くすぐりセラピー

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くすぐりセラピー ― 幻夢(げんむ)の夜

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夜の帳(とばり)が静かに降りるころ。
彩華は、仮面のセラピストたちに連れられて、とある部屋へと導かれる。
そこは、薄紅の灯りが揺れる静かな空間。絹のカーテンが波打ち、空気までも柔らかい。

「ここは、“夢”のための場所です」
セラピストのひとり、仮面の“白”が囁く。

「でも、身体はちゃんとここにあるのよ。だから……すべてを感じて」
もうひとり、仮面の“黒”が微笑む。

彩華は絹の寝台に横たわり、四肢をゆったりとしたリボンでやさしく留められる。
締めつけではなく、委ねるための拘束。
目隠しがそっと落とされると、世界は音と感覚だけになる。

「あなたは今、夢と現のあわいにいます」
白のセラピストが、彩華の鎖骨を一本の羽で撫で始める。

「ここでは、くすぐったささえも夢の一部になるの」
黒のセラピストが、彩華の足指をひとつずつ、口元でやさしく息を吹きかける。

「ひゃ……ぁ……なにこれ……んっ、ふふっ……」
思わず漏れる笑い。
けれど、それは現実の笑いではない。
音の波が身体から浮き上がるような、不思議な笑い。

「ねえ、次はどこが夢になる?」
白の指先が、彩華の腹部にやわらかく触れる。
「それとも、ここが?」
黒のブラシが、脇の下を円を描くように撫でていく。

「だ、め……だめ……そんな……ふふふっ、もう……やめてぇ……でも……もっと……」

甘さと痺れが溶け合うような感覚。
もう、境界が分からない。
どこまでが夢で、どこからが自分なのか。

ただ笑い、ただ身を任せる――それがこの“くすぐり夢見処”の掟(おきて)。

仮面のふたりは、音もなく動きながら、彩華のあらゆる感覚を起こし、
すべてのくすぐったさを、愛のかたちに変えていく。

「彩華……あなたの中にある、真実の声を、私たちに聴かせて」

その声に応えるように、
彩華の笑いが、あふれる。

抑えきれないほどに。
止まらないほどに。
深く、甘く、震えるほどに。
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