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四章〜(一)
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四
この職場は、社長が黒を白だと言えば白になる…周囲もそれに習うのだから、曲学阿世の徒のすることは本当にえげつない…。
現場での効率化を図るなどの理由から、一人に割り当てられる仕事量が格段に増えた。
人手は足りず余裕があるわけでもない……それなのに社長の一声で残業はなし、効率をあげろ、無駄を省け!との無理難題。
それに対して誰も何も言わないのか…とため息がでる。
他に改善策を考えて欲しいものだ。
せめて逼迫した現場の声を聞いてもらいたい!
「社長に意見する勇気ある上役はいないんですかね!」
グイッと一杯、ビールを煽ると基希は愚痴を零した。
「そんな上役はいない」
そう答えた山下大輔は社長の第一秘書で、基希の社員研修でリーダーを務めた人だ。
本来なら山下は研修には参加しないそうなのだが、人手不足から〝お前が行け〟と社長の鶴の一声で駆り出されたのだそう……。
本人も不本意ではあっただろうが、おかげでいい出会いを果たせた。
山下は基希の懐かしい恩師を思わせ、話しているとなんだか落ち着く。
教師とも友人とも違うが、いい先輩だ。
〝もし秘書になりたいなら口添えする〟と言ってもらったが、あの傲岸不遜な社長の元で四六時中仕えるなど、自分には無理だと思った。
でもそのことがきっかけでよく話すようになり、呑みに行くことも度々ある。
職場での山下は感情が殆んど顔に出ないから分かりにくいが、素の山下は実に愉快な人だ。
見た目だけで言うなら、お洒落なバーカウンターで一杯やっていそうな男に見える。
でも実際には庶民的でそれ程お酒も強くないし、酔うと奥さんの惚気話になって隣に座る知らないおじさんにまで写真を見せまくる……。
ついには〝奥さん可愛いいね〟の一言を聞くまで…否、言わせるまで離さないという……なんとも酒癖の良い人である。
ー愛妻家なのはいいけど、そんなに好きなら真っ直ぐ帰ればいいのに…。
山下を知る人なら恐らく全員が口を揃えてそう言うだろう。
本人曰く「仕事のストレスを家庭に持ち込みたくない」からなのだそうだ。
そして今日も社長は見かけないのに、秘書の山下だけが仕事をしているような光景を目にしている。
何ともアンバランスな社長と秘書との関係性に先行きの不安を感じる。
「山下さん!俺、彼女できました!」
今日はこの話をしたくてずっとウズウズしてた!
世界中の人に言いたい!
ー玲子は俺の女だーー!
だがこんなことを叫ぶわけにもいかないので、せめて知っている人達にくらいは自慢したかったわけだ。
「だろうと思った」
「え!何でわかるんですか!」
「ははっ、わかるよ。お前楽しそうだもん」
ーそうなのか、相当浮かれてたんだな…気をつけよう。
「でもこの前、彼女が社長の家のホームパーティーに呼ばれて一緒に行ったんですけど、何とも如何わしい雰囲気が漂っていて……」
「それって先週の金曜日?」
「はい」
「それは気の毒に…呼ばれたって事は、目をつけられたって事になるな……気をつけろよ」
山下は意味深な笑みを見せる。
いったい何を気をつけろって言うんだ。
「確かにあの時は強引に玲子を連れて行こうとしたから、ちょっと威嚇しましたけど…そんなにヤバいですか?」
「うん、ヤバい。下手すりゃ既成事実を盾に別れさせられる」
「何だそれ!」
いきなり現れて基希と玲子の間に割って入り、あまつさえ別れさせようなどと冗談では済まされない。
「とにかくだ、関わるなって彼女さんにも重々言っとかないと、取り返しがつかなくなるぞ。パーティーにも二度と行かないことだ」
山下が警告してくるくらいだ…これは脅しでも何でもない。
きっと前にも同じような事があったのだろう…あの社長ならあり得る。
なんて恐ろしい男なのだろう。
既成事実を作る…って事は、玲子が襲われるかもしれない、と言っているのか…。
別に山下に腹を立てているわけではないが、この一言から様々な事を想像させられて胸くそ悪い!
