くすぐられて目覚めた夜

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奇妙なめざめ

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礼司の指が、再び綾乃の肌を這う。
指の腹が、肋骨の際をゆっくりと撫で、微かに震える脇腹へ……。

「ふふっ……くぅっ、また……そこ……っ……」

甘く、笑いを含んだ息が綾乃の喉から漏れる。
だが、その声はもう「拒絶」ではなかった。
不意のくすぐったさに身体は跳ねるが、心は……逃げることを、望んでいない。

(どうして……? さっきまで、こんなこと……)

綾乃の内心は、まだ少し混乱していた。
礼司の指が脇の下をなぞり、背中へ、腰へと滑ってゆくたびに――
身体の芯に、ひそやかな熱が生まれていく。

(おかしい……笑っているのに……どこか、気持ちいい……)

それは、初めての感覚だった。
身体が勝手に笑い声を漏らすのに、心はそれを心地よく感じている。
その矛盾が、綾乃の理性を徐々に融かしていく。

「んふっ、ふふっ、あ……だめぇ、礼司さん……!」

くすぐられながらも、その声には、拒絶の色がない。
それどころか、礼司の手が離れると――綾乃の心には微かな「寂しさ」すら芽生えるのだった。

(どうして……こんな私の、隠したいような反応を……
 こんなにも、丁寧に見つめてくれるの……?)

礼司のまなざしは、いつも誠実だった。
「奉仕」という名のもとに、彼女の強さも、脆さも、全部――そっと受けとめてくれる。

(私は……彼になら、晒してもいいのかもしれない)

羞恥。戸惑い。誤魔化せない反応。
それらを礼司の前で見せることが、なぜか……怖くなかった。

「綾乃様……?」

くすぐる手を止めて、礼司が囁いた。
優しげな声音には、彼女の心を案じる気持ちが滲んでいた。

綾乃はふるふると小さく首を振り、唇を噛んでから――囁いた。

「……もう、逃げないわ。……あなたに……くすぐられてると……
 変なの、なのに……すごく、あったかくて……安心するの」

礼司の目が見開かれる。
その瞬間、彼の胸の奥に、たまらないほどの愛しさが湧き上がった。

「お嬢様……綾乃様……ありがとう……」

その言葉とともに、礼司の指が、ふたたびそっと腰に触れた。
指の動きは今まで以上に繊細で、優しい。
だが、その優しさの中に、深い愛と、少しだけ――焦がれるような欲が滲む。

「んふっ……くすぐったいけど……もう、いやじゃない……
 もっと、……触れて……」

綾乃の声は甘く、かすかに震えていた。
でも、それは「恐れ」ではなく、「期待」の震え。

くすぐりという、奇妙な愛のかたちの中で――
綾乃は初めて、「素の自分」が受け入れられ、愛されていると実感したのだった。
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