【R18】君は僕の太陽、月のように君次第な僕(R18表現ありVer.)

茶山ぴよ

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第15章 夢一夜

第280話 夢一夜(6)★

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「ふわ~」

大きな欠伸が襖越しに聞こえたかと思うと、ガタガタと仕切りの襖が揺れた。

二人は裸で結び合ったままハッと身を固くした。

――まさか、こっちに来る?

だが、しんばり棒をあてがった襖は開かなかった。

「おっと、間違えた」

と小さく呟く声がはっきりと聞こえた。

ずかずかと畳を歩く振動がかすかに二人の布団に伝わったと共に、今度はやや遠くで襖が開く音がした。

パタパタと廊下をスリッパで歩く音がして、バタンと戸が閉まる音がした。

「……トイレ?」

将は唇が触れ合うほど近くにある聡の顔に囁いた。

「……たぶん」

聡は、不安げな顔のまま、小さく頷いた。

二間続きのうち、将と聡がいる部屋のほうがトイレに近い。どうやらこの宿の常連である高橋は、いつもこっちから出入りをしていたのかもしれない。

「気付いたかな……」

「ゴメン。あたしが大きい声だしちゃったから……」

聡は困ったように微笑むと、小さく舌を出した。

さっきまで真っ暗だったせいか、この程度の薄暗がりでも聡の顔はよく見える。

将は、その顔がいとおしくてたまらなくて、「いいよ」という代わりに何も塗らなくてもばら色の唇にもう一度口づけした。

「あ」

そのまま舌を交わそうとした将は、唐突に小さく声をあげると、いたずらっぽい顔で聡を見つめた。

「なに?」

目を見開く聡に

「アキラん中……びくびく動いてる」

「やだ」

それは聡自身も自覚していた。心臓が子宮に移動したみたいに、勝手に拍動している。

本当に『そこ』へ達すると、聡はそうなってしまう。

今のように、思考のほうは急速に脳に戻ってきても、いったん反応した体の方はそう容易に通常には戻らない。

照れ隠しに聡が将の肩に顔を埋めてしまおうとしたとき、高橋がトイレから出てきたらしい。

間違ってこっちに入ってきたらコトだったが、今度は間違うことなく、隣の襖から自室に入ってくれたらしい。

まもなく電気が消えて、部屋はせせらぎだけの暗闇に戻った。

暗闇に戻っても二人は、しばらくそのままの姿勢でいた。

「雨……止んだみたいだね」

「うん……」

二人はせせらぎに隠れる程度の吐息で言葉を交わす。

高橋が眠ってしまうまでの間、将は聡の中に入ったまま、静かに聡の髪をなぜていた。

聡はその間ずっと四肢を将に巻きつけるようにしがみついていた。

まるで、すべての肌を密着させるように。

ときおり……慎重に、二人の肌の凹凸のすべてを合わせていくように、聡は将の下で腰を小さくくねらすようにずらしては吐息を漏らす。

「動かそうか?」

そっと囁いた将に聡が首を横に振る気配がした。

「もうちょっと……このままでいて」

聡はまるで再び将の耳たぶを噛むように囁いた。

「将を感じていたいの」

その息は快感となって、再び脊椎から聡の中に埋め込まれた将自身に鋭く伝わる。

膨張したものは、少しでも動かせば破裂しそうだった。

将は破ける寸前の摩擦を味わいたくてたまらない。

聡が腰をわずかにくねらせる振動だけで……先端から耐え切れずに欲望が染み出てくるのがわかる。

でも……愛する聡の願いだから、そのままで我慢する。

聡は、将のためだけの器官を、将が使っている悦びを噛み締めていた。

生殖器。自分の命には何も関係のない器官。

次世代をつくるための器官であり、とてつもない快楽をもたらす器官。

愛しい人とのコミュニケーションに使うそれは……聡のそれは将のためだけのもので、将のそれは聡のためのものだ。

二人は一対になって、肉体の悦びを交差させる。

聡の中の『成り合はざる処』は今、将によって埋められている。

聡は真ん丸くなった快楽の中に浮かびながら、下腹部の中に、将の存在を確かに感じていた。

聡の中の粘膜は、将をもっと感じようと、ひとりでに波打つ。

ときおり、将の先端があたっているあたりから送られるパルス信号は、聡を自動的に操るかのように……聡はときおり腰をくねらせてしまう。

そうすると新たなる波が押し寄せてくる。波は増幅するようにだんだんと大きな波になって再び聡を襲い始めた。

いつか将が聡の一部に同化すればいい。

いっそ二人溶けて混ざればいい。

このまま……くっついたまま死んでもいい。

再び思考が感情に支配された聡は、将に巻きつけた四肢にぐっと力を入れると、将の唇を求めた。

聡の子宮の入り口に達し、キスしている将自身のように。

聡は将に唇を押し当てると、舌を分け入らせた。

