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あまりの眩しさに目を瞑る。
「なんだ!? 眩しい……」
レネット殿下も眩しさに目を覆う。
次の瞬間、ガタン!! と音を立てて馬車が急停止した。
次から次へと怒る突然の事態に苛立ちを募らせて、馬車を走らせていた従者に怒鳴るように「何事だ!!」 と叫ぶ。
「あっ……、あのっ」 と震えながら言葉を詰まらせている従者の様子に”何かあったのでは” と私も感じた。
その声に不審に思った殿下は、「一体何があったんだ」 と確認のために馬車を降りようと扉に手を掛けたが、それよりも先に勢いよく外から扉が開けられた。
「こんばんは、レネット殿下。女神を返してもらいましょうか」
聞いたことのある声に”えっ!!” と思って身を乗り出すようにして殿下の向こうにいる人物に目を向ける。
「なっ、何でお前がここにいる!!」
ここにいるはずのない人物に素直に驚いているレネット殿下。
そこにはいつもとは違い、白い騎士服を身を纏い月の光を背に受けてペガサスにまたがる、精悍に佇むエルストがいた。
(う、うそっ。助けに来てくれた……!!)
一目その姿を目に映すだけでこんなにも安心するなんて。
こんなにも、心が熱くなるなんて。
私の胸に咲く花びらは恋ごころと連動するように熱く疼いた――。
「何ででしょうかね。それは何故だか昨日から余計な仕事が増えて女神に会うこともままならなかったことも意味しているんですかね? 全く余計な仕事ばかり増やしてくれるもんです。それと、この場所が分かったのは、女神の持つ石のお陰です」
そういって優し気な、だけれど”もう大丈夫” と安心させるような顔で私を見た。そしてもう一度レネット殿下に向き直る。
「さて、あなたの計画は全て潰れましたよ。素直に女神を返していただけませんかね?」
「ふざけるな!! 返すわけがないだろう!!」
馬車の中でのあの余裕が嘘かのように、今にも掴みかかっていきそうな勢いでエルストに向かって声を荒げる。
「そうですか。素直に返して頂いた方が身の為だと思いますが。今回の件に関して国王から『抵抗するなら多少痛めつけても構わん』 と許可をいただいておりますので、遠慮しません。レネット殿下も、私のもう一つの肩書を忘れたわけではないですよね?」
暗に”手加減はしませんよ?” と余裕の色を浮かばせて佇んでいるエルストさんは、いつもの姿とは全く違って見える。
対するレネット殿下の顔には明らかに動揺の色が浮かんでいて、いつもの飄々とした様子がなく、余裕をなくしている。
「俺に逆らう気か! お前ごときが生意気だ!」
そう叫び、馬車から飛び降りて腰に下げていた剣でエルストへと切りかかっていく。
(!! あぶないっ!!)
しかし向かってきたレネットの攻撃は空を切っていく。繰り返される攻撃にも、ものともせずに息一つ乱すことなく涼しい表情で剣をよけていく。
その姿にただ単に凄いと思った。いつも第一王子の補佐をしていて、剣とか、戦いとかは無縁の文官イメージだったから。
(レネット殿下はエルストさんの足元にも及ばない感じがする)
未だ腰に刺さる剣は抜いていなくても、白い騎士服を纏う身のこなしからその強さが滲み出ている。
月夜に白い騎士服が映え、舞うように戦う姿は、とても幻想的で美しいと思った。
剣では敵わないと思ったのか、レネット殿下はエルストから距離と取って、何やらぶつぶつと呪文を唱え始めた。
そしてその手を天に翳せば、空から光の矢がエルストに目掛けて降ってきた。
(エルストさん!!)
その光の矢をチラリと見やり、ようやく腰からぶら下げた剣を抜けば、白銀の刀身が月明かりに照らされ、金に染まり煌めく光を放った。
その刀身を手で人撫でして同じく空に突き刺すように掲げれば、闇を切り裂くような閃光が辺り一面を覆った。
「……!!」
続いて割れるほどの雷鳴が轟き、空が割れる。そして雷を纏った剣を一振りすれば全ての矢が霧と化して消えていった。
目の前のその光景に私と殿下は言葉をなくし、ただ立ち尽くした――。
(なに、これ。あり得ないほどに強いんだけど……)
「まだやりますか? いいかげん、私も本気出しますよ?」
(えっ!! これでまだ本気じゃないの?!)
