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第3章
第63話 密談
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ソイスト侯爵家に国王陛下からの書状が届き、マーカスはサルジャンを伴って登城することにした。
「お父さまぁ!城に行かれるのなら私も連れて行ってください」
ミイヤが腕に掴まって強請る姿は、以前なら可愛くて、仕方ないなと笑いながら一緒に馬車に乗せていたものだった。
しかし今のマーカスは違う。
「遊びではない。ユートリーに弔辞を賜るために参るのだ。おまえはっ」
ゴホゴホっ!
わざとらしい咳をしてみせたのはサルジャンだ。
ハッとしたマーカスが言葉尻を濁す。
「ミイヤ、今日はそういうことだから父上と私で城に向かう。留守を頼む」
ぷうっと膨らむ頬。
それは貴族の令嬢としてはあり得ない行儀の悪さである。しかし以前のマーカスたちは、そんなミイヤを可愛いと言って許していた。
今?もちろん許すはずがない。
「15歳にもなって行儀の悪い真似をするな」
冷たい父の声に、ミイヤがびくりと震える。
「お、お父さま?」
振り返りもせず、マーカスは出て行った。
「父上、それじゃあ母上のこと言えませんよ」
マーカスを追って馬車に乗り込んだサルジャンが苦笑する。
「う、うむ。あいつに触れられたら怖気がして我慢ならんかった」
「まあ気持ちはわかりますが」
マーカスはミイヤが触れた袖を、見えない何かを汚れを払うようにぽんぽんと叩き落としている。
「おまえも触られてみればわかるぞ」
父の言葉は、サルジャンに寒気をもよおさせた。
「やめてください、耐えられそうにないな。早く終わらせましょうこんなこと」
「ああ、早く終わらせるぞ」
国王陛下に謁見する際、通常は謁見の間を使うが、今日は秘密裡に私室へ通される。
王妃とゴールダイン第一王子も一緒に待ち受けていた。
「マーカス!待っておったぞ」
人払いされて、5人のみでテーブルを囲む。
「早速だが、ナイジェルスを保護してくれたこと、礼を言う」
「臣下として当然のことをしたまでです」
「マーカスが信頼に足る存在でいてくれたからこそ、ナイジェルスも頼ることができたのだ。臣下として当然そうあるべきだが、不心得者もおるからな」
チリつくような強い視線が交わされ、証拠とともに事実の報告が始まった。
「今ナイジェルスはどのように過ごしておりますの?」
大方の話が終わると王妃が割って入る。
「ご安心ください。殿下とリラとユートリーで隠れ家に潜伏中です」
「あら、ユートリー嬢も一緒なの?」
同じ屋敷に二人がいると聞いて、王妃の眉が上がる。
「はい、さすがに棺に入ったまま過ごさせるわけにも参りませんので」
「ま、まあそうね。いくら何でもそれはかわいそうだわ。でもそうしたら棺は空なの?」
「王妃様は蝋人形という物をご存知でしょうか?」
「「「蝋人形?」」」
国王もゴールダインも一緒に首を傾げた。
「蝋人形は蝋細工で生き写したように、そっくりの人形を作る市井の見世物ですが、今回その製作者を引っ張りこみ、ユートリーの死顔を用意したのです」
「まあ!面白そうね」
「ええ、本当に驚くべき出来で、棺に入れた人形を見た使用人たちは疑うことなく泣いております」
罪悪感を浮かべたマーカスに、サルジャンが頷いた。
「蝋人形、見てみたいわ」
「この件が終わりましたら、蝋人形の館を常設出来るよう褒美をやろうと思っておりますので、その際は是非お楽しみください」
「あら、そうね。では楽しみのために早くすべて片付けましょう」
国王にとっては、トローザーは血を分けた子。第二夫人も妻の一人だから、王妃ほどばっさり割り切れはしなかったのだが、事ここまで大きくなっては致し方ない。
第二夫人と第三王子のために、王妃と二人の王子を引き換えにすることなどできるわけがないのだと、覚悟を決めた。
「お父さまぁ!城に行かれるのなら私も連れて行ってください」
ミイヤが腕に掴まって強請る姿は、以前なら可愛くて、仕方ないなと笑いながら一緒に馬車に乗せていたものだった。
しかし今のマーカスは違う。
「遊びではない。ユートリーに弔辞を賜るために参るのだ。おまえはっ」
ゴホゴホっ!
