3 / 63
第3話
しおりを挟む
「さあ、これを召し上がれ!」
芝生にぺたりと座り込んだビュワードの前に、たくさん詰め込まれた紙袋を置いてやる。
「あの、でもこんなことしてもらうわけには、それにわた・・にかかわると、ごめいわ・・かか」
ビクビクと吃りながら遠慮する姿に、苛ついたゴールディアが低い声を出した。
「わたくしは国内有数の富豪一族ミリタス侯爵家のゴールディアよ。このくらい貴方にごちそうしたって痛くも痒くもないし、迷惑かけるなんてつまらないこと心配する時間があるなら、さっさと食べなさい。残ったら無駄にしないように持ち帰りなさいよっ!」
ビシッと人さし指を立てて、ビュワードの注意を引きながら言い聞かせた。
鐘が聞こえる。
「そ、そろそろ戻らないと」
「袋ごと持っていきなさい、ほら。貴方何年何組なの?」
「4年B組です」
「同じ学年なのね!では明日ランチの時間に迎えに行くから、お腹を空かせて待っていなさいよ!わかった?」
それだけ言うと、嵐のようなゴールディアは早足で行ってしまった。たくさんの食料とビュワードを残して。
その夜。
ビュワードはゴールディアがくれたサンドイッチを隠して持ち帰り、薄暗い部屋で食べていた。
夕飯があるのは久しぶりだ。
「明日も待っていろって言っていたけど・・・」
きっとその場の思いつきで、明日には忘れているに違いない。諦めることに慣れたビュワードは、明日のことを考えるのは止めた。
ビュワードの父ドレド・スミール伯爵は、王国の中でも気象条件が厳しい最北部の山裾に領地を構えている。
寒さの厳しい所ではあるが、北部の中でもスミール領でしか育たない、国民食とも言える大人気の大変美味な芋が採れる。収穫量に限りがあるので芋にしては高いものだが、作ればいくらでも売れるため、貴族ながら商才に恵まれたドレドは、領地を回って民から芋を買い上げては国隅々まで売り捌いた。
そのため屋敷には滅多に帰らず、たまに帰ると妻アニタが、そして長男トリードが、ビュワードがいかに嘘をつき、酷い行いをしているかを吹き込むのだ。
「ビュワードは戒めのために部屋で謹慎させている」
帰宅しても姿を見せることのない次男について、毎度その言葉を聞くうちに、ドレドは本当にビュワードはろくでなしの出来損ないだと思いこんでしまっていた。
一目でも会ってその姿を確認すれば、ビュワードが置かれた立場がわかっただろうに。
アニタやトリードは気に入らないことがあれば、ビュワードを憂さ晴らしの的に暴力を振るった。そのせいで青痣もあちらこちらにあったのだから。
芝生にぺたりと座り込んだビュワードの前に、たくさん詰め込まれた紙袋を置いてやる。
「あの、でもこんなことしてもらうわけには、それにわた・・にかかわると、ごめいわ・・かか」
ビクビクと吃りながら遠慮する姿に、苛ついたゴールディアが低い声を出した。
「わたくしは国内有数の富豪一族ミリタス侯爵家のゴールディアよ。このくらい貴方にごちそうしたって痛くも痒くもないし、迷惑かけるなんてつまらないこと心配する時間があるなら、さっさと食べなさい。残ったら無駄にしないように持ち帰りなさいよっ!」
ビシッと人さし指を立てて、ビュワードの注意を引きながら言い聞かせた。
鐘が聞こえる。
「そ、そろそろ戻らないと」
「袋ごと持っていきなさい、ほら。貴方何年何組なの?」
「4年B組です」
「同じ学年なのね!では明日ランチの時間に迎えに行くから、お腹を空かせて待っていなさいよ!わかった?」
それだけ言うと、嵐のようなゴールディアは早足で行ってしまった。たくさんの食料とビュワードを残して。
その夜。
ビュワードはゴールディアがくれたサンドイッチを隠して持ち帰り、薄暗い部屋で食べていた。
夕飯があるのは久しぶりだ。
「明日も待っていろって言っていたけど・・・」
きっとその場の思いつきで、明日には忘れているに違いない。諦めることに慣れたビュワードは、明日のことを考えるのは止めた。
ビュワードの父ドレド・スミール伯爵は、王国の中でも気象条件が厳しい最北部の山裾に領地を構えている。
寒さの厳しい所ではあるが、北部の中でもスミール領でしか育たない、国民食とも言える大人気の大変美味な芋が採れる。収穫量に限りがあるので芋にしては高いものだが、作ればいくらでも売れるため、貴族ながら商才に恵まれたドレドは、領地を回って民から芋を買い上げては国隅々まで売り捌いた。
そのため屋敷には滅多に帰らず、たまに帰ると妻アニタが、そして長男トリードが、ビュワードがいかに嘘をつき、酷い行いをしているかを吹き込むのだ。
「ビュワードは戒めのために部屋で謹慎させている」
帰宅しても姿を見せることのない次男について、毎度その言葉を聞くうちに、ドレドは本当にビュワードはろくでなしの出来損ないだと思いこんでしまっていた。
一目でも会ってその姿を確認すれば、ビュワードが置かれた立場がわかっただろうに。
アニタやトリードは気に入らないことがあれば、ビュワードを憂さ晴らしの的に暴力を振るった。そのせいで青痣もあちらこちらにあったのだから。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
533
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる