伝説の勇者が闇堕ちした日に、ポンコツは爆誕する

空木卯々

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第一部一章二話

特殊依頼をこなして①

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◇◇◇◇◇


再びギルド窓口にて…



「リーンさん、あれから術…
使えるようになりました?」

顔をやや引き攣らせながら、
ギルド職員はにこやかに質問する。
彼女がこの町へやって来てから
三か月くらいか…

未だに誰も彼女が術を放つところを
目撃した事がない。

「ふむ…術は使えぬ。一つもな」

…と、また同じ返答の彼女。

「え…と、すると…もしかして、
術者でなくて…
物理職でしたか?
杖使って物理攻撃する…
あ!物理系モンク(戦僧)とか?」


「いや?術職だが?」


「…………」


彼女の妙に貫禄のある、
落ち着いた雰囲気に
呑まれそうになりながらも、
ギルド職員は頭をフル回転させて
解を出そうとする。

「な、なるほど…
術者見習いでも…才能によっては半年以上術を習得できない者も稀にいると言いますし…
ま、まぁまぁまぁ…
今後も精進してくださいね?」

と、ギルド職員は苦笑いで精神の平静を保つ。
一旦、深追いは危険だ。

普通、どう考えても術者としての才能がない。
並の才覚くらいあれば、
半年間ほど修行積めば、
少しは術は使えるようになるのだ。

これだけ!稀有なほど!魔力が無いのに!

よく術者志望などしたものだ…

ギルド職員は心の中で
頭を掻きむしりたくなるのだった。

とはいえ…人間離れした、
もしくは人形のような精緻で
美しい少女の顔に見つめられると、
これ以上厳しい事は言えなくなってしまい…
ギルド職員は目を泳がせながら
次の標的、
少女の隣に佇むデブ…
もとい、剣士を軽く睨みながら口を開いた。

「それで…剣士職のイル君?
もう数ヶ月以上…
剣の修行はしてるようだけど
…その、まだ鼠も倒せない…感じかな?」

「はい!奴らすばしこくて…
でも!!僕の姿を見て下さい!
この半年で痩せたんですよ!
(ほんのちょっとだけ)
これが修行の賜物です!」


確かにこの数ヶ月間で多少は変わった。
脂肪に圧迫されて滑舌がキモかったのが
改善してる。うん、
巨デブから小デブくらいには…?

横幅は少しは縮んだが…
しかし、縦幅…身長は依然縮んでるままだが?
そこらの町娘より全然小さい。
なのに顔は町娘より二倍はデカい。
びっくりするほど短足だし。
なんなら三頭身くらいだぞ⁉︎
あれ?彼はドワーフ族?
いや!
ドワーフ族はあれで均整が取れている。
何より肉体美が段違いだ。 

うん、ドワーフ族に失礼だな!!

ギルド職員の頭の中は
カオス状態だったが、
なんとか理性をフル活動し、
冷静さをギリ保つ。

「ま、まぁ…確かに痩せたね!少しだけね!
まだ贅肉多いけど…この調子で痩せて、
ついでに、いい加減
筋肉も付けようね?ハハハ」




「でも…これ以上美しくなってしまったら… 
女の子にモテ過ぎて
僕は罪にならないでしょうか…?でゅふふ」


「、、、、、」

ギルド職員の見下しにも気付かず、
イルは自己陶酔。


そんなイルにリーンが一言…小声で圧をかける。


『イル…キサマ、転生してから、
品性まで欠落してしまったようだな?
…仕置きが必要かもしれぬ…』

そう言って、リーンは杖を握りしめる。
周囲の冷たい視線と、
和やかではない雰囲気に
イルは我に返り、青ざめるのだった。



◇◇◇◇◇


(第二話特殊依頼をこなして②へ続く)


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