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第3章
第64話 国王の決断
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「そう言えば今日ミイヤが城に行きたがりましてな」
思い出したマーカスが切り出した。
「今トローザーとはどうなっているんだ?」
「確かユートリーが死んだことになった日にも、城へ行っていましたね」
ゴールダインの言葉にマーカスが答える。
「それまではどのくらいの間隔で会っていたのかはわかるか?」
鋭いゴールダインの視線を受け流したサルジャンが、小さく畳まれた紙を取り出し、広げてテーブルに乗せると、皆が一斉に覗き込んだ。
「へえ、馬車の記録を取っているのか」
意外そうなゴールダインに、マーカスの方が驚いた。
「え!城では取らないのですか?」
「どうだろうな?気にしたことがなかったから」
ゴールダインの視線が国王に向くが、国王も首を傾げている。
「調べさせておこう、記録していないなら今後はさせることにしよう」
「そうですね」
王族たちが少し気まずそうな顔をしたので、サルジャンが気を利かせ、急に話を切り替えた。
「まあ、その話はまたあとですることにして、ここを見てください」
その指が指すところを視線で追って行くと、ミイヤはターナル伯爵家と城を訪問しているのがわかるのだが。
「ずいぶん頻繁に城に来ていたのだな。西門につけているということは」
「キャロラ妃の離宮に行くためで」
「そう・・・か」
ゴールダインが指先で机をコツコツと叩いているのは、考え事をしているからだ。
「ミイヤ嬢は城に来たがったと言っていたな。では連れてきてやってはどうだ?」
ミイヤを連れてくれば当然トローザーに会いに行くだろう。その会話を影に調べさせようと、ゴールダインがにんまりと告げた。
「父上、ミイヤ嬢がボロを出しやすいような何かを考えましょう」
「キャロラに茶会を開かせればいい」
国王が急に口を開く。
「ナイジェルスのことは秘されているから、城の大半の者は今も視察中だと信じている。もちろん奴らは本当のことを知っているわけだが。
王妃は体調不良と偽り、社交が滞らぬよう離宮で茶会を開くよう伝えるのはどうだ?」
国王からの提案にマーカスが同意する。
「ミイヤを参加させ、トローザー殿下に会わせるのですね?」
「そうだ。その時トローザーに見張りをつける。話をした者はすべて逐一、話の内容も確認させる。私の影を使う」
これまでトローザーに対し、今ひとつ及び腰だった国王が打ち出した策に、ともに卓を囲んだ面々はその本気を見た。
三人の王族から解放されたあと。
マーカスとサルジャンは、酷い疲れを覚えて馬車の中でへたり込む。
「陛下はトローザー殿下とキャロラ妃を本当に粛清されると思われますか」
「ああ。陛下がここまで見て見ぬ振りをしてきたからこその暴走だ。偶々ナイジェルス殿下は無事で在られたが、放っておけば王妃様とゴールダイン殿下も害しかねない。決断するしかないだろうな、むしろ遅すぎた」
マーカスはゴールダイン王子が今代の国王より能力も人格もはるかに優れていることに満足していた。
「今回は陛下に責任を問えるかもしれん貴重な機会ともなるだろう。それが国のため・・・と、王妃様もご理解くださるなら」
物騒な父の呟きに、あ然としたサルジャンが手を伸ばす。
「ん?ああ、聞かなかったよな何も」
「は、はい。聞いておりませんが」
「それでいい」
馬車の車窓から外を眺めるマーカスの目は強い光を放ち、それ以上のサルジャンの言葉を拒絶した。
思い出したマーカスが切り出した。
「今トローザーとはどうなっているんだ?」
「確かユートリーが死んだことになった日にも、城へ行っていましたね」
ゴールダインの言葉にマーカスが答える。
「それまではどのくらいの間隔で会っていたのかはわかるか?」
鋭いゴールダインの視線を受け流したサルジャンが、小さく畳まれた紙を取り出し、広げてテーブルに乗せると、皆が一斉に覗き込んだ。
「へえ、馬車の記録を取っているのか」
意外そうなゴールダインに、マーカスの方が驚いた。
「え!城では取らないのですか?」
「どうだろうな?気にしたことがなかったから」
ゴールダインの視線が国王に向くが、国王も首を傾げている。
「調べさせておこう、記録していないなら今後はさせることにしよう」
「そうですね」
王族たちが少し気まずそうな顔をしたので、サルジャンが気を利かせ、急に話を切り替えた。
「まあ、その話はまたあとですることにして、ここを見てください」
その指が指すところを視線で追って行くと、ミイヤはターナル伯爵家と城を訪問しているのがわかるのだが。
「ずいぶん頻繁に城に来ていたのだな。西門につけているということは」
「キャロラ妃の離宮に行くためで」
「そう・・・か」
ゴールダインが指先で机をコツコツと叩いているのは、考え事をしているからだ。
「ミイヤ嬢は城に来たがったと言っていたな。では連れてきてやってはどうだ?」
ミイヤを連れてくれば当然トローザーに会いに行くだろう。その会話を影に調べさせようと、ゴールダインがにんまりと告げた。
「父上、ミイヤ嬢がボロを出しやすいような何かを考えましょう」
「キャロラに茶会を開かせればいい」
国王が急に口を開く。
「ナイジェルスのことは秘されているから、城の大半の者は今も視察中だと信じている。もちろん奴らは本当のことを知っているわけだが。
王妃は体調不良と偽り、社交が滞らぬよう離宮で茶会を開くよう伝えるのはどうだ?」
国王からの提案にマーカスが同意する。
「ミイヤを参加させ、トローザー殿下に会わせるのですね?」
「そうだ。その時トローザーに見張りをつける。話をした者はすべて逐一、話の内容も確認させる。私の影を使う」
これまでトローザーに対し、今ひとつ及び腰だった国王が打ち出した策に、ともに卓を囲んだ面々はその本気を見た。
三人の王族から解放されたあと。
マーカスとサルジャンは、酷い疲れを覚えて馬車の中でへたり込む。
「陛下はトローザー殿下とキャロラ妃を本当に粛清されると思われますか」
「ああ。陛下がここまで見て見ぬ振りをしてきたからこその暴走だ。偶々ナイジェルス殿下は無事で在られたが、放っておけば王妃様とゴールダイン殿下も害しかねない。決断するしかないだろうな、むしろ遅すぎた」
マーカスはゴールダイン王子が今代の国王より能力も人格もはるかに優れていることに満足していた。
「今回は陛下に責任を問えるかもしれん貴重な機会ともなるだろう。それが国のため・・・と、王妃様もご理解くださるなら」
物騒な父の呟きに、あ然としたサルジャンが手を伸ばす。
「ん?ああ、聞かなかったよな何も」
「は、はい。聞いておりませんが」
「それでいい」
馬車の車窓から外を眺めるマーカスの目は強い光を放ち、それ以上のサルジャンの言葉を拒絶した。
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