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第6話

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 あれ以来ゴールディアは、毎日ビュワードとランチを食べている。一食に十分過ぎる量を入れているが、多いのかいつも半分ほど食べて持ち帰るので、入れる量を減らすか訊ねると

「帰る前に少し食べるから、このままが助かります」

 そう言うので、男子はよく食べるから帰るまで腹が持たないのかと軽く考えていた。
 数日経っても相変わらず顔を上げようとはしないが、訊ねればぽつぽつと答えはするようになってきた。
 膝に落ちたパンくずを小鳥に投げてやったり、ベンチ隣りの花壇の手入れをしたりしながら。


 友だちがいない二人には、耳に入れる者もいないので知らなかったが、ビュワードを率いて歩くゴールディアを見た生徒たちは、ろくでなしの出来損ない令息は、他校で問題を起こした傷物令嬢に目をつけられたが、割れ鍋に綴じ蓋でお似合いだと噂した。





「ゴールディア!元気だったか」

 紋章が彫られた美しく大きな馬車が滑り込んでくると、待ちきれなかったように扉を開けてアクシミリオが飛び降り、愛娘を抱きしめる。

「お父様!お父様もお元気そうでうれしいですわ!」
「新しい学院はどうだ?あの少年のことを調べてきたが、まずは茶でも飲みながら話そうか」

 アクシミリオはせっかちであった。



「まずこれを。読むと血管が切れそうになるが、落ち着くようにな」
「・・・相当酷いということですわね」
「ああ」



 父が持って来た報告書を読み進めるゴールディアの瞳から、ぽたりと涙が落ちる。

「ひ、酷いですわ。実の子なのに伯爵様はなぜご令息にこのような事を」
「そうだなあ。伯爵も一緒にやっている愚か者の可能性もあるが、他の証言を読むとまわりから聞かされた話を信じて放置しているのかもしれん」
「あ・・・」

 ゴールディアは思い出していた。

「ご令息は、私がお持ちしたランチをいつも半分しか食べないのですけど、多いなら減らすか訊ねたところ、残りはあとで食べるからと仰って」
「屋敷では満足に食事もさせていないらしいから、眠る前にでも食べているのではないか?気の毒になあ。これからもたっぷりと食べさせてやるといい。それよりここだ」

 成績は良いにも関わらず、学院内ではカンニングなどの不正手段を疑われて上位に名を連ねることは許されていないと書かれている。
 しかし、以前彼の家庭教師を努めた者が言うには、ビュワードはとても優秀で勉強好きな少年だったと。

「まったく、金さえ積めば入れてくれる学院と言うのは、公正であるべき目も濁っているようだ」

 ゴールディアを金で入れたと言っているようなものだが、そこは誰も気にしない。

「それに馬車も与えていないんだぞ、毎日往復歩いているなんて酷すぎるだろう!」

 父が繰り出す様々な情報は、ゴールディアの予想を遥かに超えるほどのものばかりで。ゴールディアは痩せこけた少年のために静かに憤り、声を殺して泣き震えた。
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