わざとらしい咳をしてみせたのはサルジャンだ。
ハッとしたマーカスが言葉尻を濁す。
「ミイヤ、今日はそういうことだから父上と私で城に向かう。留守を頼む」
ぷうっと膨らむ頬。
それは貴族の令嬢としてはあり得ない行儀の悪さである。しかし以前のマーカスたちは、そんなミイヤを可愛いと言って許していた。
今?もちろん許すはずがない。
「15歳にもなって行儀の悪い真似をするな」
冷たい父の声に、ミイヤがびくりと震える。
「お、お父さま?」
振り返りもせず、マーカスは出て行った。
「父上、それじゃあ母上のこと言えませんよ」
マーカスを追って馬車に乗り込んだサルジャンが苦笑する。
「う、うむ。あいつに触れられたら怖気がして我慢ならんかった」
「まあ気持ちはわかりますが」
マーカスはミイヤが触れた袖を、見えない何かを汚れを払うようにぽんぽんと叩き落としている。
「おまえも触られてみればわかるぞ」
父の言葉は、サルジャンに寒気をもよおさせた。
「やめてください、耐えられそうにないな。早く終わらせましょうこんなこと」
「ああ、早く終わらせるぞ」
国王陛下に謁見する際、通常は謁見の間を使うが、今日は秘密裡に私室へ通される。
王妃とゴールダイン第一王子も一緒に待ち受けていた。
「マーカス!待っておったぞ」
人払いされて、5人のみでテーブルを囲む。
「早速だが、ナイジェルスを保護してくれたこと、礼を言う」
「臣下として当然のことをしたまでです」
「マーカスが信頼に足る存在でいてくれたからこそ、ナイジェルスも頼ることができたのだ。臣下として当然そうあるべきだが、不心得者もおるからな」
チリつくような強い視線が交わされ、証拠とともに事実の報告が始まった。
「今ナイジェルスはどのように過ごしておりますの?」
大方の話が終わると王妃が割って入る。
「ご安心ください。殿下とリラとユートリーで隠れ家に潜伏中です」
「あら、ユートリー嬢も一緒なの?」
同じ屋敷に二人がいると聞いて、王妃の眉が上がる。
「はい、さすがに棺に入ったまま過ごさせるわけにも参りませんので」
「ま、まあそうね。いくら何でもそれはかわいそうだわ。でもそうしたら棺は空なの?」
「王妃様は蝋人形という物をご存知でしょうか?」
「「「蝋人形?」」」
国王もゴールダインも一緒に首を傾げた。
「蝋人形は蝋細工で生き写したように、そっくりの人形を作る市井の見世物ですが、今回その製作者を引っ張りこみ、ユートリーの死顔を用意したのです」
「まあ!面白そうね」
「ええ、本当に驚くべき出来で、棺に入れた人形を見た使用人たちは疑うことなく泣いております」
罪悪感を浮かべたマーカスに、サルジャンが頷いた。
「蝋人形、見てみたいわ」
「この件が終わりましたら、蝋人形の館を常設出来るよう褒美をやろうと思っておりますので、その際は是非お楽しみください」
「あら、そうね。では楽しみのために早くすべて片付けましょう」
国王にとっては、トローザーは血を分けた子。第二夫人も妻の一人だから、王妃ほどばっさり割り切れはしなかったのだが、事ここまで大きくなっては致し方ない。
第二夫人と第三王子のために、王妃と二人の王子を引き換えにすることなどできるわけがないのだと、覚悟を決めた。
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