「ありがとうございます、山下さん。気をつけます」
今はこれか精一杯だ。今後の対応を考えなくては怖くてとても眠れない。
「まぁ、できる事があれば協力するよ」
山下はそう言うと基希のグラスにビールを注いだ。
◆
「ワンワンワン!ワン!」
(れいこ、あいつが来たのよ、あたし追い払ってやったわ!)
「ロミ~ただいま!疲れたよぉ…」
今日も一日頑張った!
基希と結ばれてからというもの、仕事が楽しくて仕方ない。
晴れ渡る空のように清々しく、心は弾み、そして会いたい。
夢のような熱い夜を過ごしてからまだ数日しか経っていないからか、考えるだけで体が火照ってくる。
ー基希さんもそろそろ帰る頃かしら…
ロミと共にリビングに向かうと母が満面の笑みで出迎えた。
「玲子、あなたって人は!お付き合いしてる人がいるならそうおっしゃい!新垣さんのお父様がわざわざご挨拶にいらしてくれたのよ!社長さんなんですって?すごいじゃない!」
「新垣…?」
ーまさか……!
「そうよ新垣さん!まぁ、ちょっと横柄な社長さんだったけど、付き合ってるのは息子さんの方だものね」
何も知らない母は嬉しそうに声を弾ませた。
「待って、新垣さんとは付き合ってないわよ!私には彼氏がいるんだから!」
半分怒鳴り口調で言ったが、母はあっけらかんとしている。
だいたい娘から聞いたことのない男を家に上げないでほしい!
「そうなの?でも結婚も決まってるから、また改めてご挨拶に来ます…って言ってたわよ」
「冗談じゃないわ、支配人にだって他に恋人がいるのよ!っていうか何で家にまで来るのよ!」
「そんな事お母さん知らないけど、じゃあ、どんな関係なのよ…」
そんなのはこっちが聞きたい!強いて言うなら、ただの知り合いだ。
支配人が何か言ってくるならまだしも、たいした接点もない社長が家にまで来るなんて異常だ。
「支配人は会社の上司で、社長は支配人のお父さん!それだけよ!もう、何なの!基希さんに話さなくちゃ!」
「基希さんって誰?」
「付き合ってる彼よ」
「そうなの?じゃあ今度連れてらっしゃいな」
「考えとく」
玲子は部屋に入るなり直ぐ様基希に電話をかけ、事の顛末を話して聞かせた。
自分が居ない間に自宅に上がり込んで母と対面し、事もあろうか結婚が決まっているなどとのたまうなど、正気の沙汰とは思えない!
「わかった、社長の事はこれからも情報共有しよう。それからどんなに誘われても絶対に行っては駄目だよ。約束して」
基希は至って冷静だ。
こんな時、玲子だけではまともな判断ができなかったと思う。
いろいろ考え過ぎるあまり、何が正しいのか迷いが生じて不安になり、それが更に不安を呼ぶ……つまり悪循環になるのだ。
前世では話すだけ無駄な環境に身を置いていたが、基希と出会ってからは全て聞いてもらっていた。
彼はいつだって真剣に玲子の話に耳を傾け、不安を和らげてくれる。
それは現世でも変わらない、
「わかったわ、絶対行かない!」
「それから、今度ご両親にご挨拶に伺いたい。一番早くて……明後日の夜はどう?」
「明後日!?えっと、聞いてみる!」
「ありがとう、愛してるよ」
「うん…私も」
さっきまでは新垣社長の思わぬ行動に痛憤していたが、基希の声を聞いたら少し落ち着いた。
玲子にとって基希はもうなくてはならない精神安定剤となっている。
それにしたって彼が両親に挨拶という急展開は、足下から鳥が立つというもの。
何の準備をすれば良いのか、こちらも考えなくてはならない。
漠然とだが、忙しくなる予感がする。
「ワンワン!」
さっきからロミが落ち着かない。
玲子が動揺してたから、それを敏感に感じ取ったのかもしれない。
「ワンワン!ワンワン!」
(あの男、れいこにまた酷いことするつもりよ!逃げましょう!)
