その花びらが光るとき

もちごめ

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 暗闇の中から現れたのは第一王子とジーク、ミルリーさんで、みんなチョコの背に乗ってここまでやってきたようだ。

(チョコ!! と皆!!)


「レネット。いい加減にしろ。お前のしたことは到底許される事ではない。全ての証拠も挙がっている。父上にもお前のしたことは既に伝えてあるから、大人しく観念しろ」

 ローランスの言葉を聞きながらも、その目はジークの方へと向けられる。

「どういうことだ!! お前、裏切ったな!!」


 目が血走るようにジークを睨みつける。


(やっぱり、ジークさんは……)


「殿下、すみません。でも、俺は……」

「ジークを責めたって仕方ないぞ。お前の罪はお前のものだ。さあ、今から城に戻って父上にどう言い訳するのか考えるんだな。まあ、どうあっても臣籍降下は免れないとは思うが」



 観念したようにうなだれたレネットの様子を見て、”ようやくこれで終わったか” と安心して、エルストに近寄ろうとしたのだが、その時エルストの向こうの闇の中で、きらりと光るものが見えた気がした。


(!!? まさか!!) 

「エルストさん、危ない!!」

「ははは!! 油断したな!!」

(あっちにも!!)

 同時に二か所でナイフが光る。

「ユナ!!」
「チョコ!!」


 何も考えずに無意識にと身体が動く。
 エルストをかばうように前へと出るのと同時に胸を意識を失うほどの衝撃が襲った。


(ああ、私、エルストさんを守れたんだ)

 痛い、とか、怖いとかではなく、幸せな気持ちが胸いっぱいに広がった。
 自然と柔らかい笑みを浮かべてエルストを見上げる。

 私を見つめるエルストの顔には悲愴の色が浮かんでいて、必死に私の名前を呼んでいる。

(そんな顔、しないで……)

 そういえば、あっちは、どうなたんだろ……?

 段々視界がぼやけ、薄れてゆく意識の向こう側で「ユナ! ユナ! と叫ぶ声が聞こえる。


(大丈夫だよ、だって……、私……)


 そこで意識が消えていった――。







 もう一方では殿下のことを庇ったチョコが足から血を流しており、ミルリーが手当てをしようと必死になっている。

 レネットはジークに顔を地面へと押し付けられて、血が付いたナイフを持った手を後ろ手に掴まれている。

 まだ文句を言おうと暴れようとしているが、力で抑えつけられているので、大した抵抗が出来ない。

 ユナを刺したレネットの側近は、片手にユナを抱きかかえながらも、エルストが出した魔法のロープで縛られて一切の動きを封じられている。

 こちらは抵抗せずに無表情のまま大人しく捕まっている。

「レネット、もう逃げ道はない。覚悟しておけよ」

 ローランスの声が闇に響いた――。
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