将が聡に入り、聡が将に入る。上と下でパズルのように体を合わせる。

肌と肌を隙間なくぴったりとくっつけながら、舌も再び二人の体のように、くっついた。

溶けて1つになることはできないから、せめて二人に浮かんだ汗を混ぜ合わせるように、二人はくっつけた体をうねらせはじめた。

やがて、隣から再びいびきが聞こえ始めるのと同時に、行きつ戻りつする将の通り道が、どんどん弾力を帯びてきた。

聡から湧き出る大量の潤いに引き込まれながら、同時に性器を引き絞られるような感覚。

はじける臨界点をこらえる苦行と快感が同時に将を襲った。

と、聡がたまらないように将の名前を短く叫んで、痙攣するように体を起こしてしがみついてきた。

最後にもう一度、びくびくと強く脈動する聡の粘膜の奥深くまで強く押し入る。

その終点にぶつかると同時に、放出した。はじけるような自らの精の勢いに将は飲み込まれる。

――アキラ、アキラ……。

将は幸福感を伴う強烈な快感で真っ白になった。




どれくらい時が経っただろうか。うとうとしていた将は、ふと顔をあげた。

暗緑色のカーテンの色調がわずかに明るくなったのを将は見た。

傍らで寄り添い眠る聡が、暗いながらもいつのまにか見えるようになっている。

カーテン上部のたるんだ隙間から見える空は、すでに瑠璃色というには明るすぎる。

将は頭に肘をつくと、傍らで裸のまま眠っている聡を見つめた。

わずかに唇を緩めて、安心しきった顔で将のほうに体を向けて横たわっている。




ついさっき……昨夜というべきだろうか。

2回目に交わったとき、聡は感極まって……将の射精を待てずに意識をなくしてしまった。

失神したというよりは、いつのまにか返事が聞こえなくなっていたというほうが正しい。

聡から絶え間なく湧き出る液体と、将がさきほど大量に射出した液体とが、聡の中でかきまわされる隠微な湿った音。

せせらぎの水音に、あきらかに異質な水音が響く。

粘膜と液体が織りなす音は、できるだけ静かにしようと二人が思っても無駄だった。

隣に聞こえたらまずいと思うものの、それは逆に二人の感覚を鋭敏にするばかりで、音はさらに響き渡るかのようだった。

聡は、子宮口に将が何度も何度も到達するたびに、鋭い快感とともに、先に放たれた将の精液を子宮の中へと押し込まれるような感覚を覚え、小さな悲鳴を堪えられなかった。

それはちっとも嫌ではなく、むしろ子宮から体中へと、将の分身である精子がかけめぐってくれればいい。体中を将に征服されたいとすら願っていた。

将も、愛する聡の体の奥深くに自分の精を直接送り込む喜びに潜在意識を支配され、思考自体は無となってただただ出入りに耽っていた。

それは相手が最愛の聡だからこそ、素晴らしい快楽を伴った。

やがて1回目の段階で何度も痙攣するような快感の高みにのぼっていた聡は、ついに意識を手放してしまったのだ。




意識をなくした聡は、そのまま眠りに移行したらしい。

そのとき、愛し合う二人の背後で、せせらぎに負けないほどの勢いで聞こえた鼾がいつのまにか止んでいる。

――もしかしたら、わざと鼾をかいてたのかな。

将は、ふと思った。それほど……今は静かな隣なのだ。

部屋は、だんだん明るくなってきた。

緑色にカーテンの色を透かす部屋の中で、聡の姿もはっきりとしてきた。

さっきまで白いシーツとの対比で影のように見えた体も、その肌の蝋のような白さを一面の緑の中に浮かび上がらせ、将は思わずそれに見とれた。

昨日、さんざんその柔らかさを確かめた乳房は、横を向いているせいか、鏡餅のように上下に重なっている。

華奢な腕にその半分が隠れた小さな先端も安心しきったように淡い色のまま緩んでいる。

下半身は夏がけに隠されているが、夏がけに入る直前にあるウエストの括れときたら。

こうやって無意識に眠っているというのに、何かで削り取ったような極端な細さだ。

二人が横たわる敷布団の上には、将と聡のものが混じった体液で汚れたくしゃくしゃのティッシュペーパーが散乱している。

その中に裸で眠る聡は、白バラを散らした中に眠るおとぎ話の美女のようにも見える……。

だが将は、おとぎ話を想像するよりは、夏がけをはずして、聡のすべてが見たくなった。

考えてみたら昨日はほとんどが手探りだった。

手探りゆえに鋭く感じたというのもあるかもしれないが、聡の体は視覚的にも魅力的だったし、かつ再び将の欲望を揺り動かすほど刺激的だった。

行動に入る前に、将は聡の顔を盗み見た。

……いつのまにか、聡は眠ったまま眉根を寄せていた。

何か悪い夢を見ているのだろうか。目を閉じながらもつらそうな表情だ。

将は心配になってその顔をのぞきこんだ。

と、ついに長い睫の下からにじみ出るように、涙が湧き出してきた。
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