

私は翼さんに声をかけた。


「結構かかったわね。おしっこいっぱい出た？」

翼さんにそうストレートに言われ、私は顔が真っ赤になってしまった。


「はい…。いっぱい出ました…」

私は恥ずかし過ぎて、ものすごい小声で言った。


「それで、おしっこしてたら、なんか声が出ちゃった…？」

え？え？え？なんでそれを知ってるの！？


「ご、ごめんなさい！外まで声漏れてました？」


思わず素直に謝ってしまった。

もう少し誤魔化せばよかったかな？


「あ、あのクビにしないでください！嫌いにならないでください！」

私はまだ働いてもいないのに、そんな懇願をしていた。



翼さんはそれまでアンニュイな表情をしていたが、いきなり笑い出した。


「ふふふ、うちのおトイレは防犯上の理由でカメラがついてるの」

えぇ？防犯カメラがついてるってこと！？そんな…。


「トイレの前に張り紙があったはずだけど…」


聞けばこの店ではないが、最近東京ではトイレで悪さをする輩が増えているのだという。


「ダメよ、おトイレで1人でつぶやいたりしたら。話すときははお姉さんが一緒にいてあげるから…」


翼さんは長い睫毛を伏せながら、こちらをジッと見つめながら言うのだった。

私はもっと恥ずかしくなり、耐えられなくて、うつむいてしまう…。


「とりあえず、今のトイレの映像は処分しておくわね」


うふふ、と翼さんはいたずらっぽく微笑んだ…。

その笑顔が美しくて眩しくて、私はますます翼さんのことが大好きになってしまうのだった。