「ロミどうしたの?お腹空いてるの?」
「ワン!ワン!」
(違うわよ、逃げなくちゃ!)
ロミはクルクル回り、ウロウロし始めた。
「どうしたのよロミ…」
「グルル…っ…」
ロミは唸りながらベッドに飛び乗ると、枕を前足でホリホリ掘り始めた。
「ワンワン!ワンワン!」
(逃げるのが怖いならここに隠れればいいわ!さ、入って!あたしが護ってあげる!)
「何~ロミ、もう寝なさいって?ありがとう、優しいのね」
ロミの頭を撫でる玲子に言葉は通じない。
それでもロミは今度こそ、命を賭けて護ると決めていた。
「グルル……」
(れいこに何かしたら許さないから!)
ロミにとっても忙しい年の瀬になりそうな予感がした。
◆
「は?今から出張ですか?何で俺が?」
頭に浮かぶクエスチョンマークが止まらない。
「ああ、何でも札幌の視察を頼みたいとかなんとか…俺にもよくわからんけど、モニターとして行ってこいって事らしいから、楽しんできたらいいじゃないか」
基希に突然の出張命令……何かがおかしい。
このホテルに入社してからこんなことは初めてだ。
新垣社長が何かを企んでいる…根拠はないが、そうとしか思えない。
基希と玲子を一時的に引き離して、また押し掛けるつもりなのか……
何を仕掛けてくるのかは不明だが、玲子には厳戒態勢をとってもらわなくてはならない。
仕事を休む…という事もできないことはないが、今回が駄目ならまた次々と仕掛けてくるだろう。
今は相手の策に乗るしかなさそうだ。
「わかりました……」
気乗りしない返事を返してその場を後にした。
四章~(二)へ続く……
この職場は、社長が黒を白だと言えば白になる…周囲もそれに習うのだから、曲学阿世の徒のすることは本当にえげつない…。
現場での効率化を図るなどの理由から、一人に割り当てられる仕事量が格段に増えた。
人手は足りず余裕があるわけでもない……それなのに社長の一声で残業はなし、効率をあげろ、無駄を省け!との無理難題。
それに対して誰も何も言わないのか…とため息がでる。
他に改善策を考えて欲しいものだ。
せめて逼迫した現場の声を聞いてもらいたい!
「社長に意見する勇気ある上役はいないんですかね!」
グイッと一杯、ビールを煽ると基希は愚痴を零した。
「そんな上役はいない」
そう答えた山下大輔は社長の第一秘書で、基希の社員研修でリーダーを務めた人だ。
本来なら山下は研修には参加しないそうなのだが、人手不足から〝お前が行け〟と社長の鶴の一声で駆り出されたのだそう……。
本人も不本意ではあっただろうが、おかげでいい出会いを果たせた。
山下は基希の懐かしい恩師を思わせ、話しているとなんだか落ち着く。
教師とも友人とも違うが、いい先輩だ。
〝もし秘書になりたいなら口添えする〟と言ってもらったが、あの傲岸不遜な社長の元で四六時中仕えるなど、自分には無理だと思った。
でもそのことがきっかけでよく話すようになり、呑みに行くことも度々ある。
職場での山下は感情が殆んど顔に出ないから分かりにくいが、素の山下は実に愉快な人だ。
見た目だけで言うなら、お洒落なバーカウンターで一杯やっていそうな男に見える。
でも実際には庶民的でそれ程お酒も強くないし、酔うと奥さんの惚気話になって隣に座る知らないおじさんにまで写真を見せまくる……。
ついには〝奥さん可愛いいね〟の一言を聞くまで…否、言わせるまで離さないという……なんとも酒癖の良い人である。
ー愛妻家なのはいいけど、そんなに好きなら真っ直ぐ帰ればいいのに…。
山下を知る人なら恐らく全員が口を揃えてそう言うだろう。
本人曰く「仕事のストレスを家庭に持ち込みたくない」からなのだそうだ。
そして今日も社長は見かけないのに、秘書の山下だけが仕事をしているような光景を目にしている。
何ともアンバランスな社長と秘書との関係性に先行きの不安を感じる。
「山下さん!俺、彼女できました!」
今日はこの話をしたくてずっとウズウズしてた!
