『私の神様は〇〇〇〇さん~不思議な太ったおじさんと難病宣告を受けた女の子の1週間の物語~』

あらお☆ひろ

文字の大きさ
16 / 34

⑮「松坂での夕食~エスカルゴ牧場のプルギニョンコース~」

しおりを挟む
⑮「松坂での夕食~エスカルゴ牧場のプルギニョンコース~」
 石神さんを出発すると、早起きだったのと牡蠣かき栄螺さざえと一緒に飲んだビールと熱燗が効いたのか、希はうとうとと眠りについた。天岩戸の前で神々が宴会をしているシーンのリアルな夢を見た。古事記の表記にあるように、多数の神々が宴会をする中、なぜか裸の健が岩戸の前の平タライのステージの上で、振り付きで変な替え歌をうたって会場が大盛り上がりして、天照大神も岩戸から出てきて、健にアンコールの拍手を送っていた。(あぁ、健さんってやっぱりたくさんいる神様の中のひとりやったんや…。それにしても裸で踊るんは、「ウズメ」やなかったんかいな…。)と思って宴の会場の端っこで見ていると、突然、体が揺さぶられた。

 「希ちゃん、希ちゃん、着いたで。大丈夫か?松阪神社やで。ここも「病気平癒」の神社やから、お参りに行くで。」
目をこすりながら、助手席で
「えっ、めっちゃ盛り上がってアンコールの途中やったのに健さん歌わんでええの?」
と寝ぼけていると、健は笑いながら、ペットボトルのお茶を差し出してくれた。
「すまんな。希ちゃん寝てしもてたから、おいちゃん鼻歌歌いながら走ってたからな。下手な歌でうなされたんとちゃうか?さあ、神様に酒臭い息拭きかけられへんから、緑茶で口の中清めや。」

 松阪神社の最奥、神楽殿の奥にある境内社の少彦名大神すくなひこなおおみかみを祭神とする少彦名命社に参った。
「この神様は、明日行く、伊賀市一之宮にある「敢国神社あえくにじんじゃ」いうて大彦命おおひこのみことが主神で配神としてここと同じ少彦名命が祀られてんねん。少彦名命は「医薬」と「酒造り」の祝神やねん。「病気が治ること」と「旨いお酒が飲めること」といっしょにお願いできるって便利コンビニエンスやろ。「酒」は「百薬の長」っていうもんやな。しっかりと両方お願いしいや。
 明日は、御神水井戸と同じ水源の手水者で「神水」も飲ませてもらうつもりやから、「明日もよろしく、今日は「挨拶」でーす。」ってなもんや。超軟水でうまいぞー!」
と健がさらっと言った。(「酒は百薬の長」で「医薬」と「酒造り」の神様ひとくくりにしたらあかんのとちゃうの?)と希は思ったが、「明日の「美味しい水」を楽しみにしています。面倒言いますけど、「病気治して」、「長い事お酒楽しめるよう」よろしくお願いしますとお願いした。

 お参りがすむと、もう時計は3時半だった。車に乗り込むと希は健に尋ねた。
「さて、次が今日の最後のお楽しみって言ってたとこやんなぁ。いったい何食べさせてくれんの?もうそろそろ教えてよ!」
と健に情報をねだっていると、3分もしないうちに車は止まった。妙な看板が立っていて目を引かれた。今日の日付の入った大きなかたつむりの殻にまたがる女の子と男の子の顔出し看板だった。(ん?エスカルゴ牧場?「エスカルゴ」ってでんでん虫?えー、でんでん虫なんか食べんの?もうゲロゲロやー!)

 希が震えていると、健はササっと降りて、建物に入っていくので仕方なくついていった。受付で「予約の備里そなえざとです。」と言うと、「ちょうど今から、社長の案内で牧場見学ですよ。タイミングよかったですね。」とレストランホールに案内された。
 席について少し待つと、白髪にメガネの初老の男性が登場し、来店客に「エスカルゴ牧場」の説明に入った。この牧場で飼育されているカタツムリは、ヨーロッパでは高級食材で、いまや絶滅危惧種である「ブルゴーニュ種」という大型のカタツムリだと説明を受けた。
 イタリアンファミレスで出るエスカルゴは「アフリカマイマイ」といって、別の品種であることや、ヨーロッパの高級レストランでは「ブルゴーニュ種」が高級食材として重宝されている旨の説明があり、最後に希の手のひらほどの大きさのあるカタツムリを取り出して、最前列に座っていた希の手のひらに乗せた。

 記憶の中にあるでんでん虫の10倍以上あるエスカルゴはずっしりと重く、飛び出た目と目が合った時は一瞬ひいてしまった。
 その後、世界でも珍しいというエスカルゴの牧場を見学し、4時にレストランに戻ってきた。あらかじめ健が予約時に「プルギニョンコース」を頼んでいたとのことで、白ワインが2杯出てきた。健は、ウエイトレスに「水」を頼むと、健のワイングラスも希の前に置き、笑いながら言った。
「希ちゃん、「ワイン」デビューおめでとう。今日は「白」やからさっぱりとして飲みやすいで。ただ、この後、料理が出てくるから一杯は飲むの待っときや。」



 初めて飲んだ「白ワイン」はすっきりとしていて、日本酒の冷を軽くしたようなイメージだった。気を抜くと、一気に二杯目まで空けてしまいそうな気がしたので、グラスを手の届かないところに置き直した。
 やがてコースの配膳が始まった。説明によると、エスカルゴの剥き身を7種類の香味野菜でじっくり煮込んでレモン汁に漬けたものを殻に戻して、パセリ・エシャロットを加えた自家製ガーリックソースを合わせてこんがり焼いたものとの事だった。手間暇かけたエスカルゴが良い香りを立ててホール皿に6つ並んでいた。それに牧場で栽培した野菜のサラダとパンが添えられていた。

 いただきますをすると、健がするように、パンにエスカルゴを半分に切り、のせて食べた。極上のガーリックソースに、かつて家族と食べたアワビのステーキ以上の歯ごたえのエスカルゴの味が希の口の中で広がった。
「なにこれ!めっちゃ美味しい!健さん、アワビより美味しいかもしれへんな!このこりっこりの歯ごたえが最高やし、ガーリックソースとのマッチングがもう何とも言われへん!
 パンと合わすのもええけどそのまま食べても美味しい!ワインとも合うわなー。サラダもしゃきしゃきで美味しいしもう最高―!エスカルゴばんざーい!」
と叫び、エスカルゴ牧場の社長もそんな希を見て微笑んでいた。(あー、世の中にはこんなに美味しいものがまだまだあるんやろなぁ…。入院したら、もう何も食べに行かれへんねんな。まあ、今は、目の前の美味しいものに集中せんとエスカルゴに失礼やな!)と6個のエスカルゴが空になるのに15分もかからなかった。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜

侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」  十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。  弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。  お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。  七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!  以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。  その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。  一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

処理中です...