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第42話
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翌日からビュワードの学院生活はガラリと変わった。
ゴールディアといる時は視線だけだが、ちょっとでも離れるとすぐに女生徒が声をかけてくる。
たいていはリラ・ニイマスだ。
「スミール様!お待ちになって」
廊下に出たところでリラに腕を掴まれると、ビュワードの眉が不快そうに顰められる。
「ニイマス嬢、手をお離しください」
直接触れないよう、なんとハンカチを介してリラの手を解こうとしているのを見て、リラはムカッとした。
「スミール様!それ失礼じゃありませんこと?」
ムキになって腕にしがみつこうとするリラに、ビュワードは恐怖を感じた。
リラを離そうと腕を振り払ったのだが、リラは渾身の力で掴まって離れず、ビュワードの恐怖は増し増していく。
「や、やめろ、離せ!」
腕を更に強く振ると、リラの頬に指先が当たってしまった。
「痛いっ!」
大袈裟なほどに頬を押さえてリラが叫ぶと、騒ぎに気づいた生徒たちが集まりだしたのを見て。
「スミール様、叩くなんて!叩くなんて酷いですーっ!」
「え・・・いや、あの」
拒絶され、恥をかかされたリラは、その機を逃さなかった。
「え?スミール様がニイマス嬢を殴ったらしいぞ」
「ええ、酷い!女性に暴力を振るうなんて!やっぱりスミール様のあの噂は、本当だったんじゃないか?」
以前トリードが流していた噂こそが正しかったんじゃないかと言い出す者まで現れ騒然とすると、リラは俯いたままニヤリとしたが。
「おい!おまえたちいい加減なことを言うなよ!ニイマス嬢も、スミール様が止めてくれって言ったのにしつこく腕にしがみついて、払われた指先が当たっただけじゃないか!それをまるで殴られたかのように言って」
ビュワードが叩いたわけではなく、リラが体に触れたのを除けようとしてのただのアクシデントだと、冷静に事実を述べたのは隣りのクラス、モイル子爵家のルーサーだ。
「私は見ていたぞ、止めてくれと言われているのにスミール様の腕にしがみついてキーキー言っていたのを」
「なっ!キーキーなんて言っておりませんわ」
「いいや、言っていた。スミール様が慄くほどに強くしがみついてな!みんなも見てもいないのに無責任な噂を口にするなよ!ニイマス嬢は真実など一言も言っていないんだから」
「ひ、酷い!何なのよモイル様私に恨みでもあるのっ!」
「いや、酷いのはニイマス嬢だろう?私はニイマス嬢に恨みはないが、客観的に見て婚約者のいる男性に取る態度でも距離でもなかったと思うぞ。そうだな、まるで一方的に迫っているようだった」
ルーサーの言葉に、リラがバッと顔を赤くして「いやっ、酷いっ!」と言うと走って逃げていった。
「いや、酷いのはそっちだろう!」
ルーサーも引かず、走り去るリラの背中に言葉を投げつけた。
ゴールディアといる時は視線だけだが、ちょっとでも離れるとすぐに女生徒が声をかけてくる。
たいていはリラ・ニイマスだ。
「スミール様!お待ちになって」
廊下に出たところでリラに腕を掴まれると、ビュワードの眉が不快そうに顰められる。
「ニイマス嬢、手をお離しください」
直接触れないよう、なんとハンカチを介してリラの手を解こうとしているのを見て、リラはムカッとした。
「スミール様!それ失礼じゃありませんこと?」
ムキになって腕にしがみつこうとするリラに、ビュワードは恐怖を感じた。
リラを離そうと腕を振り払ったのだが、リラは渾身の力で掴まって離れず、ビュワードの恐怖は増し増していく。
「や、やめろ、離せ!」
腕を更に強く振ると、リラの頬に指先が当たってしまった。
「痛いっ!」
大袈裟なほどに頬を押さえてリラが叫ぶと、騒ぎに気づいた生徒たちが集まりだしたのを見て。
「スミール様、叩くなんて!叩くなんて酷いですーっ!」
「え・・・いや、あの」
拒絶され、恥をかかされたリラは、その機を逃さなかった。
「え?スミール様がニイマス嬢を殴ったらしいぞ」
「ええ、酷い!女性に暴力を振るうなんて!やっぱりスミール様のあの噂は、本当だったんじゃないか?」
以前トリードが流していた噂こそが正しかったんじゃないかと言い出す者まで現れ騒然とすると、リラは俯いたままニヤリとしたが。
「おい!おまえたちいい加減なことを言うなよ!ニイマス嬢も、スミール様が止めてくれって言ったのにしつこく腕にしがみついて、払われた指先が当たっただけじゃないか!それをまるで殴られたかのように言って」
ビュワードが叩いたわけではなく、リラが体に触れたのを除けようとしてのただのアクシデントだと、冷静に事実を述べたのは隣りのクラス、モイル子爵家のルーサーだ。
「私は見ていたぞ、止めてくれと言われているのにスミール様の腕にしがみついてキーキー言っていたのを」
「なっ!キーキーなんて言っておりませんわ」
「いいや、言っていた。スミール様が慄くほどに強くしがみついてな!みんなも見てもいないのに無責任な噂を口にするなよ!ニイマス嬢は真実など一言も言っていないんだから」
「ひ、酷い!何なのよモイル様私に恨みでもあるのっ!」
「いや、酷いのはニイマス嬢だろう?私はニイマス嬢に恨みはないが、客観的に見て婚約者のいる男性に取る態度でも距離でもなかったと思うぞ。そうだな、まるで一方的に迫っているようだった」
ルーサーの言葉に、リラがバッと顔を赤くして「いやっ、酷いっ!」と言うと走って逃げていった。
「いや、酷いのはそっちだろう!」
ルーサーも引かず、走り去るリラの背中に言葉を投げつけた。
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