伝説の勇者が闇堕ちした日に、ポンコツは爆誕する

空木卯々

文字の大きさ
19 / 85
第四話

下水道探索②

しおりを挟む

◇◇◇◇◇


「う、…わぁ…なぁんか
何か…嫌な感じの下水道だなぁ」

ギルド職員の厚意で
ランタンを支給して貰い、
小さなランタンの、
心元ない光源を唯一の頼りに、
イルが先頭に立ち、
下水道の入り口と対面する。

入り口は、年月の影響で
朽ちかけ、鉄製の入り口は
錆が浮かび、今にも崩れてしまいそうな
頼りなさがある。

何より、イルが躊躇するのは…
入り口から漂う、カビ臭さと
湿気だ。

鼻を摘み、不快感をあらわすイルを
横に、リーンは口を開く。

「…なんでも、
昔は罪人の地下牢でもあったみたいだな…
そのままネズミに喰われて
亡くなる罪人も多かった…とか」

「いやぁ!や、やめてくれよう!
これから僕達入らなきゃいけないのに!」

当然、イルはそんな情報など
ありがた迷惑で…
リーンの話しを遮るように非難するが…

「割と頻繁に、笑い声やすすり泣く声とか…
この下水道から聞こえるんだと…
町の者が話してくれたぞ」

むしろ…
リーンはイルの反応を見て、
面白がっているのかもしれない。

「ちょ…ね、ねぇ僕達…
ただのネズミ駆除の依頼だよね?
幽霊退治の依頼じゃないよね⁈」

面白いように喰いつき
騒ぎまくるイル。
冒険者にあるまじき怯えようの
イルの…ランタンを持つ手が、
微かに震えている。

「そうだな。
幽霊退治は聖職者がいないと
対処が難しい、
冒険依頼レベルも高めの案件だろう」

「幽霊出たら…ど、どどうしよう?」

「逃げれば…依頼失敗になってしまうなぁ?」

怯えまくるイルとは対照的に
リーンは顔色ひとつ変えずに
淡々と言ってのける。
…実はイル、前世の頃から 
霊の類だけは苦手だった。
理由は"剣で切り倒せないから"らしいが…

そんな情け無い、
へっ放り腰の
イルを横目に見ながら、
ほんの少し愉快になるリーンだったが…

下水道で注意しなければならない事は
まだまだある…
病原菌を保有してる可能性のある汚水。
下水に蠢く虫類や、凶暴なネズミ…
吸血コウモリ等に攻撃されて
傷を負ってしまえば、深刻である。

解毒の薬は高価だし、
万一、感染症が体全体を回ってしまえば、
薬では効果が薄く…
高位聖者(僧侶や賢者)に術で
治癒をして貰うしかないが…

術料は薬の比でなく
更に高額だ。

そもそも…この町に聖者が駐在してるかさえ
定かではない。

だからこそ今の我々は、
最大限の注意を払い
依頼をこなさなければならない。

今までの"特殊依頼"より、
難易度が上がったと言えるだろう。
その意味でも…
我らはギルドに試されているのだ。

失敗すれば、即追放…

リーンは気持ちを引き締め
杖をしっかり身構え直し
イルに下水道潜入を促す。


◇◇◇◇◇


(第四話③へ続く)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...