世界中の人に言いたい!
ー玲子は俺の女だーー!
だがこんなことを叫ぶわけにもいかないので、せめて知っている人達にくらいは自慢したかったわけだ。
「だろうと思った」
「え!何でわかるんですか!」
「ははっ、わかるよ。お前楽しそうだもん」
ーそうなのか、相当浮かれてたんだな…気をつけよう。
「でもこの前、彼女が社長の家のホームパーティーに呼ばれて一緒に行ったんですけど、何とも如何わしい雰囲気が漂っていて……」
「それって先週の金曜日?」
「はい」
「それは気の毒に…呼ばれたって事は、目をつけられたって事になるな……気をつけろよ」
山下は意味深な笑みを見せる。
いったい何を気をつけろって言うんだ。
「確かにあの時は強引に玲子を連れて行こうとしたから、ちょっと威嚇しましたけど…そんなにヤバいですか?」
「うん、ヤバい。下手すりゃ既成事実を盾に別れさせられる」
「何だそれ!」
いきなり現れて基希と玲子の間に割って入り、あまつさえ別れさせようなどと冗談では済まされない。
「とにかくだ、関わるなって彼女さんにも重々言っとかないと、取り返しがつかなくなるぞ。パーティーにも二度と行かないことだ」
山下が警告してくるくらいだ…これは脅しでも何でもない。
きっと前にも同じような事があったのだろう…あの社長ならあり得る。
なんて恐ろしい男なのだろう。
既成事実を作る…って事は、玲子が襲われるかもしれない、と言っているのか…。
別に山下に腹を立てているわけではないが、この一言から様々な事を想像させられて胸くそ悪い!
「ありがとうございます、山下さん。気をつけます」
今はこれか精一杯だ。今後の対応を考えなくては怖くてとても眠れない。
「まぁ、できる事があれば協力するよ」
山下はそう言うと基希のグラスにビールを注いだ。
◆
「ワンワンワン!ワン!」
(れいこ、あいつが来たのよ、あたし追い払ってやったわ!)
「ロミ~ただいま!疲れたよぉ…」
今日も一日頑張った!
基希と結ばれてからというもの、仕事が楽しくて仕方ない。
晴れ渡る空のように清々しく、心は弾み、そして会いたい。
夢のような熱い夜を過ごしてからまだ数日しか経っていないからか、考えるだけで体が火照ってくる。
ー基希さんもそろそろ帰る頃かしら…
ロミと共にリビングに向かうと母が満面の笑みで出迎えた。
「玲子、あなたって人は!お付き合いしてる人がいるならそうおっしゃい!新垣さんのお父様がわざわざご挨拶にいらしてくれたのよ!社長さんなんですって?すごいじゃない!」
「新垣…?」
ーまさか……!
「そうよ新垣さん!まぁ、ちょっと横柄な社長さんだったけど、付き合ってるのは息子さんの方だものね」
何も知らない母は嬉しそうに声を弾ませた。
「待って、新垣さんとは付き合ってないわよ!私には彼氏がいるんだから!」
半分怒鳴り口調で言ったが、母はあっけらかんとしている。
だいたい娘から聞いたことのない男を家に上げないでほしい!
