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第46話

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 ゴールディアのミリタス家別邸に着くと、ルーサーは皆が憧れてやまない美しい白亜の屋敷の隅々まで、舐め尽くすように観察した。

「す・・ごい・・・」
「お気に召しまして?」
「はあ、気にいるなんて烏滸がましいです、凄すぎますよ」
「そう?」
「わかります、私も最初は驚きました」

 ビュワードの実家スミール伯爵家も裕福だが、確かに素晴らしい造作だと感じたことを思い出す。

「ぷっ。スミール様はさっきから同じことを言ってますよ」

 ルーサーが緊張が解けたように笑い出すと、ビュワードも照れくさそうにクスクスと笑う。

 ─ユワ様にもこうして声を立てて笑えるようになってほしいわ─

 それはゴールディアとミリタス侯爵夫妻の心からの願いでもあった。




「うーわ!凄いな、こんな料理初めてです!美味い!」

 あまりお行儀がよいとは言えないが、屈託なく褒め笑うルーサーがいると、ビュワードがいつもよりよく笑う気がすると、ゴールディアはルーサーにやきもちを焼きつつ、やはり正解だったと二人の様子を見守った。



 食事を終えてスイーツとお茶を楽しみ始めた時、ゴールディアが口を開く。

「モイル様、よろしければユワ様と私のお友だちになってくださいませんか?」

 それはビュワードが口にしたくても怖くて言えなかったこと。
 そして招かれたのはほんの気まぐれだろうと思っていたルーサーには、有り得ないくらいのことである。

「ご存知と思いますが、私たちこちらにはお友だちがおりませんの。ビュワード様には特に心を許せる方が少ないのですが、今日お二人を見ていて馬が合うように見えましたわ。如何かしら?」

 千載一遇のチャンスだと、きっとモイル子爵ならルーサーの背を押しただろう。
 ルーサーは少し気後れして答えが遅れたが、上手くいくときは色々なことが上手く噛み合うものだ。
 その迷う間さえ、すぐに飛びつかなかったルーサーならビュワードを支える友人になれると、ゴールディアに判断されたのだから。

「ではよろしくお願いいたしますわ。私のことはゴールディアと。あ、でもユワ様と呼んでいいのは私だけだから、それはダメ!あなたのことはルーサー様とお呼びしてよろしいかしら?」

 気づくと、ルーサーはビュワードとゴールディアと友だちにさせられ、ビュワードと握手を交わしていた。

「あの、ディアが強引でごめんなさい。嫌なら」
「いや、いやいや、いや、あ?違う!嫌なんかじゃないから」

 ゴールディアがにっこり笑ってビュワードの腕に掴まり、語りかけている。

「大丈夫、ルーサー様は本当に喜んで私たちと友だちになってくださるのよ!安心して」

 それがとても優しい表情で、キツそうとか怖そうというのはただの噂に過ぎず、本当は細やかな気遣いのできる繊細な女性だろうと、ルーサーはゴールディアに好感を持ったのだった。
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