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ゆらゆらと揺れている――。
海の真ん中で波に揺られながらフヨフヨと漂っているような感覚が気持ちいい。
これは夢なのか現実なのか、考えるのが面倒で、ただこのままずっと揺られていたいと思う。
目を閉じて、無の世界の中で、意識も身体も溶かしてすべてを一つに――。
(あれ? 私、何してたんだっけ?)
少しずつ浮上し始めてきた意識を拾いつつ、自分がなぜここにいるのか考えてみる。
なかなか定まらない意識の片隅で、チラチラと光るものを見つけた気がして、そこに意識を集中させてみる。
(ん? 女の人?)
黒髪の女の人がこっちをみて何かを喋っている。
(え、何? 全然聞こえない)
近寄ってみようと試みるのだが、全身が重たく、上手く身体が動かせない。
だんだんとシルエットが薄くなっていることに気づき焦る。
(待って! 消えちゃわないで!)
声を出そうとしても喉の奥が詰まっているかの感じがして出てこない。
為す術がなく困った表情で女の人を見るが、
女の人はこっちをみて、にっこりと微笑んだまま光が散るようにして消えていった。
それと同時に心地よかった浮遊感もなくなり、急に意識が鮮明に広がる。
夢か……。
夢にしてはやけに鮮明に映っていたような。
なぜだかあの女の人だけは夢に思えなかった。
私に向かって何かを喋っていたけれど、何だったんだろ?
女の人の黒髪に黒目の容姿は、日本人っぽく見えたけれど、私の知っている人ではなかった気がする。
それともどこかで会ったことのある人?
う~~ん……。
なんか最近考えることが増えてるような……。
そのうち禿げてしまったらどうしよう。
それにしても、なんだか身体が妙にだるい気がする。
おまけに今見上げているのは、見知らぬ天井。
ん!?
知らない天井!?
慌てて寝そべっていたソファーから身体を起こすが、
自分の寝ていた場所に見覚えがなく、違和感を感じ、必死に記憶を掘り起こしてみた。
(ああ、思いだした……。実際は思いだしたくもなかったが)
あの銀髪イケメンにされた事を思いだし、ムカムカとした気分になった。
(もう、ヤダ。異世界怖い。突然あんな事してくるなんて、イケメンだからって許されないんだから)
とんだ災難に会ったと思い起き上がろうとしたのだが、もしかしたらあれは夢だったのかもしれないと思いかけ、胸元辺りを見てみれば赤く吸い付いたような跡があった。おまけに所々ベタベタとする。
「うん。そうだよね。そうだと思った。よし、お風呂に入って着替よう」
あれは全部夢ではなかったことを確信した。
ソファーの近く、部屋の右側にある扉に向かった。
たぶん、浴室洗面があるとしたらここだろうと、一応は目星をつけてはあった。
でもここは異世界だから私の常識とは違うかもしれないし、とドキドキしつつ、部屋にそれらが備え付けられていることを祈りながら扉を開けてみる。
(よかった。お風呂もトイレも洗面も、ちゃんと部屋に備え付けられている)
ウキウキしつつ、さっそくバスタブに湯を張ろうと蛇口を探すのだが、どこにも見当たらない。
(あれ? おかしいな。バスタブはあるけれど、蛇口がない。どうやってお湯を張るんだ?)
どれだけ周りを探してみても、結局は見つからなかったので、しぶしぶお風呂に入ることを諦めることにした。
それならばと、顔を洗おうとしたのだがこちらも同じく蛇口が見当たらない。
ここの人たちはどうやって水を使うのか気になったが、さっきチラッと見えた窓の外は部屋の中と同じく真っ暗だった。
どうやらここに来てから随分時間がたっているらしい。
おそらく、今は真夜中だろう。
そんな時間に誰かに湯の入れ方を聞くなんてできない。
おまけに、この格好で部屋の外に出れば間違いなく女神ではなく、痴女だといわれるだろう。
「もういいや。寝よ」
部屋に戻り、クローゼットの中からシンプルな寝着のようなものを選んで着る。
下着も自分が身に付けている形のものが置かれていて非常にありがたかった。
何枚かあるものの中から適当に選んで身に付ける。
形は自分のと似ていたが、質は大きく違うらしく、すごく肌触りが良かった。
部屋の奥に置かれているベッドに行き、すぐに布団の中に潜り込む。
疲れていたため、一気に疲れが押し寄せ、すぐに眠りについた。
海の真ん中で波に揺られながらフヨフヨと漂っているような感覚が気持ちいい。
これは夢なのか現実なのか、考えるのが面倒で、ただこのままずっと揺られていたいと思う。
目を閉じて、無の世界の中で、意識も身体も溶かしてすべてを一つに――。
(あれ? 私、何してたんだっけ?)
