くすぐられて目覚めた夜

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限界のその先へ

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「ふふ…もう、だめ…っ」

綾乃の身体はふわふわと浮かぶような幸福に包まれながら、笑い声を洩らし続けていた。礼司の指が、彼女の太腿の内側を円を描くように這い上がり、くすぐるというより、愛おしく慈しむような動きで滑っていく。

「まだだよ、綾乃様。あなたがどれほどこの快感を求めているか、もっと深く知りたいのです」

そう囁く礼司の声には、ひとしずくの甘い狂気が混じっていた。しかし、その指先はあくまで優しく、けれども容赦なく。
膝裏に忍ばせた手が、節の柔らかい関節をなぞるたび、綾乃はくすぐったさに跳ねながらも、逃げ場のない快感に酔っていった。

「んんっ!くすぐったい…っ、でも、きらいじゃ…なくて…」

「――むしろ、欲しいのですね?」

礼司の言葉に、綾乃は目を逸らした。けれどその頬は、羞恥に染まりつつも、まるで恋を語る乙女のように紅く愛らしかった。

「だめ…って言っても、からだが、求めてるの…」

礼司の両手が、綾乃の脇腹から脇の下へと滑り上がってゆく。くすぐりという刺激のなかに、熱を帯びた想いが宿っていた。愛情の重みが、指先に、手のひらに、確かにこもっている。

「あなたの"だめ"は、"もっと"に聞こえるのですよ」

柔らかく、しかし確信に満ちた声。
次の瞬間――礼司の指は綾乃の両脇を左右交互に優しく、けれど執拗に責め立てた。指の腹が小刻みに震えるような動きで、皮膚の浅い層を撫で、擽り、押し上げる。

「ひゃっ、あははっ、ああっ、だめぇっ、あっははははっ!」

笑い声が天井に弾けた。けれどそこにあるのは苦しみではない。
狂おしいほどの快感と、与えられる幸福に酔いしれた、ひとりの女性の悦びだった。

「どうか、綾乃様…このくすぐったさに身を任せて。私はあなたのすべてを包みたいのです。くすぐりという愛で――」

「れいじ、ああっ、もっと、笑わせて…止めないで…!」

その瞬間、綾乃の口から溢れた願いは、言葉というより、魂の叫びだった。
もはや羞恥は薄れ、ただ礼司の愛を求めて、くすぐりのなかに溶けてゆく彼女の姿。
礼司もまた、彼女の応える身体に心を震わせながら、指を、愛を、さらに深く注ぎ込んでいく。

やわらかな足裏に指を滑らせ、くすぐりながら、彼女のくびれ、肩甲骨の下、背中のくぼみへ――
礼司の手は、彼女の歓びのツボを知り尽くす執事として、完璧な愛撫を繰り返していた。

綾乃の声は笑いと甘い吐息のあいだを揺れ、ただひとつ、彼に伝えたい想いを紡ぐ。

「好き…くすぐられるの、あなたにされるのが…いちばん、好き…!」

礼司の手が止まることはなかった。
それはもう、奉仕ではない。魂を捧げるような愛だった。
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