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沙耶は、くすぐられたいと自覚する
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「では……少し、椅子を後ろに倒しますね」
紳士の言葉に、沙耶はうなずいた。
リクライニングされた椅子が、ゆっくりと背中を受け止める。
沙耶は、まるで軽く浮かぶような気持ちで、深く息をついた。
「……この体勢、なんか……脱力しやすいかも」
「そう仰っていただけると嬉しいです。では、今回は“わき腹”から少し、触れてみましょう」
沙耶のブラウスは、下腹部のあたりでふんわりとめくられ、肋骨の下あたりが露わになる。
彼女の肌は、白くやわらかく、少し緊張の汗がにじんでいた。
「ふふっ……なんか、じわじわくる……っ」
紳士の指先は、決して急がない。
肋骨と肋骨のあいだを、羽根のようにそっと滑らせるように――
「ここは、“受け身の覚悟”が問われる場所。反射で跳ね返したくなる衝動を、受け止めようとする意志があるほど、心地よく感じられるのです」
「そ、それって……なんか、すごく……ドキドキする表現だね」
沙耶の声は、かすかに震えていた。「やっぱりくすぐったいけど……ちょっと、クセになりそう……っ」
紳士は、肋骨のカーブに沿って、撫でるように円を描いた。
そして、指先の一本を使って、脇の前のラインへと近づけてゆく――
「ひぅっ! い、今の、やばい……ふふっ……そこ、ダメ……って、笑っちゃう……」
「大丈夫。すぐに離れます。これは、限界点を探るための確認です」
紳士の声は、常に冷静で優しく、沙耶の反応を決して“嗜虐的”に捉えなかった。
それが、彼女の不安をまた一つ、ほどいていく。
「次は……腹部のまんなか。“丹田”の少し上。ここは、呼吸の動きと感情が結びついています」
「そんな場所まであるんだ……?」
沙耶は目を閉じ、そっと息を吐く。
そこへ、そっと添えられた指先――
表面を撫でるのではなく、服越しに“皮膚の下の反応”を感じ取るような、ごくごく浅い圧力。
「ふふっ……なんだろ……笑いそうっていうより……変なゾワゾワ……してる……」
「くすぐりには、“笑い”の前に“感覚の揺らぎ”があります」
紳士は淡々と語りながら、沙耶の腹部を、まるで音を奏でるようなリズムで軽く撫で続けた。
「この“ゾワゾワ”を、恥ずかしがらずに感じ取ることが、次の扉を開く鍵なんです」
沙耶は、胸元を少しだけ開き、首を傾けながら、ふっと笑った。
「変な気分……でも、たぶん、嫌じゃない……
なんかこう、“見られてる”のに、守られてる感じがするから……」
「それが、私たちのクラブで最も大切にしていることです。
“くすぐり”は、女性にとって“恥ずかしい”と同時に、“癒し”でもありますから――」
紳士は、そのまま沙耶の下腹部へとそっと指を移し、服越しに――
くすぐりというより、“繊細な目覚めの予告”のような触れ方で、軽く、軽く、円を描いた。
沙耶はそれに、身を震わせながらも逃げなかった。
むしろ、深く身体を椅子に預け、笑いとともに脱力しながら、
「……こういうの、知っちゃったら……もう戻れないかも……」と、甘くこぼした。
――彼女が“望んで”くすぐられるようになった瞬間だった。
紳士の言葉に、沙耶はうなずいた。
リクライニングされた椅子が、ゆっくりと背中を受け止める。
沙耶は、まるで軽く浮かぶような気持ちで、深く息をついた。
「……この体勢、なんか……脱力しやすいかも」
「そう仰っていただけると嬉しいです。では、今回は“わき腹”から少し、触れてみましょう」
沙耶のブラウスは、下腹部のあたりでふんわりとめくられ、肋骨の下あたりが露わになる。
彼女の肌は、白くやわらかく、少し緊張の汗がにじんでいた。
「ふふっ……なんか、じわじわくる……っ」
紳士の指先は、決して急がない。
肋骨と肋骨のあいだを、羽根のようにそっと滑らせるように――
「ここは、“受け身の覚悟”が問われる場所。反射で跳ね返したくなる衝動を、受け止めようとする意志があるほど、心地よく感じられるのです」
「そ、それって……なんか、すごく……ドキドキする表現だね」
沙耶の声は、かすかに震えていた。「やっぱりくすぐったいけど……ちょっと、クセになりそう……っ」
紳士は、肋骨のカーブに沿って、撫でるように円を描いた。
そして、指先の一本を使って、脇の前のラインへと近づけてゆく――
「ひぅっ! い、今の、やばい……ふふっ……そこ、ダメ……って、笑っちゃう……」
「大丈夫。すぐに離れます。これは、限界点を探るための確認です」
紳士の声は、常に冷静で優しく、沙耶の反応を決して“嗜虐的”に捉えなかった。
それが、彼女の不安をまた一つ、ほどいていく。
「次は……腹部のまんなか。“丹田”の少し上。ここは、呼吸の動きと感情が結びついています」
「そんな場所まであるんだ……?」
沙耶は目を閉じ、そっと息を吐く。
そこへ、そっと添えられた指先――
表面を撫でるのではなく、服越しに“皮膚の下の反応”を感じ取るような、ごくごく浅い圧力。
「ふふっ……なんだろ……笑いそうっていうより……変なゾワゾワ……してる……」
「くすぐりには、“笑い”の前に“感覚の揺らぎ”があります」
紳士は淡々と語りながら、沙耶の腹部を、まるで音を奏でるようなリズムで軽く撫で続けた。
「この“ゾワゾワ”を、恥ずかしがらずに感じ取ることが、次の扉を開く鍵なんです」
沙耶は、胸元を少しだけ開き、首を傾けながら、ふっと笑った。
「変な気分……でも、たぶん、嫌じゃない……
なんかこう、“見られてる”のに、守られてる感じがするから……」
「それが、私たちのクラブで最も大切にしていることです。
“くすぐり”は、女性にとって“恥ずかしい”と同時に、“癒し”でもありますから――」
紳士は、そのまま沙耶の下腹部へとそっと指を移し、服越しに――
くすぐりというより、“繊細な目覚めの予告”のような触れ方で、軽く、軽く、円を描いた。
沙耶はそれに、身を震わせながらも逃げなかった。
むしろ、深く身体を椅子に預け、笑いとともに脱力しながら、
「……こういうの、知っちゃったら……もう戻れないかも……」と、甘くこぼした。
――彼女が“望んで”くすぐられるようになった瞬間だった。
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