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ヴァーミル侯爵家の秘密
第1話
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その頃シーズン公爵家では、カーラが商会を起ち上げる準備をしていた。
「まず王都に店を買わないとね」
「買うと高いですよ、借りてもいいんじゃないですか?」
「だーめ!毎月家賃払って、でも店を好きにいじれないなんてイヤよ」
どうせやるなら、女性たちが歓声をあげるような可愛らしい内装にしたいのだ。好きにやるには自分の持ち物でなければ!と意気込んでいた。
「店を見つけたら棚を作らなくちゃいけないから、家具工房を探しておけばいいかしらね。カンザシを素敵に見せやすい棚ってどんなものがいいかしら」
カンザシを飾って見せる方法を絵に描いて見ると、可愛らしい店内でそれを見た女性たちの華やいだ声が聴こえてくるようだ。
「ふふ。いいと思うわ、これ」
─ピンを売るときは見本を見せて、小さな紙箱に入れて売ろうかしら。空になってもその紙箱を残して使いたくなるくらい可愛らしい箱がいいわね─
いろいろと思いついてはメモを取る。
ブツブツ言っていたと思うと、やっぱりとか、いいと思う!なんて叫んだりして。
「カーラ様、大丈夫かしら?」
「大丈夫よ、浮かれているだけだから」
心配するトイルだが、ナラは笑い飛ばす。
「ナラ、明日王都に行くからボビンに馬車を出すように言っておいてくれない?」
「畏まりました」
夕方、城からビルスが戻ってくると、すぐにカーラが呼び出された。
「お父様、お帰りなさいませ」
「ああカーラ!そこに座りなさい。いろいろと話さねばならんから」
カーラはいくつかある椅子の中から、少し硬めのクッションが置かれたソファに姿勢良く座った。
「まずノーランとの婚約は婚約時に遡り解消された。本人が生死不明ではそもそも婚約は成立しようがないからな。拠ってカーラに傷はつかないことになる。そして確認が不十分だったのに王命を下した陛下の過ちだと、非公式ながら謝罪があった。そのため解消ではあるが、ローリス家と王家から慰謝料が払われる」
「まあ!お幾ら頂けるのですか?」
ビルスはぽかんと口が開いた。
「え、あの、婚約解消だぞ?結婚相手をまた一から探すんだぞ?気にならないのか」
「そんなこと予想の範囲でしたもの。今後結婚出来なかった時に備えて、商会を経営しようって決めたのですわ!」
─本当にしっかりしすぎだぞ、カーラ─
現実的で、地に足をがっちりとつけて、自分の足で歩いている。とても公爵家令嬢とは思えないほど現実的なこの娘は、一体誰が育てたんだっけな?
「あ、私だった!」
ボケッと考え事をしていた父を引き戻すのも、そのカーラである。
「何をぶつぶつ仰っているの、お父様」
「んん、なんでもないよ」
「そう?それでお幾ら頂けますの?」
「まだ算出されていないが、かなりの額らしいよ」
カーラはホホホホホと長く楽しそうに笑った。
「かなりの額って?王都に店が買えるくらいになるかしら」
「王都に店?買うつもりか?」
「ええ。買うほうがいろいろ都合がよろしいんですわ」
娘はまた何か言い含んでいるようにくすりと笑った。
「まず王都に店を買わないとね」
「買うと高いですよ、借りてもいいんじゃないですか?」
「だーめ!毎月家賃払って、でも店を好きにいじれないなんてイヤよ」
どうせやるなら、女性たちが歓声をあげるような可愛らしい内装にしたいのだ。好きにやるには自分の持ち物でなければ!と意気込んでいた。
「店を見つけたら棚を作らなくちゃいけないから、家具工房を探しておけばいいかしらね。カンザシを素敵に見せやすい棚ってどんなものがいいかしら」
カンザシを飾って見せる方法を絵に描いて見ると、可愛らしい店内でそれを見た女性たちの華やいだ声が聴こえてくるようだ。
「ふふ。いいと思うわ、これ」
─ピンを売るときは見本を見せて、小さな紙箱に入れて売ろうかしら。空になってもその紙箱を残して使いたくなるくらい可愛らしい箱がいいわね─
いろいろと思いついてはメモを取る。
ブツブツ言っていたと思うと、やっぱりとか、いいと思う!なんて叫んだりして。
「カーラ様、大丈夫かしら?」
「大丈夫よ、浮かれているだけだから」
心配するトイルだが、ナラは笑い飛ばす。
「ナラ、明日王都に行くからボビンに馬車を出すように言っておいてくれない?」
「畏まりました」
夕方、城からビルスが戻ってくると、すぐにカーラが呼び出された。
「お父様、お帰りなさいませ」
「ああカーラ!そこに座りなさい。いろいろと話さねばならんから」
カーラはいくつかある椅子の中から、少し硬めのクッションが置かれたソファに姿勢良く座った。
「まずノーランとの婚約は婚約時に遡り解消された。本人が生死不明ではそもそも婚約は成立しようがないからな。拠ってカーラに傷はつかないことになる。そして確認が不十分だったのに王命を下した陛下の過ちだと、非公式ながら謝罪があった。そのため解消ではあるが、ローリス家と王家から慰謝料が払われる」
「まあ!お幾ら頂けるのですか?」
ビルスはぽかんと口が開いた。
「え、あの、婚約解消だぞ?結婚相手をまた一から探すんだぞ?気にならないのか」
「そんなこと予想の範囲でしたもの。今後結婚出来なかった時に備えて、商会を経営しようって決めたのですわ!」
─本当にしっかりしすぎだぞ、カーラ─
現実的で、地に足をがっちりとつけて、自分の足で歩いている。とても公爵家令嬢とは思えないほど現実的なこの娘は、一体誰が育てたんだっけな?
「あ、私だった!」
ボケッと考え事をしていた父を引き戻すのも、そのカーラである。
「何をぶつぶつ仰っているの、お父様」
「んん、なんでもないよ」
「そう?それでお幾ら頂けますの?」
「まだ算出されていないが、かなりの額らしいよ」
カーラはホホホホホと長く楽しそうに笑った。
「かなりの額って?王都に店が買えるくらいになるかしら」
「王都に店?買うつもりか?」
「ええ。買うほうがいろいろ都合がよろしいんですわ」
娘はまた何か言い含んでいるようにくすりと笑った。
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