もうさっさとあきらめたほうがいいのでは? とレネットを見ると、レネット殿下は目に憎しみを込めてエルストを睨みつけている。
その瞳を一瞥し、”やれやれ” といった風に、もう一度雷を纏ったままの剣をレネットに向けて構えたその時、
闇と静寂の中からよくとおる声が響いた。
「そこまでだ」
「なんだ!? 眩しい……」
レネット殿下も眩しさに目を覆う。
次の瞬間、ガタン!! と音を立てて馬車が急停止した。
次から次へと怒る突然の事態に苛立ちを募らせて、馬車を走らせていた従者に怒鳴るように「何事だ!!」 と叫ぶ。
「あっ……、あのっ」 と震えながら言葉を詰まらせている従者の様子に”何かあったのでは” と私も感じた。
その声に不審に思った殿下は、「一体何があったんだ」 と確認のために馬車を降りようと扉に手を掛けたが、それよりも先に勢いよく外から扉が開けられた。
「こんばんは、レネット殿下。女神を返してもらいましょうか」
聞いたことのある声に”えっ!!” と思って身を乗り出すようにして殿下の向こうにいる人物に目を向ける。
「なっ、何でお前がここにいる!!」
ここにいるはずのない人物に素直に驚いているレネット殿下。
そこにはいつもとは違い、白い騎士服を身を纏い月の光を背に受けてペガサスにまたがる、精悍に佇むエルストがいた。
(う、うそっ。助けに来てくれた……!!)
一目その姿を目に映すだけでこんなにも安心するなんて。
こんなにも、心が熱くなるなんて。
私の胸に咲く花びらは恋ごころと連動するように熱く疼いた――。
「何ででしょうかね。それは何故だか昨日から余計な仕事が増えて女神に会うこともままならなかったことも意味しているんですかね? 全く余計な仕事ばかり増やしてくれるもんです。それと、この場所が分かったのは、女神の持つ石のお陰です」
そういって優し気な、だけれど”もう大丈夫” と安心させるような顔で私を見た。そしてもう一度レネット殿下に向き直る。
「さて、あなたの計画は全て潰れましたよ。素直に女神を返していただけませんかね?」
「ふざけるな!! 返すわけがないだろう!!」
馬車の中でのあの余裕が嘘かのように、今にも掴みかかっていきそうな勢いでエルストに向かって声を荒げる。
「そうですか。素直に返して頂いた方が身の為だと思いますが。今回の件に関して国王から『抵抗するなら多少痛めつけても構わん』 と許可をいただいておりますので、遠慮しません。レネット殿下も、私のもう一つの肩書を忘れたわけではないですよね?」
暗に”手加減はしませんよ?” と余裕の色を浮かばせて佇んでいるエルストさんは、いつもの姿とは全く違って見える。
対するレネット殿下の顔には明らかに動揺の色が浮かんでいて、いつもの飄々とした様子がなく、余裕をなくしている。
「俺に逆らう気か! お前ごときが生意気だ!」
そう叫び、馬車から飛び降りて腰に下げていた剣でエルストへと切りかかっていく。
(!! あぶないっ!!)
しかし向かってきたレネットの攻撃は空を切っていく。繰り返される攻撃にも、ものともせずに息一つ乱すことなく涼しい表情で剣をよけていく。
その姿にただ単に凄いと思った。いつも第一王子の補佐をしていて、剣とか、戦いとかは無縁の文官イメージだったから。
(レネット殿下はエルストさんの足元にも及ばない感じがする)
未だ腰に刺さる剣は抜いていなくても、白い騎士服を纏う身のこなしからその強さが滲み出ている。
月夜に白い騎士服が映え、舞うように戦う姿は、とても幻想的で美しいと思った。
剣では敵わないと思ったのか、レネット殿下はエルストから距離と取って、何やらぶつぶつと呪文を唱え始めた。
そしてその手を天に翳せば、空から光の矢がエルストに目掛けて降ってきた。
(エルストさん!!)
その光の矢をチラリと見やり、ようやく腰からぶら下げた剣を抜けば、白銀の刀身が月明かりに照らされ、金に染まり煌めく光を放った。
その刀身を手で人撫でして同じく空に突き刺すように掲げれば、闇を切り裂くような閃光が辺り一面を覆った。
「……!!」
続いて割れるほどの雷鳴が轟き、空が割れる。そして雷を纏った剣を一振りすれば全ての矢が霧と化して消えていった。
目の前のその光景に私と殿下は言葉をなくし、ただ立ち尽くした――。
(なに、これ。あり得ないほどに強いんだけど……)
「まだやりますか? いいかげん、私も本気出しますよ?」
(えっ!! これでまだ本気じゃないの?!)
もうさっさとあきらめたほうがいいのでは? とレネットを見ると、レネット殿下は目に憎しみを込めてエルストを睨みつけている。
その瞳を一瞥し、”やれやれ” といった風に、もう一度雷を纏ったままの剣をレネットに向けて構えたその時、
闇と静寂の中からよくとおる声が響いた。
「そこまでだ」
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