「そうなの?でも結婚も決まってるから、また改めてご挨拶に来ます…って言ってたわよ」
「冗談じゃないわ、支配人にだって他に恋人がいるのよ!っていうか何で家にまで来るのよ!」
「そんな事お母さん知らないけど、じゃあ、どんな関係なのよ…」
そんなのはこっちが聞きたい!強いて言うなら、ただの知り合いだ。
支配人が何か言ってくるならまだしも、たいした接点もない社長が家にまで来るなんて異常だ。
「支配人は会社の上司で、社長は支配人のお父さん!それだけよ!もう、何なの!基希さんに話さなくちゃ!」
「基希さんって誰?」
「付き合ってる彼よ」
「そうなの?じゃあ今度連れてらっしゃいな」
「考えとく」
玲子は部屋に入るなり直ぐ様基希に電話をかけ、事の顛末を話して聞かせた。
自分が居ない間に自宅に上がり込んで母と対面し、事もあろうか結婚が決まっているなどとのたまうなど、正気の沙汰とは思えない!
「わかった、社長の事はこれからも情報共有しよう。それからどんなに誘われても絶対に行っては駄目だよ。約束して」
基希は至って冷静だ。
こんな時、玲子だけではまともな判断ができなかったと思う。
いろいろ考え過ぎるあまり、何が正しいのか迷いが生じて不安になり、それが更に不安を呼ぶ……つまり悪循環になるのだ。
前世では話すだけ無駄な環境に身を置いていたが、基希と出会ってからは全て聞いてもらっていた。
彼はいつだって真剣に玲子の話に耳を傾け、不安を和らげてくれる。
それは現世でも変わらない、
「わかったわ、絶対行かない!」
「それから、今度ご両親にご挨拶に伺いたい。一番早くて……明後日の夜はどう?」
「明後日!?えっと、聞いてみる!」
「ありがとう、愛してるよ」
「うん…私も」
さっきまでは新垣社長の思わぬ行動に痛憤していたが、基希の声を聞いたら少し落ち着いた。
玲子にとって基希はもうなくてはならない精神安定剤となっている。
それにしたって彼が両親に挨拶という急展開は、足下から鳥が立つというもの。
何の準備をすれば良いのか、こちらも考えなくてはならない。
漠然とだが、忙しくなる予感がする。
「ワンワン!」
さっきからロミが落ち着かない。
玲子が動揺してたから、それを敏感に感じ取ったのかもしれない。
「ワンワン!ワンワン!」
(あの男、れいこにまた酷いことするつもりよ!逃げましょう!)
「ロミどうしたの?お腹空いてるの?」
「ワン!ワン!」
(違うわよ、逃げなくちゃ!)
ロミはクルクル回り、ウロウロし始めた。
「どうしたのよロミ…」
「グルル…っ…」
ロミは唸りながらベッドに飛び乗ると、枕を前足でホリホリ掘り始めた。
「ワンワン!ワンワン!」
(逃げるのが怖いならここに隠れればいいわ!さ、入って!あたしが護ってあげる!)
「何~ロミ、もう寝なさいって?ありがとう、優しいのね」
ロミの頭を撫でる玲子に言葉は通じない。
それでもロミは今度こそ、命を賭けて護ると決めていた。
「グルル……」
(れいこに何かしたら許さないから!)
ロミにとっても忙しい年の瀬になりそうな予感がした。
◆
「は?今から出張ですか?何で俺が?」
頭に浮かぶクエスチョンマークが止まらない。
「ああ、何でも札幌の視察を頼みたいとかなんとか…俺にもよくわからんけど、モニターとして行ってこいって事らしいから、楽しんできたらいいじゃないか」
基希に突然の出張命令……何かがおかしい。
このホテルに入社してからこんなことは初めてだ。
新垣社長が何かを企んでいる…根拠はないが、そうとしか思えない。
基希と玲子を一時的に引き離して、また押し掛けるつもりなのか……
何を仕掛けてくるのかは不明だが、玲子には厳戒態勢をとってもらわなくてはならない。
仕事を休む…という事もできないことはないが、今回が駄目ならまた次々と仕掛けてくるだろう。
今は相手の策に乗るしかなさそうだ。
「わかりました……」
気乗りしない返事を返してその場を後にした。
四章~(二)へ続く……
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