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「きゃあ、これ、かわいいです!」
きゃっきゃっ、うふふっ、と楽し気な笑い声が響く部屋には、たくさんの色とりどりの布で溢れかえっている。
只今、この部屋の中限定のパッチワーク講座の真っただ中。
流石に王宮に努める侍女たちは手先も器用で、センスもよく、おまけにアイデアの引き出しも豊富。
レースなどを使い、髪飾りやエプロンなどをあっという間に仕上げて行く。
途中髪の毛にあてがい「ん~、もう少し小さめのほうがいいかな? それとも、この大きさのを二つ重ねたほうがいいかな?」 などと途中で修正を加えたとしても、出来上がりはあっという間で、職人が仕上げたような出来栄えにただただ口をあんぐりと開けて驚くのみである。
そうですよね。
あのドレスもあっという間にぴったりサイズに仕上げたんですものね……。
趣味程度のど素人が講座なんて開いてなんだか恥ずかしいです。
この間、ドレスの試着をしたときに、手直しで使ったレースの布たちが隅の方に固められているのを見て、「あの布たちはどうするんですか?」 と聞いたところ、「処分いたします」 と返って来た時には、”なんてもったいない!!” と思ったものです。
それならば私に下さい。とほかにも処分されていく布の切れ端たちをたくさんもらい、ついでにミルリーさんから裁縫セットを借りて、空いた時間にチクチクと縫ってシュシュを作ったら、意外にも、侍女さん達からとても好評だった。
やっぱりとは思ったけれど、一度使った布や、カッティングされた切れ端をもう一度使うという考えはなく、ちょっと貧乏くさくて受け入れてはもらえないかな? とも思ったけれど、皆さんとても柔軟な方たちばかりで、さっそく作り方を教えてほしいと言われ、今日、講座を開く運びとなったのである。
「ねえ、この柄を使って、チョコ様のお洋服を作るなんてどうかしら?」
「それいい考えね! このチェックの柄をワンポイントとするのはどうかしら?」
「いいですわね。さっそく作りましょう!」
さっそく取り掛かる若い侍女さんたち、きっとあっという間に出来上がることだろう。
最近少し寒くなって来たからチョコも喜ぶんじゃないかな。
私も何か作ろうかな、と山積されている布をあさり、ふと目に留まった一枚の布をその中から引き抜く。
あっ、この柄、エルストさんに似合うかも。
「あの、この布、余ったら少しいただけませんか?」
「いいのよいいのよ、少しなんて言わずに、全部もってってくださいな」
「ありがとうございます」
なぜか入り浸っている侍女副頭さんが、チクチクとものすごいスピードで縫い付けながら答える。
『パンツONパンツを作るのよ』 と確か言っていたはずだが、すごい柄の組み合わせ……。
見なかったことにしよう。
もう一度自分の手に持っている布を見る。
うん。やっぱりこの柄、エルストさんに似合いそう。
(そうだ! この世界の人にはあまりな馴染みがなさそうだけれど、あれを作ってみよう)
近くにかためて置かれていた紐の山の中から一本の紐を選び、さっそく作業に取り掛かる。
(渡す勇気はまだないけれど、出来上がるまでに湧いてこればいいや。)
渡す相手のことを思い浮かべ、チクチクと一針一針丁寧に縫っていく。
胸を占めるのは楽しい気持ちと、”喜んでもらえるかな?” ドキドキする気持ち。
(あれ? 私って恋する乙女みたいじゃん)
胸の真ん中から急に広がる熱により、頬をピンクに染めながら、チクチクと縫い続けたのであった。
きゃっきゃっ、うふふっ、と楽し気な笑い声が響く部屋には、たくさんの色とりどりの布で溢れかえっている。
只今、この部屋の中限定のパッチワーク講座の真っただ中。
流石に王宮に努める侍女たちは手先も器用で、センスもよく、おまけにアイデアの引き出しも豊富。
レースなどを使い、髪飾りやエプロンなどをあっという間に仕上げて行く。
途中髪の毛にあてがい「ん~、もう少し小さめのほうがいいかな? それとも、この大きさのを二つ重ねたほうがいいかな?」 などと途中で修正を加えたとしても、出来上がりはあっという間で、職人が仕上げたような出来栄えにただただ口をあんぐりと開けて驚くのみである。
そうですよね。
あのドレスもあっという間にぴったりサイズに仕上げたんですものね……。
趣味程度のど素人が講座なんて開いてなんだか恥ずかしいです。
この間、ドレスの試着をしたときに、手直しで使ったレースの布たちが隅の方に固められているのを見て、「あの布たちはどうするんですか?」 と聞いたところ、「処分いたします」 と返って来た時には、”なんてもったいない!!” と思ったものです。
それならば私に下さい。とほかにも処分されていく布の切れ端たちをたくさんもらい、ついでにミルリーさんから裁縫セットを借りて、空いた時間にチクチクと縫ってシュシュを作ったら、意外にも、侍女さん達からとても好評だった。
やっぱりとは思ったけれど、一度使った布や、カッティングされた切れ端をもう一度使うという考えはなく、ちょっと貧乏くさくて受け入れてはもらえないかな? とも思ったけれど、皆さんとても柔軟な方たちばかりで、さっそく作り方を教えてほしいと言われ、今日、講座を開く運びとなったのである。
「ねえ、この柄を使って、チョコ様のお洋服を作るなんてどうかしら?」
「それいい考えね! このチェックの柄をワンポイントとするのはどうかしら?」
「いいですわね。さっそく作りましょう!」
さっそく取り掛かる若い侍女さんたち、きっとあっという間に出来上がることだろう。
最近少し寒くなって来たからチョコも喜ぶんじゃないかな。
私も何か作ろうかな、と山積されている布をあさり、ふと目に留まった一枚の布をその中から引き抜く。
あっ、この柄、エルストさんに似合うかも。
「あの、この布、余ったら少しいただけませんか?」
「いいのよいいのよ、少しなんて言わずに、全部もってってくださいな」
「ありがとうございます」
なぜか入り浸っている侍女副頭さんが、チクチクとものすごいスピードで縫い付けながら答える。
『パンツONパンツを作るのよ』 と確か言っていたはずだが、すごい柄の組み合わせ……。
見なかったことにしよう。
もう一度自分の手に持っている布を見る。
うん。やっぱりこの柄、エルストさんに似合いそう。
(そうだ! この世界の人にはあまりな馴染みがなさそうだけれど、あれを作ってみよう)
近くにかためて置かれていた紐の山の中から一本の紐を選び、さっそく作業に取り掛かる。
(渡す勇気はまだないけれど、出来上がるまでに湧いてこればいいや。)
渡す相手のことを思い浮かべ、チクチクと一針一針丁寧に縫っていく。
胸を占めるのは楽しい気持ちと、”喜んでもらえるかな?” ドキドキする気持ち。
(あれ? 私って恋する乙女みたいじゃん)
胸の真ん中から急に広がる熱により、頬をピンクに染めながら、チクチクと縫い続けたのであった。
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