少しずつ浮上し始めてきた意識を拾いつつ、自分がなぜここにいるのか考えてみる。
なかなか定まらない意識の片隅で、チラチラと光るものを見つけた気がして、そこに意識を集中させてみる。
(ん? 女の人?)
黒髪の女の人がこっちをみて何かを喋っている。
(え、何? 全然聞こえない)
近寄ってみようと試みるのだが、全身が重たく、上手く身体が動かせない。
だんだんとシルエットが薄くなっていることに気づき焦る。
(待って! 消えちゃわないで!)
声を出そうとしても喉の奥が詰まっているかの感じがして出てこない。
為す術がなく困った表情で女の人を見るが、
女の人はこっちをみて、にっこりと微笑んだまま光が散るようにして消えていった。
それと同時に心地よかった浮遊感もなくなり、急に意識が鮮明に広がる。
夢か……。
夢にしてはやけに鮮明に映っていたような。
なぜだかあの女の人だけは夢に思えなかった。
私に向かって何かを喋っていたけれど、何だったんだろ?
女の人の黒髪に黒目の容姿は、日本人っぽく見えたけれど、私の知っている人ではなかった気がする。
それともどこかで会ったことのある人?
う~~ん……。
なんか最近考えることが増えてるような……。
そのうち禿げてしまったらどうしよう。
それにしても、なんだか身体が妙にだるい気がする。
おまけに今見上げているのは、見知らぬ天井。
ん!?
知らない天井!?
慌てて寝そべっていたソファーから身体を起こすが、
自分の寝ていた場所に見覚えがなく、違和感を感じ、必死に記憶を掘り起こしてみた。
(ああ、思いだした……。実際は思いだしたくもなかったが)
あの銀髪イケメンにされた事を思いだし、ムカムカとした気分になった。
(もう、ヤダ。異世界怖い。突然あんな事してくるなんて、イケメンだからって許されないんだから)
とんだ災難に会ったと思い起き上がろうとしたのだが、もしかしたらあれは夢だったのかもしれないと思いかけ、胸元辺りを見てみれば赤く吸い付いたような跡があった。おまけに所々ベタベタとする。
「うん。そうだよね。そうだと思った。よし、お風呂に入って着替よう」
あれは全部夢ではなかったことを確信した。
ソファーの近く、部屋の右側にある扉に向かった。
たぶん、浴室洗面があるとしたらここだろうと、一応は目星をつけてはあった。
でもここは異世界だから私の常識とは違うかもしれないし、とドキドキしつつ、部屋にそれらが備え付けられていることを祈りながら扉を開けてみる。
(よかった。お風呂もトイレも洗面も、ちゃんと部屋に備え付けられている)
ウキウキしつつ、さっそくバスタブに湯を張ろうと蛇口を探すのだが、どこにも見当たらない。
(あれ? おかしいな。バスタブはあるけれど、蛇口がない。どうやってお湯を張るんだ?)
どれだけ周りを探してみても、結局は見つからなかったので、しぶしぶお風呂に入ることを諦めることにした。
それならばと、顔を洗おうとしたのだがこちらも同じく蛇口が見当たらない。
ここの人たちはどうやって水を使うのか気になったが、さっきチラッと見えた窓の外は部屋の中と同じく真っ暗だった。
どうやらここに来てから随分時間がたっているらしい。
おそらく、今は真夜中だろう。
そんな時間に誰かに湯の入れ方を聞くなんてできない。
おまけに、この格好で部屋の外に出れば間違いなく女神ではなく、痴女だといわれるだろう。
「もういいや。寝よ」
部屋に戻り、クローゼットの中からシンプルな寝着のようなものを選んで着る。
下着も自分が身に付けている形のものが置かれていて非常にありがたかった。
何枚かあるものの中から適当に選んで身に付ける。
形は自分のと似ていたが、質は大きく違うらしく、すごく肌触りが良かった。
部屋の奥に置かれているベッドに行き、すぐに布団の中に潜り込む。
疲れていたため、一気に疲れが押し寄せ、すぐに眠りについた。
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