くすぐり愛 ― 偏執の紳士と聖女ティアナ

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「限界を超えてなお、笑みを咲かせる君へ」

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ふたたび、夜。
銀の月が雲間から顔をのぞかせるとき、洋館のサロンでは、再びふたりの物語が始まる。

ティアナは今日も、薄いシフォンのドレスに包まれて、レオニスの前に座っていた。
背筋を正しながらも、目は揺れ、指先はそわそわと膝の上で重ねられている。

「昨夜の余韻、まだ残っているようだね」
彼の声は静かで、でもどこか、いたずらを含んだ甘い調べ。

「……恥ずかしいわ。でも、忘れられないの……」
ティアナの頬は紅に染まり、瞳には、待ちわびるような色が差していた。

そんな彼女を、レオニスは立たせ、ゆっくりとソファへ導いた。
今夜は——もっと深く、もっと執拗に。彼女の奥底まで、解き明かす。

絹のリボンが手首をやさしく縛る。
肩紐が滑り落ちる。
そして、ドレスの裾が少しずつめくられ、すべらかな足があらわになる。

「始めようか、ティアナ。君がどこまで“笑える”か、今夜は知りたい」



まずは、足元から。
足指のあいだを一本一本、細い筆でなぞられる。
くすぐったさに、くすぐったさが折り重なり、ティアナの表情が一瞬で崩れる。

「ふふっ……あっ、あは、だ、だめ、そこ……!」
「ここが好きだろう? 君の足は、感情を隠せないから」

そして指先が、ふくらはぎから膝裏へ——
繊細な感覚が神経を駆け抜けるたびに、ティアナの声が甘く震える。

次に、両脇。
彼女が最も弱い場所のひとつ。
そこへ両手でじっくり、くすぐり手が這い、執拗に舞う。

「やぁっ、まって……あっは、あはははっ、やめて、も……う……! んふっ、ひゃぁっ……!」

身体はよじれても、リボンは外れず、逃げ道はない。
笑いが止まらない。熱がこもる。呼吸が浅くなる。
けれど、快感の波が、それを恐怖ではなく、歓喜へと変えていく。

「……だめっ、ほんとうに、だめっ、もう……だめ、お願いっ……」

ティアナが限界を訴える声は、どこか熱に浮かされている。
その言葉とは裏腹に、彼女の体は、敏感な場所すべてに血が巡っていた。

レオニスは、そんな彼女の髪をやさしく撫でながら、ささやく。

「君の“やめて”は、本当に美しい。だから、もう少しだけ、君を壊す許しをくれ」

言葉とともに、彼は首筋に唇をよせ、
同時に爪の先で、腰のくびれを撫でる。
そこが、ティアナが「絶対に知られたくなかった秘密の弱点」だと、彼は知っていた。

「ひぁぁぁっっ……!! そこは……そこは……いっちゃ、だめぇぇっ……!」

笑いが、涙と混ざる。
意思と肉体が乖離していくほどの快感。
身体が勝手に反応して、笑いながら、溺れる。

限界の果て。
その先にあるのは——

「……ありがとう、レオニス。私……私、あなたに……壊されて、幸せ」

ティアナは、ぐったりと笑みを浮かべながら、彼の胸に身をあずけた。

彼の指は最後に、くすぐりではなく、ティアナの頬に触れた。
やさしく、静かに——まるで花を愛でるように。

そして夜は、静かに幕を閉じる。
愛と支配の果てに、なお咲き誇る笑みだけを残して——
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