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第12話

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 どれもこれも、アニタとトリードが言っていたことと真逆のことばかり。
ドレドは呆然としながら視線を先に進めた。

 ビュワードの乳兄弟であるバーナード・ルーブの証言が始まる。

「ビュワード様が入学した時、既にトリード様より、ビュワード様が暴力的でトリード様のテキストやノートを奪うためなかなか勉強が進まずにいるとか、卑怯なやつで試験はカンニングするはずだから気をつけろと噂を流していました。希望を持って学院に上がったのに、ビュワード様は友だちひとりすらできず、トリード様の言葉を信じた教師たちには目の敵にされ、本当に真面目に勉強しているのに毎回試験で不正をしているとランキングには決してその名を載せてもらえないのです。不当だと訴えたら、何故か謂れなき罪を被せられて学院を辞めさせられ、ビュワード様をお守りすることができなくなってしまいました。屋敷に手紙を出しても、訪ねても、返事も来ないし会わせてもらえず心配でなりません」

 いつしか食い入るように何枚もの報告書を読み、最後の一枚はビュワードが7歳の時辞めていった家庭教師マンデスのものだ。

「ビュワード様は飲み込みが早く非常に優秀でいらっしゃいます。5歳から7歳までの2年しか教えて差し上げられませんでしたが、その能力はトリード様とは一目瞭然の差があり、あのまま勉学を続けられれば王宮の文官として上を目指すこともできるでしょう。
しかしアニタ様が、ビュワード様が真面目に勉強をしないとか、文字もろくに読めるようにならないとか、伯爵様に嘘の報告をするようにおっしゃられたので断ると辞めさせられてしまいました。アニタ様が何故あのようにビュワード様をお嫌いになるのかはわかりません。
ビュワード様は大人しく素直で勤勉な方、しかもとびきり優秀なのです。水を吸い込むスポンジのように、教えればいくらでも理解して下さるので、密かにテキストやノートをお持ちしていましたが、アニタ様が見つけ、取り上げられました。
教育を与えず貶めることばかり考える家族に囲まれ、時には暴力を振るわれ、当時の使用人たちは皆心配しておりましたが、私たちは無力で。
成長され、義母や兄上からの暴力から逃れる術を持たれていらっしゃると良いのですが」

 読み終えたドレドはぶるぶると震えている。真っ青な顔は怒りに歪み、その視線はビュワードに向けられた。
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